さとうきびの搾りかすがお洒落なかりゆしウェアに生まれ変わる、沖縄発のサーキュラーエコノミー「バガスアップサイクル」をご紹介
沖縄の基幹作物である「さとうきび」の搾りかすからつくられた、かりゆしウェアのシェアリングサービスが始まりました。自然環境に優しい循環型ビジネス「バガスアップサイクル」について、解説いたします。
「さとうきび」は、沖縄県内で一番多く栽培されている基幹作物です。
この、さとうきびの絞り汁から砂糖が作られますが、その搾りかす(バガス)は、工場の燃料や肥料など、様々な用途に利用されています。
今、沖縄では「バガス」をアップサイクルして作られた高品質な「かりゆしウェア」のシェアリングサービスが、注目されています。
バガスに秘められた可能性と、サーキュラーエコノミーに着目した「循環型ビジネス」とは、一体どのようなものなのでしょうか。
その詳細について、解説させていただきます。
目次
バガスのさまざまな用途
「さとうきび」から砂糖になる成分を抽出した後、葉や茎などの搾りかすが大量に発生します。
この、さとうきびの搾りかすは「バガス」とよばれ、工場の燃料のほか、家畜の飼料、パルプ原料、衣料品の原料など、様々な用途に用いられています。
沖縄の製糖工場から発生したバガスを加工し、高品質な生地で仕立てられた「かりゆしウェア」のシェアリングサービスが、㈱BAGASSE UPCYCLEによって、スタートしました。
主に観光客や出張客に向けられた、自然にやさしい循環型のビジネスモデルのお手本ともいえる「バガスアップサイクル」を、ご紹介いたします。
沖縄の天然素材から生まれたかりゆしウェア
かりゆしウェアは、ハワイのアロハシャツに倣ってつくられた開襟シャツで、別名「沖縄シャツ」ともよばれています。
ハイビスカスや波、パイナップルなどの沖縄らしい伝統的な柄や染物が特徴的なかりゆしウェアは、冠婚葬祭などで着られることも多く、沖縄を訪れる観光客にも、たいへん人気がある商品です。
観光で沖縄を訪れた人々が、かりゆしウェアを購入・着用されることもあるのですが、自宅へ帰った後、そのままタンスの肥やしになってしまうことも多いのだとか。
バガスを有効活用し、無駄になる衣類を減らすために考案されたのが、2021年3月にスタートした「バガスアップサイクル事業」です。
沖縄の文化と自然環境を守る、バガスアップサイクル事業とは、一体どのようなもなのでしょうか。
バガスアップサイクル事業
バガスアップサイクル事業は、沖縄の企業、㈱BAGASSE UPCYCLEによって展開されています。
地元沖縄産のバガスを原材料として生み出された、とっておきのかりゆしウェアは、できる限り環境負荷がかからないように作られたファッションアイテムです。
バガスを有効活用したかりゆしウェアは、以下の工程で作られます。
- まず、製糖工場から排出されたバガスを集め、沖縄県内において粉砕加工します。
- 次に、美濃和紙の伝統的な製造方法を用い、バガスを和紙にします。
- 和紙を、より合わせ糸状にした繊維を、広島県のデニム工場で生地に織り上げます。
- 生地を染色し、縫製したら完成です。
出来上がったかりゆしウェアは、主に観光客向けのシェアリングサービスや、月間サブスクにて提供されています。
かりゆしウェアの完全循環を実現させるトレーサビリティシステム
バガスから作られたレンタル用のかりゆしウェアには、それぞれにIⅭタグが埋め込まれています。
スマートフォンで商品のタグを読み込むだけで、ウェアの生産から現在までのトレーサビリティを確認することができます。
今後、何度も使用されて製品の寿命を全うしたかりゆしウェアは、製炭炉で炭にした後、再びサトウキビ畑に戻すか、もしくは炭として活用し、完全循環を目指します。
また、このシステムは、循環型社会実現へのビジネスモデルとして多方面で評価されており、2021年には循環経済をデザインする「サーキュラーアワード」を受賞しています。
循環型ビジネスでアパレル産業の課題を解決する
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環境汚染産業とよばれるアパレル産業は、大量生産、大量廃棄に伴う温室効果ガス(ⅭO2)の排出量が、地球全体の約20%を占めているといわれています。
バガスアップサイクルでは、かりゆしウェアのシェアリングサービスを通じ、地域の活性化や伝統産業を大切に守ります。
さらに、環境負荷を減らすため、製品のリペアやメンテナンスに力を入れ、製品寿命を延ばし、かりゆしウェアの生産や廃棄に伴う温室効果ガス排出削減にも積極的に取り組んでいます。
かりゆしウェアは、那覇のHIS LEALEAラウンジOKINAWAや、沖縄県内の提携ホテル、コワーキングスペースなどで、レンタルすることができます。
また、サブスクリプション後に商品を購入することも可能ですし、かりゆしウェアのトレードサービス(有料)も行われています。
新品、もしくは準新品のシャツの中から、好みのデザインのものと交換することができます。
できる限り廃棄物を出さず、資源を循環させていくという環境にやさしいビジネスの仕組みが今、バガスアップサイクルを通じて作られつつあるのです。
まとめ
通常のかりゆしウェアを作るためには、原料の調達から製造まで、高い環境負荷とコストがかかります。
しかし、自然環境を守りながら、沖縄文化を継承していくことのできる循環型のかりゆしウェアは、砂糖の製造過程で発生する副産物のバガスを有効活用してつくられた、とても環境に優しいシャツです。
かりゆしウェアをシェアリングすることで、使われることのない衣類を減らし、資源の無駄遣いを防ぐこともできます。
持続可能で、環境負荷を軽減したかりゆしウェアを作る「バガスアップサイクル」の循環型ビジネスから、今後も目が離せません。
参考サイト:bagasse-upcycle Circular Kariyushi Service
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