バハマのピッグビーチの問題点:人気観光スポット「エグズーマ島」を訪れてはいけない理由
カリブ海に浮かぶ島国「バハマ」のエグズーマ諸島に、野生の豚と泳げる無人島があることを皆さんはご存じでしょうか。地上の楽園ともいわれ、人気の観光スポットになっているこの島にまつわる問題について、解説させていただきます。
700を超える小島とサンゴ礁から成り立っているバハマ国ですが、実は人が暮らしている島は30あまりで、そのほとんどは無人島であることを、みなさんはご存じでしょうか。
近年、野生の豚と泳げる人気の観光スポットとして、バハマのエグズーマ諸島に位置する無人島「ビッグ・メジャー・ケイ」に人気が集まっています。
しかし、通称「ピッグ島」ともよばれるメジャーケイは、動物愛護の観点からも、さまざまな問題を抱えているように見受けられます。
その詳細について、皆さんに解説させていただきます。
目次
野生の豚と泳げる無人島「ビッグ・メジャー・ケイ」
ビーチの周りを泳ぐ野生の豚の姿がみられるのは、バハマのエグズーマ諸島にある無人島「ビッグ・メジャー・ケイ」です。
エグズーマ諸島は、バハマの首都「ナッソー」から、高速船で約1時間程度と、比較的アクセスしやすい場所にあるため、毎日多くのツアー観光客が訪れています。
通称「ピッグ島」とも呼ばれる、ビッグ・メジャー・ケイには、現在、20数頭もの野生の豚が住み着いているようです。
なぜ野生の豚がバハマのビーチに生息しているのか
現在、ピッグビーチに生息している豚たちは、すべて外来種です。
では、この豚たちは、バハマのエグズーマ諸島に、一体どのようにやってきたのでしょうか。
これには諸説ありますが、食用として船で飼育されていた豚が、船が難破した際に逃げ出し、泳いで無人島であるビッグ・メジャー・ケイにたどり着いたという説が濃厚なようです。
また、島には豚の天敵となる動物が存在しないため、繁殖しやすい環境にもなっているようです。
豚がビーチに適さない理由とは
観光客からエサをもらい、自由気ままに海水浴や日光浴を満喫しているようにもみえる豚たちですが、そもそも暑いビーチは、野生の豚の生息地に適してはいません。
本来、野生の豚は山や森に生息し、主にどんぐりや植物の球根などを食べ、仲間たちとグループを作って暮らしています。
豚がビーチで暮らすことにより生じる問題点とは、一体どのようなものなのでしょうか。
1. 豚は体温調節ができない
私たち人間とは違い、豚は体温を調節することができません。
豚の持つ汗腺は非常に少ないため、野生の豚は泥の中を転がりながら体を冷やしたり、寄生虫を落とすなどをして体温をコントロールしています。
しかし、ビーチには泥がないため、海で泳ぐことで体温を調節するしかないのです。
また、身体の色が白い豚ほど、紫外線が脅威的な存在になります。
強い日ざしによる日焼けは、ほてりや火傷、みずぶくれなどといったダメージを皮膚に与え、がん細胞の発生につながることも示唆されています。
2.島には淡水が少ない
豚が生きていくためには、エサに加えて、真水が必要です。
現在、豚の生息するビッグ・メジャー・ケイには、3つの淡水泉がありますが、地球温暖化で島の気温が上昇したことにより、泉が枯渇してしまったことがありました。
その際、水不足により、数頭の豚が死んでしまったようです。
また、無人島であるがゆえ、日没とともに観光客は姿を消すため、夜中に豚の世話をしてくれる人はいません。
人間同様、豚も脱水症状にならないためには、水分補給が必要不可欠なのです。
3. 観光客が与えるとんでもないエサの中身と豚への虐待
2018年、島で数頭の豚の死体が見つかりました。
詳しい死因については不明とされていますが、現場を訪れた獣医師が確認したところ、豚の胃の中から大量の砂が見つかったのです。
無人島でもあるビック・メジャー・ケイには、もともと豚の食糧となるものが自生しておらず、主に観光客の与える食べ物が豚のエサになっています。
エサは、リンゴやニンジンなどの野菜が多いようですが、中にはソーセージなどの加工食品やジャンクフード、さらには豚肉などが含まれている場合もあるとか。
また、近年では観光客にアルコール飲料を与えられた豚が死亡してしまったり、豚に乗るなどの虐待も報告され、問題になっているようです。
人間の世話なしでは暮らせなくなっている
本来、豚はとても賢く、自然の中で生活している動物ですが、エグズーマ諸島に生息している豚たちは、エサのほとんどを観光客に頼って生活しています。
観光船が近づいてくると、一斉にエサを求めて泳ぎ出す豚たちは、とても人間に慣れています。
しかし、淡水泉の枯渇により、常に真水が不足している環境下では、豚は安心してのびのびと暮らしてはいけません。
ビッグ・メジャー・ケイは、世界中から毎日多くの観光客が訪れる人気スポットとなっていますが、灼熱のビーチや観光公害など、豚の命を脅かしかねない過酷な環境でもあるのです。
持続可能な野生動物観光とは
珍しい動物を間近で観察することができる「野生動物観光」は、世界中の観光の2~4割を占めるといわれ、たいへん人気です。
野生の動物が観光の対象になっているとはいえ、旅行会社や地方自治体、ツアーオペレーターなど、たくさんの人々が関わり、動物を利用することで大金を稼いでいる現実があります。
バハマの「ピッグビーチ」も、夢の目的地として宣伝され、今後数年間でさらに数千人の観光客が訪れることが見込まれているようです。
一方で、マナーの悪い観光客によるビーチの環境破壊や豚への虐待なども懸念されています。
ピックビーチだけではなく、野生動物観光の際にはむやみに近づきすぎないなど、持続可能で倫理的な動物や自然との関わりが必要なのではないでしょうか。
まとめ
バハマのエグズーマ諸島周辺をを優雅に泳ぎ周り、ピッグビーチで観光客とふれあう野生の豚たち。
それは一見美しく、ほほえましいと思われがちな光景です。
しかし、観光客による過度なエサやりや虐待、自然環境破壊など、その背後にはさまざまな問題が見え隠れしています。
動物が、それぞれに適した生息地で自由に動き回れる場所を提供すること、それこそが本当の動物福祉といえるのではないでしょうか。
動物を搾取しないヴィーガンの皆さんは、ピックビーチの真実を知った上で、ピックビーチへの観光に行くかどうか、一度よく考えてみてください。
★ハッピーキヌアヴィーガンメディアのこちらの記事も、ぜひご参考になさってください。