生物多様性の危機、自然に起こる1,000倍ものスピードで加速を続ける絶滅種の急増の背景とは
私たちと同じ地球に住む、生き物や植物がどんどん減っているのをご存知でしょうか。世界のどこかで、代々続いてきた生き物が、次の世代を迎えることなく終わりを迎えています。この記事では、目をそらしたくなるほどの悲しい現実をご紹介し、なぜそのような悲惨な状態になっているのかの背景についてもご紹介していきます。
世界のどこかで、代々続いてきた生き物が、次の世代を迎えることなく終わりを迎えています。
さらに悲しいことに、絶滅の危機にさらされる生き物や植物はどんどん増えています。
その上、信じられないスピードで減っているというのです。
なんと一日当たり、数十種が絶滅に追い込まれているというデータもあります。
この記事では、目をそらしたくなるほどの悲しい現実をご紹介し、なぜそのような悲惨な状態になっているのかにも踏み込んでいきます。
目次
そもそも絶滅危惧種とは?
そもそも絶滅危惧種とは具体的にどのような生き物・植物を指すのでしょうか。
小学生の頃に聞いた言葉かもしれませんが、改めて確認をしてみましょう。
「絶滅危惧種」とは何か
動植物の中で1個体も存在しなくなった場合を絶滅したといいます。
そんな状態に近い種のこと、つまり近年個体数が激減していたり、限られた場所にしか生息していない個体数の少ない種類のことを「絶滅危惧種」と呼びます。
2021年のデータによると、全世界にはなんと37,400種以上もの絶滅危惧種がいるといわれています。
自然界の歴史として、恐竜が絶滅したように、少しずつ時間をかけて、誕生と絶滅が繰り返されてきました。
しかし、近年では人間の活動によって、信じられないほどのスピード、本来の1,000倍以上の速さで絶滅危惧種が増え、そして絶滅に追いやられているのです。
「絶滅危惧種」のランク分け
絶滅の危機に瀕している動植物を「絶滅危惧種」と呼びますが、国際自然保護連合(IUCN)はそれらをまとめたリストを製作しています。
そのリストは「レッドリスト」と呼ばれ、全世界に配布されています。
また、それをうけて、日本国内では環境省が独自で調査をしたうえで、日本国内の種にフォーカスした「日本版のレッドリスト」があります。
1) 絶滅危険度(中):VU Vulnerable(危急)
2) 絶滅危険度(高い):EN Endangered(危機)
3) 絶滅危険度(極めて高い):CR Critically Endangered(深刻な危機)
このようなカテゴリー分けをすることで、どのような対策・対応をした方が良いかなどを見極めています。
環境省の発表している日本のレッドリストについては、こちらの公式ホームページをご覧ください。
「絶滅危惧種」の具体例
絶滅危惧種と聞くと、世界のどこか遠くの島にいる鳥や亀などをイメージする方もいるかもしれません。
もちろん、そのような特別なエリアにしかいないような動植物もたくさんレッドリストに載っています。
しかし、動物園などで見かけるような私たち日本人にとって身近な動物も、実は「絶滅危惧種」として認定されています。
・ホッキョクグマ(危険度中)
・レッサーパンダ(危険度中)
・チンパンジー(危険度高)
・ジャイアントパンダ(危険度高)
動物園で一度は見たことのあるこれらの動物も、実は自然界で暮らすのがとても難しくなっています。
日本にもいる「絶滅危惧種」
「日本版レッドリスト2020」によると、私たちの住む日本において絶滅危惧種に当てはまる動植物は3,716種もいるそうです。
実はこの絶滅危惧種の問題は、決して遠く国の話だけではないのです。
・イリオモテヤマネコ(危険度極めて高い)
・ラッコ(危険度極めて高い)
・ヤンバルクイナ(危険度極めて高い)
どれも名前を聞いたことがあったり、観光地などで見たこともある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
自然が豊かな日本においても、苦しい状況に追いやられている種が沢山いるという事実を覚えておきましょう。
なぜ「絶滅危惧種」が増えているのか?
