海を破壊する?環境に優しい日焼け止めを選ぶべき理由を解説
近年、日焼け止めに含まれる一部の化学物質による海洋汚染が問題視されています。地球環境を守るため、私たちができることとは?日焼け止めを選ぶ方法とは?
実は今、この紫外線吸収剤に含まれている特定の成分が、サンゴ礁の白化現象や海洋生物の生態系に悪影響を及ぼすと、世界中で問題視されているのです。
今回は、特定の化学物質を含む日焼け止めが引き起こす海洋汚染問題や、自然環境にやさしい日焼け止めの選び方について、皆さんにご紹介させていただきます。
日焼け止めには2種類のタイプがある
夏が近づくにつれ、ドラッグストアの店頭には、クリームタイプやスプレータイプなど、さまざまなタイプの日焼け止めが並びますが、日焼け止めは大きく分けて「ケミカルタイプ」と「ノンケミカルタイプ」の2種類に分けられます。
紫外線吸収剤が含まれているものを「ケミカルタイプ」と呼び、「ノンケミカルタイプ」には、紫外線吸収剤が含まれていません。
「ケミカルタイプ」の日焼け止めは、肌に塗った時に白浮きしにくく、汗や水などにも強いため、長時間にわたっての日焼け防止効果が期待できる反面、日焼け止め自体が紫外線を吸収して、別の熱エネルギーに変換するという特性をもっているため、肌に負担がかかりやすいというデメリットがあります。
一方「ノンケミカルタイプ」の日焼け止めは、紫外線を肌の上で反射させて跳ね返すため、「ケミカルタイプ」と比較した時に、肌への負担は少ないといえますが、汗や水で効果が落ちやすくなるため、こまめに塗り直す必要があります。
紫外線吸収剤に含まれる有害な成分
現在、市販されている日焼け止めの約半分に「紫外線吸収剤」が使われているといわれています。
この紫外線吸収剤として使われている成分の中で、サンゴ礁に有害な化学物質として問題視されているのが、UVA波とUVB波の両方を吸収してくれる「オキシベンゾン」と「オクチノキサート」の2つの成分です。
この「オキシベンゾン」や「オクチノキサート」は、ほんの少しの量でもサンゴにとってストレスとなり、海洋の生態系にもダメージを与えてしまうことが、近年の研究で明らかになっています。
紫外線吸収剤が海洋生態系に与える影響
海のオアシスとも例えられるサンゴは、ただ美しいだけではなく、魚のすみかにもなりますし、海水の二酸化炭素の濃度調節も行ってくれる自然の防波堤の役割を担っています。
ところが、近年における地球の温暖化や水質汚染により、サンゴ礁の白化現象が世界各地のリゾート地で問題になっています。
2015年に発表された米国の調査により、紫外線吸収剤に入っている「オキシベンゾン」が、サンゴの成長を阻害してしまったり、ストレスを与えるなどの悪影響を及ぼしていることが分かったようです。
サンゴにストレスがかかった場合、サンゴに共生している褐虫藻(植物性プランクトン)が追い出されてしまいます。
そうなると、褐虫藻から栄養を受け取って共生していたサンゴはエネルギー不足となり、白化を引き起こして、やがては死んでしまうのです。
「もしもサンゴが絶滅した場合には、地球上の海洋生物の過半数がなくなる」と言われているほど、サンゴは海洋生物の生態系に重要な役割を担っているのです。
サンゴ礁を守るためにも、紫外線吸収剤入りの日焼け止めを塗ったまま海に入ることはもちろん、日常生活の中でも、シャワーなどで洗い流された成分が下水として海に流れ込む場合もあるため、注意が必要なのです。