ヨーロッパで流行っているのは訳あり野菜!環境と経済にやさしい「アグリーフルーツ」を食べるべき理由とは
ヨーロッパを中心に熱を帯びている「訳あり野菜」は、今注目のトピックです。日本でもさまざまな方法で手に入るので、ぜひ試してみてください!
それとも、形や色、鮮度などを良く見てから決めますか?
私たちは野菜や果物を購入する際、自分の判断基準に従って自然に選んでいます。その基準は本当に正しいのでしょうか?
この記事では、そんな判断基準に疑問を投げかける取り組みや、むしろ形や色にこだわらない野菜や果物を選んでいきたい理由について解説します。
目次
アグリーフルーツとは
「アグリーフルーツ(Ugly fruits)」とは「醜い作物」という意味で、形が整っていない、色が薄い、大きすぎる、小さすぎるなどの理由により流通しない野菜や果物のことです。
日本では、出荷する際の品質や大きさの規格は、都道府県やJA(農業協同組合)などにより決められています。
これらの規格を外れた作物は、カット野菜やジュース、加工食品に使われますが、残りは廃棄されているのが現状です。
しかし中には、味は規格品と変わらず、安全に食べられるものもあります。
EU(欧州連合)においても、曲がったキュウリや形の悪いニンジンなどの野菜や果物に、厳しい規制が敷かれていました。
しかし、2009年にこの規制が緩和され、これまで規格外とされていた農作物の販売を認めたという歴史があります。
その後ヨーロッパでは、規格外の野菜がより注目されるようになりました。
その大きなきっかけの一つになったのが、2013年にドイツの学生が始めたキャンペーンです。
2013年ドイツの学生が始めた「アグリーフルーツキャンペーン」が一つのきっかけに
ドイツのスーパーマーケットでは、「変形したニンジン」「こぶのあるレモン」は「売れない」とされ、毎年多くの量が廃棄されていたと言います。
しかし、形の悪い野菜や果物は品質に問題はなく、十分に食べられます。
これらの農作物を家庭でも食べてもらおうと、ドイツの学生3人が、「アグリーフルーツ」の魅力的な写真を使って一般に宣伝したのです。
これは「アグリーフルーツキャンペーン」と呼ばれ、大きな反響を呼びました。
2016年には、このキャンペーンを基礎に、食品廃棄の問題を解決するためのオンラインショップ「Querfeld」をオープン。
このショップでは、ドイツ、スペイン、フランス、その他のEU諸国の農場とネットワークを結び、アグリーフルーツを有効に活用する取り組みを行っています。
アグリーフルーツは環境と経済にやさしい
アグリーフルーツが廃棄されると生じる問題は、環境と経済に大きなダメージを与えることです。
農作物を育てるには、土地と水が必要ですが、それらを無駄に使ってしまうことになります。
世界では、約14憶ヘクタールの土地が、廃棄される農作物を生産するために使用されているといわれています。
これは、EUの3倍の面積に当たる広大な土地です。
また、毎年250兆リットルの水が、食べられることのない野菜に使われています。
これは、世界の飲料水の5%に当たります。*1
影響は、環境だけでなく経済にも及びます。アグリーフルーツを育てるために資材や人件費などを投入しても、実際に購入する人がいなければ大きな損失です。
例えばフランスでは、生産段階や家庭での消費などすべてを含めた食品廃棄の経済的損失は、160億ユーロと推定されています。*2
アグリーフルーツはこのうちの一部ですが、世界規模で見るとより多くの影響があると言えるでしょう。
*1 Lebensmittelverschwendung & Food Waste | Querfeld
*2 消費者庁「諸外国調査における食品ロス削減に関する先進的な取組についての調査業務」
アグリーフルーツがヨーロッパを中心に流行
アグリーフルーツが利用されないことで起きる環境や経済の問題を受けて、ヨーロッパを中心にさまざまな取り組みが行われています。
ポルトガルでは2013年に、農作物の大きさや形、色に関係なく販売される仕組みをつくる協同組合(Fruta Feia)が設立されました。
それ以降、イギリスのWonky Vegetables、アメリカでもHungry Harvestなどの組織がつくられ、アグリーフルーツを販売する動きはヨーロッパにとどまらず世界に広がっています。
また、ヨーロッパの大手スーパーマーケット「カルフール」は、規格外の野菜を40の店頭に置いて「闇市(Black Supermarket)」を2018年に開催。
当時厳しすぎると言われていた規格に、一石を投じたことで、大きな注目を集めました。
フランスのスーパーマーケット、アンテルマルシェでは、「形が悪くても、味に問題ない果物や野菜」を割引して販売しています。
他にも、アグリーフルーツのネット販売も盛んに行われています。
定期的に配達するサービスなども発達しており、今熱い視線を浴びています。
アグリーフルーツは日本でも販売
日本においても、本来食べられるのにもかかわらず廃棄されている食品「食品ロス」は、約522万トンです。
そのうち、275万トンが規格外品や売れ残り、返品、食べ残しというデータがあります。
これらを解消するために、各企業も取り組みを進めています。
百貨店の松坂屋は、規格外品をはじめ、賞味期限間近の商品や終売品をセール価格で販売する「もったいないセール」を2010年から実施。
年3回行われるこのセールには、1日約5,000人が訪れると言います。
また、日本のフードロス削減を目指す社会貢献型ショッピングサイト「Kuradashi」を運営している株式会社クラダシは、農林水産品の規格外品のほか、売れ残る一次産品を販売。
これにより、全国の農業・漁業従事者の雇用と経営の発展を支援しています。
他にも、ローソンの運営する農場で産出される10~15%の規格外野菜を加工して総菜やサラダ、漬物などに加工されています。
規格外品を「訳あり」商品として販売している店舗やネットショップはたくさんあります。
個人でも気軽に利用できるので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。
農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢<令和5年1月時点版>」
「訳あり」のアグリーフルーツを購入して環境・経済に貢献!
アグリーフルーツの取り組みを見てきましたがいかがでしたか?
規格外の野菜や果物を含めた食品廃棄は、世界的な問題になっています。
ヨーロッパだけでなく、アメリカや日本でも「規格外の野菜や果物を活かしていこう」という運気は高まっている実態もありました。
一人一人が環境や経済に貢献する一つの手段として、「訳あり野菜」(アグリーフルーツ)は静かに注目を集めています。
店舗だけでなく、ネットショッピングでも気軽に利用することも可能です。
ぜひ「訳あり野菜」を試して「醜い野菜や果物」に目を慣らし、野菜や果物を選ぶ基準を見直してみませんか?