地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)やメタンガスの排出は、畜産業によるものも大きく、特に牛から排出されるゲップ(メタンガス)は、強力な温暖化効果があるだけに深刻な問題となっています。
そのため、畜産業による地球温暖化への影響を減らすためには、肉類全部を控えるのが一番ですが、まずは牛肉の消費を抑え、畜産代替品(大豆ミートなどの植物性で作られる畜産類似食品)にする事がすすめられます。
そこで今回は、畜産業が地球温暖化に与える影響をいくつかの資料や論文を基に徹底解説。
ヴィーガンは地球温暖化による気候変動の防止に貢献できること、また畜産業が影響を与えている地球温暖化以外の環境問題についてもご紹介します。
畜産業が地球温暖化に与える影響
現在、世界中の多くの人々が気候変動の影響を受け、苦しい境遇に置かれています。
2030年を達成期限とするSDGs(持続可能な開発目標)の1つに、「気候変動に具体的な対策を」があり、環境問題を緩和するという目標を掲げていますが、ヴィーガンであることは、この目標達成へ貢献することが可能と考えられます。
※地球温暖化は、気温を上昇させるのみでなく、地球全体の気候を大きく変える「気候変動」を引き起こします。
ヴィーガンになることで貢献できる「SDGs」に関する記事も参考にしてください。
今さら聞けない「SDGs」とは|ヴィーガン必見のエシカルなトレンドを解説
それでは、何故ヴィーガンが環境問題を緩和することに貢献できるのか、「畜産業と地球温暖化による気候変動」との関係から、そのことが分かる記事を以下にご紹介します。
ヴィーガンになり気候変動に立ち向かおう!
アメリカのアニマルライツ(動物愛護・動物擁護)団体、 PETA「動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of Animals)」のサイトから、「ヴィーガンになり気候変動に立ち向かう」事に関する記事があるので、要約してご紹介します。
気候変動は人類最大の課題であり、世界最大の環境脅威と呼ばれています。
国連(U.N.)の報告書「Climate Change 2014」によると、気候変動は、世界のあらゆる大陸に影響を及ぼしており、農業、人間の健康、生態系、水の供給、さらには人々の生活にまで影響を与えています。
多くの環境問題への意識の高い人々は、燃費の良い車を運転したり、省エネ電球を使用したりすることで気候変動に対抗しようとしていますが、これらの対策では十分ではありません。
環境保護を真剣に考えるなら、肉、卵、乳製品を食べるのをやめることが最も重要なことなのです。
畜産業が気候変動に与える影響
大量の穀物と水を家畜に与えて食肉にするためには、加工や運搬、貯蔵の過程が必要となり、それに伴う大きなエネルギーも必要とします。
また、温室効果ガスを吸収する森林は、牧草地を供給したり、家畜のための作物を育てたりするために伐採されています。
さらに、動物と、動物が生産するすべての糞尿は、さらに多くの温室効果ガスを大気中に放出しています。
温室効果ガス排出量
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二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素はすべて強力な温室効果ガスであり、それらを合わせて気候変動の大部分を引き起こしています。
【二酸化炭素】
化石燃料(石油やガソリンなど)を燃やすと二酸化炭素が放出されます。
動物性タンパク質1カロリーを生産するのに必要な化石燃料の量は、穀物タンパク質1カロリーを生産するのに必要な化石燃料の量の約11倍となり、かなり多くの二酸化炭素が排出されます。
研究者たちは、「動物性のタンパク質よりも植物性のタンパク質を生産する方が『気候的に効率的』である」と認めています。
Chatham House, an international affairs think tank(国際問題のシンクタンクであるチャタムハウス)は、気候変動に対抗するために肉に炭素税を課すことを呼びかけています。
もちろん、動物性の食品でなく、ヴィーガンとなることが、二酸化炭素排出量を減らすための最良の方法です。
シカゴ大学の研究では、「従来の車からハイブリッド車に乗り換えるよりも、ヴィーガンになる方がより効果的に二酸化炭素排出量を減らすことができる」という結果が出ています。
【メタン】
アメリカの工場型畜産では、毎年何十億頭もの動物が詰め込まれ、膨大な量のメタンを発生させています。
