「ポン・デ・リプレイ」「オンリー・ガール」「ダイヤモンズ」などの世界的なヒット曲を数多くの持つリアーナさん(以下、リアーナ)は、過去に9つものグラミー賞を受賞。
これまでのアルバムとシングルを合わせた売り上げは2億5000万枚以上と言われ、世界で最も有名なポップシンガーの一人として知られています。
そのリアーナは、2017年9月に歌手から起業家に転向。クルエルティーフリーの化粧品ブランド「フェンティ ビューティー」を立ち上げ、化粧品業界を一夜にして変革しました。
しかし、それだけにとどまらず、ファッションやスキンケア、さらにはマタニティスタイルも大改革。気候変動に取り組む団体への寄付などの慈善活動、そして「美容の分野でも持続可能な解決策を」と環境の負担の少ない取り組みも精力的に行っています。
今回は、音楽界だけでなく社会にも大きな影響力を及ぼしているリアーナの現在の活動や、そこに込められた想いをご紹介します。
1. リアーナはより多くの人の肌の色に合わせた化粧品を展開

PRO FILT’R SOFT MATTE LONGWEAR FOUNDATION
以前のアメリカの美容業界では、肌の色の標準は「白色」で、その他の色にはあまり重きが置かれていませんでした。ファンデーションとコンシーラーの色の種類は、明るい肌の色は複数あった一方で、暗い肌の色はほんのわずかしかなかったのです。
そこに、リアーナの化粧品ブランド「フェンティ ビューティー」が登場します。フェンティ ビューティーは、リアーナの本名であるロビン・リアーナ・フェンティにちなんで付けらました。
フェンティは現状を変えるため、暗い色から明るい色まで均等に段階を分けた画期的な40色展開のプロフィルターファンデーションを販売。フェンティの売り上げは、1カ月で1億ドル以上に上りました。現在、フェンティの価値はおよそ30億ドルと言われています。
今でもベストセラーであるプロフィルターファンデーションは、白皮症(出生時から皮膚、毛髪、眼の色が薄く、全身の皮膚が白色調である病)の人に適した白い色から最も暗い色まで、さらに幅広い50の色があります。フェンティは他の主流なブランドに対してもファンデーションの色を増やすように呼び掛けた結果、今ではほとんどのファンデーションが30色以上あります。(アメリカの場合)
フェンティはファンデーションの色を増やすことで、今まで自分に合う色がなかった多くの人がいくつかの選択肢を持てるようにしたのです。
2. リアーナは人種の多様性を重視
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上のInstagramは、ソマリア系アメリカ人のモデル、ハリマ・アデン。
ファンデーションの色が増えることで、多様な人が自分の肌に合った色を選べるようになったことは、とても大きな改革でした。
そしてさらに変革は続きます。フェンティの発売のわずか1年前、広告のモデルの80%が白い肌の色で痩せていました。
しかし、フェンティ初のキャンペーンビデオでは、最初にイギリス系ジャマイカ人のモデル、レオミー・アンダーソンが画面に登場。後ろには、丸刈りにした頭で笑顔が印象的なスリック・ウッズが続きます。そして、アメリカ・ミネソタ州のミスコンテストで始めてヒジャーブ(イスラム教徒の女性が顔を隠すために用いるスカーフ)を身に付けたモデルとして知られるソマリア系アメリカ人のハリマ・アデンがいました。
リアーナはさまざまな人種や文化的背景を持つモデルに起用し、多様性を認める尊さを自身のブランドで訴えたのです。
3. リアーナのスキンケアやメイクはすべての性別が利用可能
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スキンケアやメイクは、歴史的に女性のものとされてきましたが、美しさを求める心に性別に関わりありません。その流れは、ジェンダーニュートラル(性別不問)なブランドのWe Are FluideやJecca Blac、NOTOBotanicsが一般的になってきたことからも分かります。
マッキンゼーの調査によると、1990年代中頃から2010年代初めに生まれたZ世代の消費者のほぼ半数が、商品を選ぶ際「女性」または「男性」に特化しないブランドであることを重視すると応えています。
リアーナが手掛けるのは、「フェンティ ビューティー」と、2020年に立ち上げたヴィーガンスキンケアブランド「フェンティ スキン」。そのモデルやインフルエンサーの性別はさまざまです。
VESCOの調査によると、フェンティ ビューティーは「インクルーシヴ」※なブランドで、Z世代に最も愛されているという結果でした。では、2番目は何だと思いますか?それは、リアーナのランジェリーブランド「サヴェージXフェンティ」です。
※インクルーシヴとは、人種や性別などにかかわらず、何者も排除しないこと、あらゆる人を受け入れようとすること。
