2050年までに国土の80%が居住不能に…気候変動に立ち向かうモルディブとサンゴ礁
近年、地球温暖化による気候変動がもたらす影響が深刻化しています。海水面上昇により国土そのものがなくなってしまう危機にさらされている「モルディブ共和国」を守るための対策について、解説させていただきます。
地球温暖化による気候変動で、このまま海面が上昇し続けた場合には、海抜の低いモルディブの島々は、数十年後には消滅してしまうかもしれません。
モルディブ政府が、国土消滅の危機から島々と住民をまもるために推し進める数々のプロジェクトについて、みなさんにご紹介させていただきます。
モルディブ共和国とは
日本から7600㎞、インド洋に浮かぶモルディブ共和国は、1192の島々から成る国です。
ターコイズブルーのラグーンに浮かぶコテージや白砂のビーチなど、美しい景観が魅力的で、アジアの人気リゾート地としても、よく知られています。
伝統的な親日国でもあり、毎年多くの日本人が観光で訪れるモルディブの島々ですが、地球温暖化がもたらす影響によって、今、国土消滅の危機にさらされているのです。
海面上昇がモルディブに被害をもたらす
地球温暖化によって引き起される問題のひとつである「海面上昇」とは、南極などの氷河が解けて海面が高くなる現象です。
実際、この30年間で海面が10センチほども上昇し、近年ではさらに速度が増していることが、世界気象機関からの報告によって判明しています。
このまま地球温暖化が進めば、2100年には海面が今よりも1メートル以上上昇するという予測データが、海外の研究機関などからも報告されてます。
もともと海抜の低いモルディブの国土は、その80パーセントが海抜1メートル以下で、津波などの際に避難するような高台もありません。
サンゴ礁から成る島国は、もともと海面上昇の影響を受けやすいということもあり、モルディブの1192の島々のうちの97パーセントでは、すでに海岸浸食被害が報告されています。
海面の上昇に伴い国土が狭くなり続けるモルディブが消滅してしまわないよう、モルディブ政府はさまざまな対策をとっているのです。
海面上昇からモルディブを守るための対策とは
気候変動に立ち向かうため、モルディブが国を挙げて推し進めるプロジェクトの数々を、ご紹介させていただきます。
モルディブ水上都市建設プロジェクト
モルディブ政府が、オランダのDutch docklands社と提携し、進められているのが「The Maldives Floating City」計画です。
これは、サンゴ礁の海に「浮かぶ島」をつくり、そこに住宅や教育機関、病院などを建設するというプロジェクトです。
首都マレから約10分ほどという便利な場所に現在建設中の水上都市は、2027年に完成予定となっています。
近い将来、サンゴ礁を保護しながら自然と共生していく、水上都市での暮らしが当たり前となる時代がやってくるかもしれません。
埋め立てによる土地造成と住民の移住
モルディブ全体の面積は、東京23区のおよそ半分ほどしかありませんが、およそ54万人ほどの人々が暮らしています。
人口増加傾向にあるモルディブでは、国土面積を拡大するため、土地の埋め立てや人工島の開発・造成プロジェクトが急ピッチで進められています。
モルディブの首都、マレの近くに位置する「フルマーレ島」は、海面の上昇に備えるため、海抜2メートルに埋め立てられてできた人工島です。
津波など自然災害対策にもなるマンションの建設も進んでおり、将来的には、およそ20万人(人口の4割)の島民が、フルマーレ島に住むことができるようになります。