2023年は「国際雑穀年」雑穀が気候変動にも貢献する、スーパーフード以上のスマートフードである理由を徹底解説
日本人にとっても馴染みのある「雑穀」が今世界中で注目されているのをご存知ですか?気候変動にも貢献すると言われる雑穀について徹底解説していきます。
現在日本ではほとんど栽培されていませんが、昔話「桃太郎」のきび団子で馴染みがあるように、日本では古くから雑穀が親しまれてきました。
そんな雑穀が、健康的で環境や生産者に優しいスマートフードとして今世界中で注目されているのをご存知でしょうか?
栄養価が高く、気候変動にも対応できるため、持続可能な社会を実現するための重要な役割を担う食料として期待されているのです。
この記事では、そんな雑穀の持つ可能性について詳しく解説していきます。
目次
再び注目を浴びている「雑穀」
雑穀とは英語でmillet(ミレット)といい、イネ科作物に属する小さな穎果をつけるヒエ、アワ、キビなどの総称です。
炊いて米のように食べたり、お粥にするのはもちろん、ピザや焼き菓子などに小麦粉として使ったり、シリアルに混ぜたりとさまざまな使い方ができます。
主にアフリカやアジア諸国で生産されており、最大の生産国はインドです。
サハラ以南のアフリカとアジアの一部では今でも伝統的な主食として親しまれています。
一方、日本の主食が雑穀から米に変わったように、年月を経て主食として食べられることは減っていきました。
農村や部族のコミュニティの食べ物と見なされるようになった雑穀ですが、近年世界から再び注目を集めています。
雑穀が注目される理由
ここからは、なぜ今雑穀がこれほど注目されているのかについて詳しく解説していきます。
過酷な生育環境でも栽培できるため気候変動と飢餓に対抗できる
雑穀は、他の作物が育てられないような痩せた土壌や干ばつといった厳しい生育条件にも耐えることができます。
さらに、雑穀は水や肥料をあまり必要とせず、最低限の病気や害虫に耐性がある丈夫な作物です。
様々な生育環境に適応でき、最小限の投入とメンテナンスで育つことから気候変動への耐性が高い作物であると言われています。
こうした理由から雑穀は気候変動に強い農業を可能にし、飢餓をなくすためのソリューションとして食料安全保障と栄養に貢献する可能性を秘めているのです。
栄養素が高く健康的
雑穀はタンパク質、食物繊維、抗酸化物質、ミネラルを含む栄養価の高い食物です。
また、加工小麦や米よりもはるかに高いレベルの鉄分とカルシウムを含まれています。
例えば、100 グラムのラギ粒には344 mg のカルシウムが含まれていますが、米には 33 mg、小麦には 30 mg しか含まれていません。
また、グルテンフリーで低GIなため、血糖値が高い方や糖尿病の方、ダイエット中の方に向いています。
開発途上国の小規模農家に生計向上の機会を提供することができる
米や小麦、トウモロコシなどほかの穀物が普及されていくにつれて、雑穀の生産と消費は減少していきました。
雑穀の生産と消費を促進し市場でのシェアを回復することで、開発途上国の小規模農家に新たな機会と収入源を生み出すことにつながります。
世界の食料システムの多様性が向上する
現在、キビは世界の穀物取引の3% 未満しか占めていません。
穀物の生産量は米、小麦、トウモロコシといった三代穀物が全体の90%ほどを占めており、非常に偏りがある状態です。
雑穀は生産の多様性を高め、依存の緩和と食糧の安定供給に役立ちます。
突然のショックが穀物市場に影響を与えた場合、雑穀は主に取引されている穀物に代わる貴重な代替品になり得ます。
雑穀は世界貿易市場の回復力を向上させ、急激な変化にも対応できる重要なオプションであると言えるでしょう。
2023年は国連により制定された「国際雑穀年」
2021年3月に行われた第75回国連総会では、2023年を『国際穀物年』に制定することが宣言されました。
国際雑穀年は「雑穀の利点についての認識を高め、政策や利害関係者の関心を向ける機会となること」を目的としています。
この活動は、農林水産業の発展や食料安全保障等に取り組む国連の専門機関であるFAO(国際連合食糧農業機関)が主導しています。
世界各国で、またはバーチャルでさまざまなイベントが開催されており、イベントの一つとしてFAOが行なっているのが「グローバル シェフ チャレンジ」です。
インスタグラムで行われているこの企画では、世界中のシェフが雑穀の調理方法や食べ方についてのレシピを紹介しています。
栄養が高く幅広い料理として楽しめる雑穀の可能性を発見できるので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
雑穀は栄養価が高く、気候変動にも対応できるため、持続可能な社会を実現するための重要な役割を担う食料として期待されています。
人口の増加や気候変動による食糧不足の不安や、ウクライナ危機の長期化によって穀物の海外依存への懸念が高まる中、ますます注目が集まっていくのではないでしょうか。
参考:INTERNATIONAL YEAR OF MILLETS 2023
参考:Why 2023 is the year of millets – BBC Travel
参考:国際雑穀年 2023 | 国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 | Food and Agriculture Organization of the United Nations
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