4. リアーナがスポットライトを当てるのは「すべての人」
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サヴェージ X フェンティは、すべての性別の人に下着を提供するだけでなく、障がい者もブランドの顔として起用しています。そのため、ファッションショーや撮影では、手足の不自由な人や車いすの人がモデルとして活躍しています。
先天的に四肢に障害のあるシャホリー・アイヤーズは、サヴェージ X フェンティの2021年のファッションショーでの経験を、これまで参加した中で最も「インクルーシヴなイベントだった」とフォーブスに語りました。「さまざまな人たちが一緒に舞台セットにいました。ほぼすべての体型、人種、性別、有名人、皆が混ざり合っていました」「誰かが特別扱いされることはなく、私たちは皆平等でした」と彼女は振り返っています。
5. リアーナは妊娠中のファッションも自分スタイル
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マタニティウェアと聞くとどのようなスタイルが思い浮かびますか?おなか周りがゆったりしたワンピースや裾が広がったトップス、ウエストに伸縮性のあるパンツなどが定番かもしれません。
でも、リアーナは違います。リアーナは妊娠を発表して以来、「妊婦中のスタイルは控えめでなくて良い」ということを、身をもって示してきました。ローライズの破れたジーンズとベリーボタン(へそピアス)にシャネルのピンクのコートを着ています。
典型的なマタニティとは違う服装をすることはリスクがありますが、一方で、力強く、大胆で、セクシーとも言えるかもしれません。ルールはないのです。リアーナはファッションと美しさで、妊娠中のスタイルの自由さを示し、多くの人に影響を与えています。
6. リアーナは美容業界で持続可能な取り組みを推進

毎年、産業界全体で約10億個のパッケージが生産されています。
そのような現状に対してフェンティ ビューティーは、詰め替え式リップスティックを発売。また、フェンティ スキンは、ボディクリームやモイスチャライザーなど、詰め替え用商品をそろえ、可能な限り不要な包装はしない方針をとっています。さらに、各商品ページには「地球に配慮した詳細」という欄があり、パッケージのどの部分がリサイクル可能であるかを説明しています。
リアーナは、持続可能な包装へのフェンティスキンの取り組みについて「完璧な人はいません」「それでも、私たちは正しいことをするためにベストを尽くし、継続することで進化し続けると信じています」と決意を話しています。
7. リアーナは財団を設立して慈善活動を継続中
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リアーナの環境への取り組みは、美容業界だけではありません。ブランドの売り上げで得た多くの資金は、気候変動の問題に充てられています。
今年2022年初めには、クララ・ライオネル財団(CLF)が18の組織に1500万ドル(約17億円)を寄付すると発表しました。この財団はリアーナが2012年に設立した非営利団体で、気候危機の影響を不均衡に受けている人たちを優先して支援しています。CLFはこれまでに、約20カ国で8000万ドルを調達し、150を超えるプロジェクトに資金を提供してきました。
彼女の慈善活動は、リアーナのブランドとも関連しています。昨年8月、サヴェージ X フェンティはCLFを支援するために、パジャマコレクションを発表しました。そして5月には、CLFと協力してLGBTQ+の組織に5つの助成金を授与しました。その中にはトランスジェンダーの人々の命を救うトランスウェルネスセンターや、カリブ海のLGBTQ+の人々を資金と福祉プログラムにより救済する、カリブ海平等プロジェクトがあります。
リアーナの活動の意義を考える
リアーナは起業家に転向して、クルエルティーフリーの化粧品ブランド「フェンティ ビューティー」や、ヴィーガンスキンケアブランド「フェンティ スキン」を立ち上げました。
ブランドを通じて発信するメッセージは、人種や性別などにとらわれることなく「あらゆる人が受け入れられる社会をつくる」こと。慈善活動でもその信念を貫いています。
リアーナは今、ラッパーのエイサップ・ロッキーとの間に第一子を妊娠中です。マタニティファッションの枠にとらわれず自分のマタニティスタイルを発信し、また、誰もが平等に扱われる世の中をつくるリアーナのセンスと力強から生まれる発想は、社会をも大きく変える力を秘めています。
リアーナがさまざまな活動を通じて投げかける「社会の在り方」をしっかり受け止め、私たち一人一人がそれについて考えるべきなのかもしれません。
参考:LIVEKINDLY “Rihanna Changed the Beauty Ideal Forever“