世界において絶滅危惧種がどんどんと増えており、さらには「絶滅」してしまう動植物が増えています。
そのスピードは目を見張るものがあり、研究者たちは警鐘を鳴らしています。
恐竜がいた時代には1000年に1種類絶滅するペースでしたが、1975年から2000年までの25年の間に、年間で平均4万種が絶滅してしまったといわれています。これは恐ろしいペースです。
動物や植物を絶滅へと向かわせている原因はどのようなものがあるのでしょうか。
悲しいことに、そのほとんどが人間によって引き起こされているという現状があります。
森林伐採や開発
人間が住む場所を確保したり、農作物を作るための土地として、山や森を切り開いてしまうことで、住処を失う動植物がいます。
先にご紹介したチンパンジーなどは、まさに山から追い出され、住む場所が減ってきてしまっていることが原因で、絶滅危惧種となっています。
生息地の汚染
自然豊かだった場所が、人間によって工業地帯に切り替わったり、リゾート地に切り替えられることで、水や川の汚染が進み、住み続けられなくなる動植物がいます。
日本の絶滅危惧種であるカブトムシはまさにその例。瀬戸内海や吸収の沿岸に生息していましたが、開発が進み砂浜や干潟が減ってしまったことで、個体数が減り続けています。
乱獲や密猟
とても悲しいことですが、人間によって捕獲されてしまうことで減ってしまう種がいます。
日本人にとって身近な種だと、クロマグロ。本来であれば40年ほど生きるクロマグロですが、食用に乱獲が進むことで、個体数が激減しています。
ほかにも、アフリカに生息するクロサイ、その角ががん治療に効く漢方として高値で取引されることもあり、密猟がおさまりません。
外来種の持ち込み
他の地域から動植物を持ち込んでしまうと、その場所にあった生態系のリズムが崩れてしまいます。
日本においては、例えばヒアリが大きくニュースで取り上げられたことがありました。
またアライグマも実は外来種の一つです。海外から連れてこられた個体が逃げ出し増えてしまった結果、地域住民への農作物被害だけでなく、地域の生き物への攻撃にも繋がっています。
地球温暖化
地球温暖化によって、陸にも海にも大きな影響が出ています。オーストラリアや南アフリカで発生した大規模な森林火災は記憶に新しいのではないでしょうか。
あのような事件が起きると、そのエリアにしか生息していない絶滅危惧種が一気に減ってしまいます。
また、地球温暖化により海の流れが変わったり、海水の温度上昇に耐えかねて絶滅の危機にさらされる動植物が多種存在しています。
「絶滅危惧種」を減らすために私たちには何が出来るのか
あまりにも多くの原因が絡み合って、急速に増えている絶滅危惧種。
加速度が増している原因は、私たち人間にあるというのはとても悲しい現状です。
一個人として、どのようなことが出来るのか考えてみましょう。
自然を汚さないようにすること
自分の暮らしにおいて、自然を汚さないように気を付けましょう。
たとえば森や川に出かけたときは、ゴミを持ち帰るのはもちろんですが、現地ではせっけんを使わないようにするなどの配慮もできると良いですね。
さらに、森の中で見つけた野生の生き物に餌をあげるのも禁物です。自然界のサイクルに勝手に手を出さないことも、小さなアクションの一つです。
餌をもらうことに慣れてしまうと、地域住民との共存が難しくなることがあります。
サステナブルなキャンプ方法については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
動物由来の商品を買わないこと
よく考えてみたら当たり前のことですが、動物由来の商品を買うことは、乱獲に加担することに繋がっています。
「象牙やサイの角の漢方薬などには手を出さないよ」と思う方でも、実はレザー製品は所有しているということも多いのではないでしょうか。
自分の買い物が動物の存続の危機に繋がる可能性があると気づけば、どの商品を手に取るかが変わってくると思います。
最近では植物由来のレザー風アイテムもどんどん増えてきています。そのようなアイテムに切り替えるのはいかがでしょうか。
なんと、既にサボテンから作られるヴィーガンレザーもあるんです。こちらの記事でご紹介しています。
一人一人の正しい選択が、目を背けたくなるような現実を変えていくことにつながります。
まとめ:地球上の生物のダイバーシティが激減している恐ろしい状況
絶滅危惧種という言葉は多くの方が聞いたことがあると思います。
でも、1日のうちに何十種類もの動植物が、この地球から姿を消しているというのは信じられないのではないでしょうか。
しかもこの数字はあくまでも私たちが確認できている動植物についてのみ。
目に見えない小さな生き物であったり、海の底やジャングルの中に暮らすまだ見つかっていない生物も含めると、絶滅していく動植物の数はもっと膨れ上がるといわれています。
しかもこれらは遠いところの密林や島の話ではありません。日本においても今まさに絶滅しそうな種類の動植物がいることを忘れてはいけません。
毎日の暮らしの中で、どのように自然環境を良くできるのか、考えていきたいです。
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