急拡大するヴィーガン市場、畜産業から農家への移行プロジェクトとは?
ヴィーガン市場が拡大して食肉の生産が減ると、畜産業界で働く人たちはどうなるのでしょうか。アメリカの取り組みについてご紹介します。
日本の畜産業に対する国の対策
大豆ミートなどのプラントベースのたんぱく質が注目を集めているのは、アメリカだけでなく日本も同じです。しかし、日本では食肉の需要は高まっている傾向があります。
次の表は、牛肉・豚肉・鶏肉の国内生産量・輸入量の推移を表しています。
牛肉の国内消費量は、平成12年にピークを迎えてからいったん減少しますが、その後徐々に上がってきています。豚肉や鶏肉については、右肩上がりに伸びている状況です。
また、食肉全体の国内消費量のうち、半数ほどは海外からの輸入に依存している状況であり、牛肉の食料自給率は35%(重量ベース)と低くなっています。(令和元年度)※1ちなみに、鶏肉は64%、豚肉は49%(重量ベース)であり、日本では全体の食料自給率を上げることが課題です。
一方で国は、畜産が環境に負担を与えている状況も考慮し、持続的な畜産物生産を目指して、「みどりの食料システム戦略」を掲げています。その内容は、
①2040年までに革新的な技術・生産体系を順次開発
②2050年までに「政策手法のグリーン化」を推進
などです。例えば、牛のげっぷなどに由来する温室効果ガスを抑制する飼料を開発し、持続的な畜産物の生産を進めていくための取り組みを行うとしています。※2
アメリカと日本とでは、食肉やプラントベースの肉を取り巻く状況や畜産業への対応が異なりますが、それぞれの課題を解決するために取り組みを進めています。
畜産労働者の支援を続けながらヴィーガンへの移行を進めるアメリカ
アメリカのプラントベース市場の拡大に伴い、食肉の需要が減少して畜産業の雇用が危機にさらされる課題について見てきました。
経済的に見れば、食肉からプラントベースに移行しても、損失は少ないと予想されています。ただし、そこで働く人たちへの人道的支援は必須です。
この問題を受け、ヴィーガン企業や非営利団体などは、畜産農業者に向けたプロジェクトを展開しています。実際に畜産業からプラントベースの農業への移行した成功例もあります。
このような事例が増えれば、アメリカのヴィーガン化が急速に進んでいくことも考えられるでしょう。
日本では、食料自給率を上げる目的で畜産業への支援を行っていく方針ですが、今後プラントベースの需要が伸びれば、アメリカの事例が参考になるときが来るかもしれません。