【アメリカ】ニューヨーク州でペットショップでの犬、猫、ウサギの販売が禁止する法律が制定
ニューヨーク州でペットショップでの犬、猫、ウサギの販売を禁止する新しい法律が制定されました。今後アメリカのペット産業はどのように変化していくのでしょうか。注目が集まります。
ついに、ニューヨーク州でペットショップでの犬、猫、ウサギの販売を禁止する新しい法律が制定されました。
ペットショップでは一般的に、ブリーダーから直接購入するケースの他、ペットオークションで競り落とした子犬や子猫を販売しています。
特にペットオークションに出品される動物たちは、パピーミルをはじめとする劣悪な繁殖工場から出品されることが多くあります。
2024年に施行される予定のこの法律は、ペットショップでの販売を禁止することによって「パピーミル(子犬繁殖工場)」と呼ばれる、商業的な繁殖事業を取り締まることを目的としています。
この法案の制定を推進してきたマイケル・ジアナリス上院議員は、声明で以下のように述べました。
「これは非常に大きな問題なのです。ニューヨーク州はこのようなパピーミル業者にとっての大きなマーケットであり、ニューヨークの市場から業者が利益を得ている傾向があります。そのため、私たちは小売レベルでの需要を断ち切ろうとしています。さらに、これらの事業者は命のある子犬をまるで商品のように扱っているのです。」
新しい法案は販売禁止の一方で、保護犬や保護猫を引き取ることを奨励しています。
また、ペットショップ業者と動物愛護団体、両者の今後の協力を促しました。
新法は2024年に施行され、ニューヨーク州にある約80店舗のすべてのペットショップが影響を受けることになります。
この法律ではあくまでもペットショップでの販売を禁止するもので、個人のブリーダーによる繁殖は規制対象ではありません。
アメリカで最も人口が多い州カルフォルニアでは、2017年に保護動物以外の販売を禁止しました。
ニューヨークでの今回の法律の制定は、同様の法律を施行したカリフォルニアに続くものとなりました。
パピーミル(子犬繁殖工場)の取り締まりの必要性
パピーミルは長い間、論争の的になってきた産業です。
それらは、極めて不潔で窮屈な環境で犬を飼育する繁殖犬舎です。
PETAによると、これらの業者の活動拠点は主に中西部にありますが、アメリカ全土に存在していると指摘しています。
また、海外から子犬を輸入し、販売している業者も確認されています。
工場で生まれた子犬は、管理の行き届いていない環境での乱繁殖により近親交配などが生じ、先天性疾患などの病気を抱えていたり、不健康であることが多くあります。
また、育った飼育環境が原因となり、社会性を身につけるのに苦労する場合もあります。
そのため、ペットショップで購入されてもすぐに家族である「飼い主」に捨てられることが多いのが現状です。
このような問題の元となるパピーミルをなくしていくため、ペットを購入する飼い主の意識を変えるため、法律として社会がペットショップでの販売を禁止することは有効な手段となるでしょう。
覆面調査で明らかとなったペットショップの残酷さ
2019年にバージニア州にあるペットショップで行われた動物愛護協会の調査では、ウサギが瀕死の状態で、医療処置が施されていないことが判明しました。
調査のため2カ月間そのペットショップで働いた覆面調査員は、店舗がウサギの獣医学的治療を義務付ける方針をとっていないようであることを気付きました。
また、ある従業員は、ウサギが病気になったときは「そのまま死なせている」と言ったことが報告されています。
他にも、ペットショップで販売されているウサギはブリーダーからの購入したのではなく、無許可のウサギ繁殖工場から供給されていたことも判明しました。
この供給元となる工場では、汚く混雑した環境で、約200匹のウサギが飼育されていたことも明らかになりました。
ペットショップは、多くの場合、病気の動物に適切な治療をせずに放置するなど、残酷な行為が行われていることが、覆面調査などの多くの調査によって報告されています。
ペットショップに限らず、動物を営利目的で使用することは、動物の福祉に悪影響を及ぼしているのです。
まとめ
パピーミルの活動を制限していくには、収入源となっているペットショップでの販売禁止が有効な手段です。
そこで制定された今回の法律ですが、法律の制定に関わらず、私たちは常に家族として動物を迎えるなら、その子犬や子猫がどのような過程を辿ってきたのかを真剣に考える必要があります。
ニューヨークでの法律の制定、施行が今後ペット産業にどのような影響を及ぼしていくのか注目が高まります。
日本でも数多くのペットショップが存在し、ペット産業はコロナ禍によりさらに勢いがついています。
しかしその裏側で、劣悪な環境で商品のように扱われる動物たちや人間の身勝手な都合で捨てられる命があります。
新しい家族との出会いを待っている保護犬や保護猫たちが多くいる中で、あえてペットショップを選ぶ理由はあるのでしょうか。
今回のニューヨークの事例をきっかけに、日本国内や世界中で本格的な議論が活発になるかもしれません。
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参考記事はこちら
Gianaris, Rosenthal: Law to Stop Puppy Mill Pipeline Approved by Committees