牛・羊・ヤギなどの反芻動物が餌を消化している間にメタンガスを発生させ、また、これらの農場にいる豚、牛、その他の動物が排泄する糞尿で満たされた数エーカーの掃き溜めからもメタンガスが排出されます。
米国環境保護庁によると、畜産業は世界的にメタン排出の最大の原因であり、メタンは二酸化炭素の25倍以上もの熱を大気中に閉じ込めているとされます。
マーサー大学の研究者、ヴァシル・スタネスキュ氏によると、「オーガニック」な方法で飼育された動物は、工場で飼育された動物よりもさらに多くのメタンを排出していると述べています。
いわゆる「放し飼い」や「放牧」の動物は、温室効果ガスの排出量へ著しく悪い影響があると考えています。
【亜酸化窒素】
亜酸化窒素は、二酸化炭素の約300倍の温室効果があります。
国連によると、食肉、卵、乳製品産業は世界の亜酸化窒素排出量の65%を占めています。
他の専門家の意見
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国連は、気候変動の最悪の影響に立ち向かうためには、世界的に植物性食品へのシフトが不可欠であると考えています。
世界的に見ても、畜産業は世界中の交通システムを合わせた数よりも多くの温室効果ガスを排出しています。
オックスフォード大学の研究では、肉食者はベジタリアンの約2倍、ヴィーガンの約2.5倍の温室効果ガスを1日に排出していることが明らかになっています。
研究者らは、お肉を1日3.5オンス(約99g)以上食べる人の食生活は、1日あたり15.8ポンド(約7㎏)の二酸化炭素相当量(CO2e)を排出していることを発見しました。
また、肉食者の食事による温室効果ガスの排出量は、ベジタリアンよりも50~54%高く、ヴィーガンよりも99~102%高いことが示されました。
全体として、動物性食品の生産は、ヴィーガンの生産よりも有意に大きな温室効果ガスの排出を引き起こすと結論付けています。
世界中の他の多くの科学者も同じ結論に達しており、カリフォルニア州のロマ・リンダ大学の研究者は、ヴィーガンは肉食者よりも温室効果ガスの発生量が41.7%少なく、二酸化炭素排出量が最も小さいことを発見しました。
スウェーデンのチャルマーズ工科大学の科学者たちが、気候変動に対抗する方法を計算したところ、輸送やエネルギー使用による温室効果ガスの排出量を削減するだけでは、気候変動を抑制するには十分ではないことがわかりました。
この研究の主任科学者であるフレドリック・ヘデヌス博士は、「肉や乳製品の消費量を減らすことが、農業による気候汚染を安全なレベルまで下げるためのカギとなる 」と述べています。
同様に、イギリスの海外開発研究所のイルミ・グラノフ氏は、石炭や自動車のことを問題とするよりも、「気候変動に対処するための最も早い方法は、人々が食べる肉の量を劇的に減らすことだ」と政府関係者に促しています。
国連は、食用動物を飼育することは、「地域的なものから地球規模のものまで、あらゆる規模で、最も深刻な環境問題に貢献している上位2~3位の1つである 」としています。
気候変動に歯止めをかけるために、私たち個人ができる最も強力なステップは、肉、卵、乳製品を食べるのをやめることなのです。
(出典:PETA「Fight Climate Change by Going Vegan」)
一見関係ないように感じた方も多い、「ヴィーガンと地球温暖化による気候変動の関係」ですが、畜産業による地球温暖化を考えた時、お肉や卵、乳製品の摂取をやめることは大変意義のあることだと言えるでしょう。
実際、これらの環境問題への関心から、ヴィーガンを実践している人たちも増えていますが、今後さらに増えていくことに期待したいですね。
急にヴィーガンになるのは難しいですが、週に1回だけ、月曜日はお肉を食べないようにするのはいかがでしょうか?気軽に実践できる「ミートフリーマンデー」の記事も参考にしてくださいね。
ミートフリーマンデーとは?気軽にヴィーガン・ベジタリアンを始めてみよう
お肉をプラントベースに置き換える際に役立つレシピも参考にしてください。
お肉を植物性食品に置き換えよう!ストレスなく痩せられるプラントベースレシピ9選
続いて、家畜による気候変動に加え、「飼料生産」との関係も述べられている論文もご紹介します。
家畜の飼料生産と気候変動
イギリスのOxford University Press に掲載された論文では、家畜による気候変動に加え、飼料生産との関係も述べられていますので、要約してご紹介します。
国連によると、世界の人口は過去12年間で約10億人増加し、2017年には約76億人に達しました。
この伸びは10年前(年率1.24%対1.10%)に比べて鈍化していますが、毎年平均8300万人の増加で、世界人口は2030年には約86億人、2050年には約98億人に達すると予測されています。
