アメリカ合衆国のニューヨーク州ロチェスターにあるGrass Fed(グラスフェッド)は、ヴィーガンの方に向けた肉屋として注目を集めています。
ヴィーガンの方に向けた肉屋という一見すると矛盾するような組み合わせをコンセプトとするこのお店は、植物由来の肉(いわゆる代替肉)を提供しています。
グラスフェッドがブームを引き起こした原動力は、代替肉であることを感じさせない多様な商品展開と、ユダヤ教徒に配慮したコーシャフードであることが挙げられます。
今回は、ヴィーガンの方に向けた肉屋としてヒットしたグラスフェッドの取り組みと、代替肉の今後の展望について紹介していきます。
代替肉を利用したヴィーガン向け肉屋がヒット
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グラスフェッドは代替肉を利用したヴィーガン向け肉屋です。
店頭に並ぶ商品は、植物由来のハムやソーセージで、味や食感の完成度が高いと評判です。
店を切り盛りするのはナイプ氏とルベル氏。
二人ともヴィーガンで「ハムやベーコンを挟んだ朝食用サンドイッチを食べたい」という思いからヴィーガンの方に向けた肉屋を始めることを決意したそうです。
引用元:Veg News, “A NEW VEGAN BUTCHER SHOP NOW SERVES WESTERN NEW YORK’S KOSHER COMMUNITY”
グラスフェッドが、これまでの代替肉販売店と大きく差別化したのは以下の2点です。
- 多様な商品の提供
- ユダヤ教の戒律に配慮
これらについて詳しくみていきましょう。
多様な商品の提供
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グラスフェッドでは2021年9月現在、20を超えるメニューが提供されている点が特筆されます。
メニューはたとえば、以下のようなものが用意されています。
- ベーコン
- ハム
- ソーセージ
- ターキー
もちろん、すべて植物由来の材料から作られている代替肉の商品です。
代替肉については、こちらの記事も参考にしてください。
バナナの皮も代替肉に!?野菜の代替肉、Meaty Veggiesとは
グラスフェッドで提供されるメニューはすべて、創業者のナイプ氏とルベル氏によって考案されたレシピで、毎週メニューが変更されるそうです。
また、新商品の開発にも注力しており、お客さんを飽きさせない工夫を施している点が人気を支える要因です。
コーシャフードとは
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グラスフェッドで提供されている商品は、ユダヤ教の戒律に配慮したコーシャフードであることも特徴的なので、併せて紹介していきます。
コーシャフードというのは、ユダヤ教徒が食べてもよいとされる「清浄な食品」のことです。
食品と宗教の関係というと、イスラム教のハラール認証を思い浮かべる人が多いかもしれません。
コーシャフードもハラール認証のように、豚を食べてはいけないなど、食材の規定がありますが、食材以外についても細かく定められています。
これはたとえば、「食べてよい動物であっても苦しませずに殺処分すること」「野菜に虫が混入していないか確認すること」など、倫理的配慮も含まれます。
なお、ユダヤ教徒は全世界で1,400万人ほどと、イスラム教徒の約18億人に比べると、その数は多くありません。
しかし、欧米では「コーシャフード=倫理意識の高い食品(エシカルフード)」という認識が強いため、ユダヤ教徒でない人からも人気が高いそうです。
コーシャフードであると認証を受けるためには、コーシャフードに関する法律を遵守し、ラビ(ユダヤ教の聖職者)による厳正な審査を通過する必要があります。
グラスフェッドではすべての商品について、ラビのキリムニック氏からコーシャ認証を受けており、エシカル消費に繋がるという点が人気を支える要因になっています。
エシカル消費については、こちらの記事も参考にしてください。
エシカルとは?エシカル消費の正しい理解と、実践する具体的なポイント5選
まとめ
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今回紹介したグラスフェッドでは、ヴィーガンの方に向けた肉屋というコンセプトを発展させ、多様な商品展開とコーシャ認証の取得という付加価値でブームを巻き起こしています
ヴィーガンの方に向けた肉屋というコンセプトは、2016年に生まれた新しい考え方です。
アメリカ初のヴィーガンの方に向けた肉屋「Herbivorous Butcher(アービバラス・バッチャー)」では、スモークリブやポーターハウスステーキなどをヴィーガン用として販売しました。
カナダのビクトリアにある「The Very Good Butchers(ザ・ベリー・グッド・バッチャーズ)」は、豆やセイタンを使用した肉製品を提供しています。
また、2020年11月にはイギリス初となるヴィーガン肉屋「Rudy’s(ルディーズ)」がオープンし、北米だけでなく全世界に広まりつつあります。
引用元:Veg News, “A NEW VEGAN BUTCHER SHOP NOW SERVES WESTERN NEW YORK’S KOSHER COMMUNITY”
日本でも代替肉は静かなブームとなりつつあるので、ヴィーガンの方に向けた肉屋がオープンする日も近いかもしれないですね。