イギリスがEV充電器を2030年までに現在の10倍に-日本との違いは?
イギリス政府は公共のEV充電器を2030年までに30万台に増やし、EV化を推進する計画です。その背景とは?日本のEV事情を交えて解説します。
目次
イギリスでは、2035年までに50万台近くの新しいEV充電器が必要
イギリスは、現在の公共のEV充電器を2030年までに10倍の30万台に増やす計画を発表しています。計算すると、現在の台数はおよそ3万台です。
一方、日本のEV充電器は、公共用で急速・普通用合わせて4万1,445台(2021年推定)で、2035年には、5万5,100台になると予測されています。※1現在の充電器の数では、日本の方が多いという結果でした。
イギリスの計画は、それでも予想される需要をまだ下回っていると、さまざまな企業や自動車グループから批判を受けています。エネルギー規制当局の電力・ガス市場局(Ofgem)は、2035年までに毎年約2万5千台の公共充電スポット48万台と、電源ケーブル200万本が必要であるとしています。
なぜ、公共の充電器の数を増やさなければならないのか、それにはイギリスのドライバー事情があります。
公共の充電スポットを設置して充電するスペースを提供
イギリスでは、家の敷地に車を止めて充電する私道スペースのない人は、公共の充電スポットを使用することになります。そのため、運輸省は本計画の予算5億ポンドのうち4億5000万ポンドを、公共や路上の充電設備を設置する事業に充てる予定です。この計画はすでに、16億ポンドのEVインフラ戦略の一環として発表されています。
また、全世帯の25%近くが公共駐車場などの路外駐車場を利用できないため、公共の充電器を増やすことで国民のEVへの乗り換えが進むことを期待しています。というのも、EVを充電するスペースを確保することが、車の所有者にとって大きな障害になっているからです。EVの充電時間は30分~12時間程度。その間どこに車を止めるのかは、頭の痛い問題になっています。
現在はロンドンに集中しているEV充電スポット
運輸大臣のグラント・シャップスは、「人々が都心や田舎の村、国の北部、南部、東部、西部など、どこに住んでいても、国が電気自動車への切り替えを強化する中で、誰も取り残されないようにします」と述べています。
しかし、EV充電器の利用には地域的な格差が今も拡大し続けています。特に、従来からサービスに行き届いていないイングランド北部では、この不均衡はさらに急速に広がっています。現在、全充電器の約3分の1がロンドンにあるのです。
民間企業はEV充電器を売り上げに利用
公共のEV充電器が足りていない状況で、民間企業はこれを利用して自社の利益につなげようとしています。
タコベルとスターバックスの両社は、店舗にEV充電スタンドを設置することで、充電を必要としている客を呼び込み、売り上げの増加を期待しています。
イギリスの今後の動向に注目
二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないEVは、気候変動などの環境問題の解決に貢献するとして国際的に導入が推進されています。
しかし、EV化が日本よりも進んでいるイギリスでも、普及していくには価格が高いことや、充電スペースを確保することなどの課題があるのが実情です。
2030年にEV充電器を30万台にするというイギリス政府の取り組みには批判もありますが、今後どのように進められ、結果につなげていくのか、行方を見守っていきたいところです。
参考:LIVEKINDLY “EV Chargers Will Outnumber Fuel Pumps in the UK By 2030”
※1 日本経済新聞「国内のEV急速充電器、2035年に5割増 民間予測」