途上国における人口増加、都市化、所得の増加が、畜産物の需要増加の主な推進要因となっています(国連/2017年)。
畜産業は大量の天然資源を必要とし、人為的温室効果ガス総排出量の約14.5%を占めています。
増え続ける世界人口のために十分な食糧供給を確保しつつ、食糧生産による環境負荷を抑えるためには、この分野の排出量削減を目的とした緩和戦略が必要とされます。
家畜の気候変動への影響
畜産業から発生する温室効果ガスの中で最も問題なものは、メタンと亜酸化窒素です。
メタンは、主に腸内発酵と糞尿貯蔵によって発生し、地球温暖化への影響が二酸化炭素の28倍にもなるガスです。
糞尿貯蔵や有機・無機肥料の使用から発生する亜酸化窒素は、二酸化炭素の265倍の地球温暖化効果を持つ分子とされます。
家畜の飼料生産による気候変動への影響
腸内発酵と糞尿貯蔵から生じる温室効果ガスに加えて、飼料生産とそれに関連する土壌中の二酸化炭素と亜酸化窒素の排出も畜産業の重要な問題点となります。
土壌の二酸化炭素排出は、土壌の炭素動態(例えば、植物残渣の分解、土壌有機物の無機化、土地利用の変化など)、合成肥料や殺虫剤の製造、農場内の農業運営における化石燃料の使用に起因するものです。
亜酸化窒素は、有機質肥料や無機質肥料を土壌に施用した際に排出されます。
畜産業全体で占める亜酸化窒素の排出の割合は以下の通りです。
- 飼料生産と加工・・・二酸化炭素換算で 3.2 ギガトン(約45%)
- 腸内発酵・・・約2.8 ギガトン(全体の約39%)
- 糞尿貯蔵・・・約0.71 ギガトン(全体の約10%)
- 動物製品の加工と輸送・・・0.42ギガトン(全体の約6%)
飼料生産には、①土地利用の変化②肥料・農薬の製造・使用③糞尿の排泄・施用④農作業⑤飼料加工⑥飼料輸送に起因する温室効果ガスの排出が含まれます。
全世界で収穫されたバイオマスのほぼ60%は、飼料や敷料として家畜のサブシステムに入ります。
飼料生産からの温室効果ガス排出量は、卵、鶏肉、豚肉からの排出量の60~80%、牛乳、牛肉部門の35~45%を占めています。
(飼料生産からの排出量は畜産部門の約45%を占めており、飼料作物の肥料としての糞尿の施用や牧草地への糞尿の堆積は、これらの排出量の約半分を占める相当量の亜酸化窒素排出を発生させる)。
家畜の飼料生産には、農業用土壌への大量の窒素施用が必要となることが多いですが、適切な糞尿管理を行うことで、製造肥料の必要性を減らすことが可能です。
農業全般、特に畜産業は、メタンや亜酸化窒素の排出を通じて地球温暖化に寄与しています。
今後の人口増加に対応するためには、家畜の生産性を向上させ、生産物の単位当たりの温室効果ガス排出原単位を減少させる必要があります。
(Oxford University Press「Livestock and climate change: impact of livestock on climate and mitigation strategies 」)
家畜を育てるために必要な飼料生産による二酸化炭素と亜酸化窒素の排出も、気候変動への大きな影響を与えているのが分かります。
ヴィーガンとしては、畜産業そのものが無くなることが望ましいかもしれませんが、現実的には、適切な管理を行い、温室効果ガス排出原単位を減らすことが不可欠となります。
畜産業が環境に与えている問題は、地球温暖化だけではありません。
それでは、他にどのような環境問題を引き起こしているのか、次にご紹介します。
畜産業が影響するその他の環境問題
水資源│ウォーターフットプリント
ウォーターフットプリントとは、商品・製品の生産から消費、そして廃棄の過程で使用された水の総量を測定する指標の事です。
また、水消費量だけでなく、水消費地についても分析し、環境への影響削減や貴重な水資源の利用へと繋げることも含まれます。
Water Footprint Networkによる「農作物と動物製品のウォーターフットプリント:比較」をご紹介します。
畜産物の生産と消費の増加が予測されていることから、世界の淡水資源にさらなる圧力がかかる可能性が高いです。
ウォーターフットプリントの大きさや特徴は、動物の種類や生産システムによって異なります。
- 肉牛・・・15,400 ㎥ /トン
- 羊・・・10, 400㎥ /トン
- 豚・・・6,000 ㎥ /トン
- 山羊・・・5 ,500 ㎥ /トン
- 鶏・・・4,300 ㎥ /トン
※世界平均
以上のように、肉牛のウォーターフットプリントは他の動物よりもはるかに大きくなります。
また、鶏卵の世界平均ウォーターフットプリントは3,300 ㎥ /トンであり、牛乳のウォーターフットプリントは1,000 ㎥ /トンです。
