自動車にもヴィーガンレザーが使われる?原料や事例をご紹介
現在、国内外の自動車分野において、「レザーフリー」の動きが見え始めています。いったい、どんなヴィーガンレザーを使用しているのでしょうか?
4. Dinamica®(ディナミカ)| リサイクル原料を使用した人工皮革
アウディの電気自動車シリーズの「e-tron GTクワトロ」では、オプションパッケージを選択すると、人工皮革と、リサイクル素材から抽出したポリエステル繊維など、レザーフリーなインテリアにすることができます。
この人工皮革は、日本企業である旭化成の、「Dinamica®(ディナミカ)」というファブリックです。
超極細繊維と水系ポリウレタンからなる、独自の三層構造を持つ人工皮革です。
リサイクルポリエステルをはじめ、通常ならば廃棄されるような繊維くずや、ペットボトル由来のリサイクル原料を使用しているのも特長です。
化学メーカーとして始まった旭化成は、その高い研究実績や技術力を活かし、化学繊維業界では、水系のポリウレタンを使用する先駆けとなるなど、環境へのアプローチも確かです。
また、ディナミカ®を自動車に使用されている例は、アウディだけではありません。
メルセデスベンツには、2013年にすでに採用されていたことがわかりました。
さらに、自動車だけではなく、ステラマッカートニーなど、ファッションにも採用されています。
【出典】
旭化成 Dinamica® オフィシャルサイト:Dinamica® | Asahi Kasei AUTOMOTIVE (asahi-kasei-mobility.com)
【参考】
メルセデス・ベンツ、専用設定の内外装と安全装備で魅力を高めた特別仕様車「C 180 Edition C」 – Car Watch (impress.co.jp)
5. セルクロス® | 防水・透湿性を備えた合成皮革
日産のアクティブSUVといえば、エクストレイル。
防水シート搭載をアピールするために、雪にまみれて、濡れたままで荷物を積み込み、シートに座るCMを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
そのシートに使用されているのが、スミノエ テイジン テクノ株式会社の「セルクロス®」です。
日産がセルクロス®を起用した自動車は、エクストレイルだけではありません。
仕事だけでなく、サーフィンなどをされる方にも人気の「キャラバン」では、「プロスタイル」というモデルにも起用されています。
残念ながら、素材、原料など詳細は、どうやら企業秘密のようで明記されていませんでした。
しかし日産がこのセルクロス®を起用した理由は、防水機能だけではないことがわかりました。
セルクロス®は、高い防水性だけではなく、透湿性にも優れています。
その機能性は、「湿式発泡技術」という技術によって実現しました。
そのウレタン樹脂を、下地へ塗布する際に工夫を施し、摩耗性も向上させ、耐久性に優れた合成皮革と言えます。
アクティブに、豪快に遊びつくしたい方の車には最適ですね。
【出典】
スミノエ テイジン テクノ株式会社 | セルクロス®について:取扱製品について|スミノエ テイジン テクノ株式会社 (suminoe-tt.co.jp)
エクストレイルの防水シートを実現した合成皮革 | 日産ギャラリーフォトギャラリー (nissangallery.jp)
【参考】
2017年のキャラバンに対する内容ではありますが、セルクロス®の機能性についてのレビューです。
NV350キャラバン専用防水シート | NV350キャラバンの全て (nv350caravan.com)
まとめ
こうしてみると、たくさんの自動車メーカーが、一歩ずつ、レザーフリーへと移行しているように感じますね。
しかし、この、自動車に使用されるヴィーガンレザーは、ひとくちに「レザーフリー」「ヴィーガンレザー」と言っても、植物性レザーとは限らないことがわかりました。
毎日のように利用する自動車は、人の手や体が触れる部分も多く、屋内で管理することができない場合には、高温の炎天下にさらされる場合もあります。
また、誕生してから時間の浅いヴィーガンレザーは、技術開発なども発展途上であり、ファブリックそのもののコストが高いことも課題のひとつです。
そして、レザーフリーへの転換において、日本はまだまだ消極的という印象も受けました。
環境後進国と揶揄されている日本でも、もっとサステナブルな生活が当たり前になれば、きっと自動車にも反映されるでしょう。