培養パーム油が生態系と環境を守る解決策に?新しい取り組みを徹底解説
身近なパーム油の抱えている問題とその解決策として登場した培養パーム油についてご紹介します。
パーム油というと、食品やシャンプー、化粧品などに使われているため、身近なイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし、パーム油を生産する国では、生態系や地球環境などに大きな影響を受けています。
そこで、代わりになる培養パーム油が開発されています。パーム油と環境問題、培養の方法や生産している企業などをご紹介します。
パーム油とは
パーム油は、アブラヤシの果実を搾って作られる油です。原産国はインドネシアとマレーシアで、2国合わせた生産量は世界全体の80%以上を占めています。日本は両国からの輸入に頼っている状況で、その量は年々増えています。※
パーム油の主な用途は、マーガリンやショートニング、加工食品、せっけんなどです。パンやお菓子などの原材料に表示されている「植物油」や「植物油脂」には、パーム油が含まれている場合もあるため、無意識のうちに口にしているかもしれません。
※農林水産省「令和3年度「持続可能性に配慮した原材料調達」に関する認証システムの調査・分析委託事業」第2章第3部
ヤシ油との違い
パーム油の原料になるアブラヤシはヤシ科の植物なので、時々ヤシ油と間違われることがあるようです。
ヤシ油はココヤシの実から採れる油で、ココナツオイルを指し、パーム油ではありません。
パーム油が生態系と環境の破壊につながっている理由
パーム油の原料のアブラヤシを栽培する熱帯雨林では今、さまざまな問題が起きています。
そのうち2つの問題を取り上げてみましょう。
森林伐採
パーム油は、食品をはじめさまざまな用途があるため、世界の需要も高く生産量も増え続けています。
原産国のインドネシアやマレーシアでは、熱帯雨林を切り開いてアブラヤシを植えてきました。しかし、アブラヤシのプランテーションは、二酸化炭素の元になる炭素量をためておく能力が、熱帯雨林に比べて低いことが研究で明らかになっています。
アブラヤシを植林して30年経った頃には、熱帯雨林の約35%しか貯留できないと予想されているため、※二酸化炭素の量が増えて、温暖化につながると考えられています。
※国立研究開発法人国立環境研究所「東南アジアの熱帯林の炭素収支と森林伐採の影響を評価−植栽後30年のアブラヤシプランテーションの炭素貯留量は森林の約35%と予測−(お知らせ)」
野生動物への影響
アブラヤシのプランテーションは、IUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧種に指定されているオランウータンやアジアゾウ、スマトラサイなどの野生動物のすみかや食べ物を奪ってきました。
単一の植物になった森では、さまざまな種類の生物が生きることはができません。生物の多様性も失われ、正常な生態系が保たれなくなります。
【補足】RSPO認証
これらの生態系や環境の問題を受け、パーム油の生産基準が持続可能であることを保証する「RSPO認証」が、世界自然保護基金(WWF)などの関係団体により設けられています。
この認証は、①持続可能な生産が行われている農園や搾油工場と、②認証基準に沿って生産されたパーム油を使用した製品を扱うサプライチェーンを対象にしたものです。
この認証を取得した企業は、認証パーム油を原料として利用した商品に、「RSPOマーク」を使用できます。
上の画像のように、日清食品グループのカップヌードルには、RSPOマークが付いています。
パーム油についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
ヴィーガンがパームオイル・パーム油を避ける理由|代替品も紹介
では、これらの問題を根本的に解決する方法はないのでしょうか。パーム油を栽培せず培養して作る取り組みについて次に紹介します。