絶滅したマンモス肉が復活?VowがDNAから作った培養マンモスミートボールとは
最近耳にすることが増えてきた「培養肉」という分野にて、オーストラリアのVOW(バウ)社が信じられないニュースを発表しました。なんとすでに絶滅しているマンモスの肉を使った、ミートボールができたというのです。これは一体どういうことなのでしょうか。
なんとすでに絶滅しているマンモスの肉を使った、ミートボールができたというのです。
これは一体どういうことなのでしょうか。
目次
マンモスのミートボールができたって本当!?
マンモスと聞くと映画の中の世界をイメージしますよね。
約10,000年前から4,000年前にかけて絶滅したといわれる、ゾウのような生き物。
そんな絶滅している生き物を使った、ミートボールができたとはどんなニュースなのでしょうか。
Vow社の発表したマンモスミートボール
オーストラリアに拠点をおくVow(バウ)社は、培養肉の科学を使って、すでに絶滅しているマンモスの肉を丸めて作ったミートボールを発表しました。
このニュースは、今後の「培養肉」業界にとって大きな一歩だと話題をあつめています。
同社はオーストラリアのクイーンズランド大学のラボと協力し、マンモスの筋肉たんぱく質を作り上げました。
マンモスのミオグロビンと呼ばれる細胞のDNAを取り出し、一部の足りない要素はゾウのDNAを使いながら、この筋肉たんぱく質を作ったというのです。
そんな細胞が、今度は羊の筋芽細胞幹細胞に埋め込まれ、じわじわと細胞を増やすことで、マンモスのDNAから作られた培養肉が誕生したというのです。
なんだか難しそうな気がしてしまいますが、バウ社によると「とんでもなく簡単で、早いプロセスでした。たった、2週間ほどで完成しました」と発表しています。
「培養肉」ってそもそもなんだっけ?という方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。
ミートボールを作るのにマンモスを使った理由とは?
ミートボールの材料がマンモス肉となった理由は何なのでしょうか。
バウ社によると「マンモスを選んだのは、絶滅してしまった生き物のシンボルであることと、さらには気候変動の大きなシンボルだから」とあります。
氷河期に苦しみ絶滅していった動物を、化学を使ってよみがえらせることに成功しました。
単純に面白い科学だと話題になるだけでなく、今の私たちの置かれている気候変動の状況への警鐘となるミートボールです。
マンモスのミートボールは食べられるの?
科学の力を使って生まれたマンモスのミートボール。面白いアイディアではありますが、果たして食べられるのでしょうか?
「マンモスのミートボールは何千年も前から食べられていない肉です。
だからこそ、私たちの体がどのような反応をするのか分かりません。
でも、もしもまた培養に挑戦するのであれば、私たちが食べられるものを作りたいですね」
このような話を聞くと、培養肉とはちょっと怖いな…と感じる人もいるかもしれません。
とはいえ、これはまだ実験段階だからというだけのことか。どんなものでも、最初は気味が悪いものです。
でも、これから先培養肉業界が発展していくことによって、環境にもやさしく、エシカルでもある培養肉は普及していくものとみられています。
珍しい生き物からの培養肉に特化するVow社
鶏肉や豚肉、牛肉から培養肉を作るラボは急速に増えています。
しかし、今回マンモスのミートボールを作ったバウ社は、「珍しい生き物から、新しい肉」を作ることに特化している、面白い企業です。
「珍しい生き物」とは、たとえばアルパカ、バッファロー、ワニ、カンガルー、クジャクなど。
すでに50種類以上の生き物で培養肉を作りだす挑戦していると発表しています。
また、動物だけでなく、さまざまな種類の魚でも培養肉の可能性を探っているとのことです。
そんなバウ社が「最初の培養肉」として一般販売しようとしているのは、英語ではJapanese quail、日本発祥のウズラの培養肉です。
これは、今年にもシンガポールにて発売される見込みです。すでに試食イベントは開催され、高評価を得ているようです。
メディアの中で耳にする「培養肉」が一般販売されるようになってきているとは、ちょっとびっくりですね。
「私たちは肉に対する考え方を変えないといけない」
バウ社のCEOであるGeorge Peppou(ジョージ・ペップー)氏は
「私たちは肉に対する考え方を変えないといけない。代替肉を開発する大きな目的とは、世界中に広がる肉を食べる人たちが、従来の畜産からくる肉ではなく、ラボで作られる肉を食べられるように切り替えることです」
と述べています。
「それを実するためには、新しい肉を作ることだと信じています。
育てやすく、美味しく、栄養価の高い細胞を見つけて、それらを組み合わせることで、とても美味しい肉を作ろうとしています」。
つまり、単純に「〇〇からできた培養肉」ではないということです。
いろいろな生き物から取り出した細胞を混ぜ合わせ、効率や美味しさを追求した「新しい肉」を作ろうとしているのです。
従来の畜産から培養肉に切り替えるべき理由とは?
今まで私たちが続けてきた畜産は、地球環境に大きな悪影響をおよぼしています。
多くの研究結果によって、気候変動に歯止めを効かせるためには、肉の消費量を大幅に減らす必要があるというデータが取れています。
それに対して、この新しい科学である「培養肉」は、従来の肉の生産と比べて、必要な土地や水が少なく、メタンガスを発生しません。
バウ社のように再生可能エネルギーを使ってラボを稼働させることで、地球環境への負荷を限りなく減らすことができてしまいます。
この新しい生産方法を推進することで、肉を食べ続けたいという人間の気持ちと、地球にやさしい暮らしをすべきであるという危機的な状況を、うまく共存することができるのです。
ウズラの培養肉が年内にもシンガポールで発売される予定ですが、そこからどう広がっていくのでしょうか。
ちなみに、アメリカではついに政府が培養肉の安全性を認めたばかり。そんなニュースは、こちらの記事でご紹介しています。
まとめ:気候変動に歯止めを効かせたい!そんな思いの詰まったマンモスミートボール
約4,000年前には絶滅したといわれているマンモス。
そんなマンモスの肉を使ったミートボールが出来上がったと、アムステルダムにある科学博物館NEMOにて展示されました。
すでに絶滅した生き物の肉が再現されるというのは、私たち庶民にはちょっと信じられないニュースです。
しかし、最近耳にすることが増えてきた「培養肉」の科学を使い、実際にマンモスのDNAから必要な要素を取り出し、育てることで、こんなことが可能になっているというのです。
まだ始まったばかりの培養肉業界ですが、一部の国ではすでに培養肉の販売が始まっています。
「なんだかちょっと分からなくて怖い…」というフェーズは、少しずつ抜け出しつつあるのかもしれません。
もう少ししたら、私たちの暮らしにおいても「培養肉」を食べるのが当たり前になるのでしょうか。