製品のトン当たりのウォーターフットプリントは、一般的に「畜産物」の方が「作物」よりも大きくなります。
また、カロリーあたりのウォーターフットプリントを見ても同様です。
牛肉のカロリーあたりの平均的なウォーターフットプリントは、穀類やでんぷん質の根菜類に比べて20倍も大きくなります。
たんぱく質に必要な水の量を見てみると、牛乳、卵、鶏肉のたんぱく質1gあたりのウォーターフットプリントは、豆類の約1.5倍であることがわかっています。
牛肉の場合は、たんぱく質1gあたりのウォーターフットプリントが豆類の約6倍となっています。
脂肪の場合、バターは脂肪1グラムあたりのウォーターフットプリントが比較的小さく、油糧作物の場合よりもさらに低くなります。
しかし、他のすべての動物性食品は、油糧作物と比較して、脂肪1gあたりのウォーターフットプリントが大きくなります。
淡水資源の観点からは、畜産物よりも農作物を通じてカロリー、たんぱく質、脂肪を得る方が効率的です。
(出典:Water Footprint Network「Water footprint of crop and animal products: a comparison」)
動物由来の食品を摂取しないヴィーガンは、動物性たんぱく質の代わりに、良質な植物性たんぱく質を含む食品を上手に利用しています。
詳しくは、「良質な植物性のたんぱく質を多く含む食品」・「たんぱく質が多い野菜」の記事を参考にしてください。
また、上記で述べられているように、牛肉のたんぱく質1gあたりのウォーターフットプリントは、豆類の約6倍となっています。
そのため、低カロリー・低脂肪でありながら、高たんぱくである「大豆ミート」は、バランスよくお料理に活用することで、優れた代替肉となりますので、試されてはいかがでしょうか?
「大豆ミート」はヴィーガンのお料理の幅を広げるのに役立ちますので、以下の記事も参考にしてくださいね。
- これで激ウマ!大豆ミートトッピングでさらに美味しく化けるメニュー7選
- ヴィーガン必見!大豆ミート・ソイミートレシピ7選|簡単ヘルシーでダイエットにも最適◎
- 【動物性不使用】ヴィーガン料理に必須!おすすめ大豆ミート6選
森林破壊
WWFによると、大規模な牧畜は、事実上すべてのアマゾンの森林破壊の第一の原因であり、現在の森林破壊の80%を占めています。
牛の放牧による森林破壊だけでも、毎年3億 4,000 万トンの炭素を大気中に放出しており、これは現在の世界の温室効果ガス排出量の3.4%に相当します。
また、Greenpeaceによると、「アマゾンのほぼすべての国では、牛の放牧とその飼料に必要な大豆栽培が森林破壊の最大の原因となっている」と述べられています。
大豆の約90%は、肉や乳製品を生産するための飼料として使用されています。
世界的に見ても、牛の放牧による森林破壊は、毎年3億4000万トンの炭素を大気中に放出しており、これは世界の温室効果ガス排出量の3.4%に相当します。(上記と重なります)
そのほとんどがアマゾン地域から排出されています。
2009年、グリーンピースは「Slaughtering the Amazon」と題した画期的な3年間の調査を発表しました。
同年、ブラジルの大手食肉加工業者は、森林伐採、奴隷労働、先住民族の土地への侵略を廃止することを、家畜協定で約束しました。
この報告書とその後の約束は、アマゾンでの牛の生産をめぐるより一層の精査を促したが、家畜協定はまだ完全には実施されていません。
家畜協定が履行されていないことやその他の要因により、牛は森林や自然の生態系にとって大きな脅威であることに変わりはないと言えます。
(出典:Greenpeace「Agribusiness & Deforestation」)
ヴィーガンが避けることもある「パームオイル」も世界で最も生物多様性の高い森林の森林破壊の主要な推進力であり続けています。
詳しくは、ヴィーガンがパームオイル・パーム油を避ける理由|代替品も紹介を参考にしてください。
まとめ
畜産業が地球温暖化をはじめ、水資源や森林破壊にまで、その環境問題を拡大させている事がお分かり頂けたと思います。
畜産業の産物である、お肉や乳製品、卵を摂らないヴィーガンになることは、少し大げさに言えば「地球を救う」事にも繋がると言えるでしょう。
ただし、急にヴィーガンになり全てのお肉を控える事は難しいですから、環境問題に特に影響を与えている「牛肉」の消費を抑えることから始めてみてはいかがでしょうか。
ヴィーガン生活を少しずつ始める上で、新鮮な野菜には拘りたいところ。フレッシュな野菜は食べチョクがおすすめです。収穫後、最短24時間でお届けの食べチョクで、新鮮な野菜を家族みんなでお楽しみください。