フルーツや野菜に含まれる抗酸化物質が記憶力の低下を遅らせる、新たな研究結果が明らかに
最新の研究によると、果物や野菜、お茶やワインに含まれる抗酸化物質、「フラボノール」を含む食品を多く食べたり飲んだりしている人は、記憶力の低下の速度が遅い可能性があることが明らかになりました。その詳細をお伝えします。
果物や野菜、お茶やワインに含まれる抗酸化物質、「フラボノール」を含む食品を多く食べたり飲んだりしている人は、記憶力の低下の速度が遅い可能性があると、アメリカの神経学会の学術誌「Neurology」に発表されました。
「人間が脳の健康を維持するために、より多くの果物や野菜を食べたりお茶を飲んだりすることは、良い効果を及ぼす簡単な方法です。」と、研究に関わる研究者トーマス M ホランド氏は述べています。
この研究では、平均年齢 81 歳、平均 7 年間観察された認知症のない 961 人が関与しました。
彼らは特定の食品を食べる頻度について毎年アンケートを記入し、また認知と記憶のテストを受け続けました。
そのほかにも、運動時間や読書、ゲームなどの精神的な活動に使う時間など、他の要素についての質問に回答し、認知の記憶に直接関係のない部分についても観察され続けてきました。
研究の参加者たちは、食事に含まれるフラボノールの量に基づいて、5つの等しいグループに分けられました。
アメリカの成人のフラボノール摂取量の平均は1日約16〜20ミリグラムに対し、最も低いグループでは1日あたり約5mg、最も高いグループでは1日あたり平均15mgを摂取するようにしました。
また、認知機能の低下率を調べるために、研究者は19の認知機能テストをまとめた、総合的なグローバル認知力スコアを用いて計測しました。
平均スコアは、思考に問題のない人の0.5から、軽度認知障害の人の0.2、アルツハイマー病の人の-0.5までの範囲でした。
年齢、性別、喫煙など、記憶力の低下速度に影響を与えうる他の要因を調整し、興味深い結果が明らかになりました。
フラボノールの摂取量が最も多い人の認知スコアは、摂取量が最も少ない人が10年に1単位の速度で進むところを0.4の速度で進み、記憶力がより緩やかに低下することがわかったといいます。
研究者のホランド氏は、これはおそらくフラボノール固有の抗酸化作用と抗炎症作用によるものだと指摘しています。
そして、「私たちの研究が、特定の食事を選択することで、認知機能の低下速度が遅くなる可能性を示していることは、とても喜ばしいことです。」と述べています。
脳が喜ぶ野菜、ケールや豆類
また、この研究では、フラボノール類をさらに細かく分類し、ケンプフェロール、ケルセチン、ミリセチン、イソラムネチンの4つの成分に分類しました。
それぞれのカテゴリーで上位の食品は、以下の通りです。
- ケンプフェロール:ケール、豆類、お茶、ほうれん草、ブロッコリー
- ケルセチン:トマト、ケール、りんご、お茶
- ミリセチン:お茶、ワイン、ケール、オレンジ、トマト
- イソラムネチン:梨、オリーブオイル、ワイン、トマトソース
ケンプフェロールの摂取量が最も多い人は、最も少ない人に比べて認知機能の低下速度が10年当たり0.4単位で遅くなりました。
また、ケルセチンの摂取量が最も多い人は、最も少ないグループと比較して、認知機能の低下速度が10年当たり0.2単位遅くなりました。
そして、ミリセチンの摂取量が最も多い人は、最も少ないグループの人と比較して、認知機能の低下の速度が10年当たり0.3単位遅くなり、食事によるイソラムネチンの摂取は、認知機能とは関連していなかったことが判明しました。
ホランド氏は、「この研究は、食事性フラボノールの量が多いこと、そして認知機能の低下が遅いこととのの関連を示していますが、フラボノールが直接認知機能の低下速度を遅くすることを証明するものではありません。」と述べています。
植物性食品による健康効果
健康的な植物性食品(果物、野菜、ナッツ、全粒穀物、豆類、植物油、お茶、コーヒー)を多く食べた人は、動物性食品を多く含む食事をした人に比べて、具体的に知覚速度の低下が49.3%、エピソード記憶の低下が44.2%遅くなったことが明らかにされました。
この研究は、植物性食品が健康、特に脳の健康に良いという研究結果に、「記憶力の低下を遅らせる」という面で補足し、脳への健康的な効果をさらに裏付けることになりました。
2018年には、アメリカの神経学会が発表した別の研究により、フルーツや野菜を多く食べる男性は、加齢による記憶力の低下や思考力のリスクを下げる可能性があることが既に分かっています。
また、この研究の研究者は、プラントベース食品、具体的には葉物野菜、赤・オレンジ野菜、ベリー類、オレンジジュースなどを多く摂取している人は、記憶機能が低下する可能性が34%低いことを発見しています。
まとめ
2025年には、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると言われています。
また、若い人でも若年性認知症などを発症するリスクがあるため、認知症は決して高齢者だけの病気ではありません。
いつまでも健康で、楽しく過ごすためにも、病気は予防したいですよね。
そのためには、常日頃から自分自身の体調や食事に関心を持ち、健康的な生活習慣を心がけることが必要です。
食事を通した将来への健康投資で、未来のあなたが大きく変わるかもしれません。
ついついファストフードや高カロリーな食事を選んでしまいがちな方も、将来の自分のために、週1回の菜食(ミートフリーデー)を設けるなど、できるところから始めてみませんか?
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