近年、アパレル業界全体でサステナブルな商品作りとシステムの改善への取り組みが加速しています。
ファストファッションの流行によって安価で衣類が手に入るようになった一方で、大量生産・大量消費・大量廃棄のシステムが環境に大きな影響を与えていることが明らかになったからです。
特に、アパレル業界における炭素排出量は世界の年間炭素排出量の10%を占めていることが明らかになっています。
これは、航空業界と運送業界の合計を超える量に当たります。
参考:UNEP「UN Alliance For Sustainable Fashion addresses damage of ‘fast fashion」
世界が脱炭素社会を目指す中、アパレル業界全体が二酸化炭素排出量を減らし、カーボンニュートラルを実現していくことが重要視されています。
脱炭素については「脱炭素って知ってる?内容と身近で取り入れる事ができる実現方法を徹底解説」で詳しく解説しています。
そんな中、世界最大のファストファッションブランド・ZARA(ザラ)が炭素排出物から作られたドレスを販売することを発表しました。
ZARAが炭素排出から作られたパーティドレスをリリース

今回ZARAから発売されるパーティ用ドレスは、アメリカのスタートアップ企業LanzaTech(ランザテック)と提携して作られました。
通常であれば化石燃料から作られるポリエステル糸の代わりに、製鉄所から排出された炭素をリサイクルして作られた生地を使用しているのが特徴です。
LanzaTechとは
LanzaTechは排出された炭素をエタノールに変換し、そのエタノールをポリエステルなどの新素材を生産する新しい炭素回収技術を開発したバイオテクノロジー企業です。
ビールが糖を酵母によって発酵させて作られるように、独自の発酵技術によって排出された炭素をエタノールに変換します。
このように排出される炭素を新たな資源として再利用できる技術は、脱炭素を目指す社会に大きく貢献すると注目を集めています。
炭素排出を再利用した生地を使用した革新的なドレス

今回リリースされたドレスの生地には、ポリエステル糸に使われるPETの原料として再利用した炭素から変換したエタノールが使用されています。
最終的には、再利用された炭素を原料とするモノエチレングリコールが20%、高純度テレフタル酸80%がPETに含まれます。
このような炭素排出で作られた服が販売されるのは今回のZARAのコレクションが初めてです。
炭素排出から作られた原料が含まれるのは20%ですが、新たに資源を使わず、大気中に排出される炭素の量を削減にすることに貢献する革新的な取り組みと言えるでしょう。
パーティドレスは日本からも購入可能

今回発売されたドレスは、ショート丈でドレープが効いたパーティドレスです。
アシンメトリーデザインのものや、ボリュームスリーブが特徴的なものなど、ミニマルでありながらデザイン性の高い複数種類のドレスを展開しています。カラーは全てブッラックとなっています。
価格は7,590円で、日本からもZARA公式サイトで購入が可能です。
まとめ
ZARAはファストファッションブームを牽引してきた人気ブランドですが、環境に悪影響を与えていると批判されることが多いのも事実です。
ZARAは毎年4億5000万点の衣料品を生産しており、その中でも多くのアイテムがポリエステルでできています。
プラスチックでできているポリエステルは、製造の際に多くの二酸化炭素を排出するだけでなく、マイクロプラスチックによる海洋汚染の一因として問題視されています。
さらに、埋め立てた際には生分解するのに最大200年かかると言われています。
(参考:LIVEKINDLY「Zara Creates LBD Made From Carbon Emissions」)
ZARAが環境への影響を減らすにはまだまだ長い道のりがあります。
しかし、今回通常のポリエステルの代わりとなる素材を使ったLanzaTechとのコラボレーションは大きな一歩と言えるのではないでしょうか。
初めて再利用された炭素排出で作られた服を販売したという意味でも、アパレル業界にとって革新的な第一歩になったはずです。
持続可能な社会のための変革を求められる中、今後ZARAがどのような取り組みをしていくのか目が離せません。