異常気象による畜産業への影響、畜産業に終止符を打つのは気候変動か
家畜が環境破壊の一因になっている反面、気候変動が畜産業の存続を脅かしています。今回は、家畜と環境について、一緒に考えてみませんか?
しかし、その逆に、環境が、家畜へ大きなダメージを与えていることはご存じですか?
今回は、家畜と、気候変動による環境の変化が、互いに与える影響を、事例を見ながら学びます。
そして、今後私たちは、畜産業とどう向き合っていくべきか、考えるきっかけになれば幸いです。
フランス、サレールチーズの存続に関わる問題
フランスのブランドチーズである、サレールチーズが、現在、深刻な存続問題に直面しています。
いったい、どのような問題を抱えているのでしょうか。
サレールチーズとは
サレールチーズは、フランス最古のチーズと呼ばれる、カンタルチーズと、製造法、産地もほぼ同じチーズです。
しかし、カンタルチーズとサレールチーズとは、明確な区別がなされています。
サレールチーズは、EUの「A.O.P. : 原産地保護呼称」という制度において、指定され、守られています。
そのため、厳しい条件をすべて満たした製品に、赤いアルミプレートがつけられます。
その、称号ともいえるプレートにより、確固たる安全、安心と、ブランドへの信頼を得ています。
サレール牛の生育する環境
サレールチーズが作られるオーヴェルニュ地方は、フランスの中央高地にあたる地域を指します。
休火山や山脈、湖などがある肥沃な土地には、牧草地帯が広がっています。
また、豊かな湧水地でもあります。
ミネラルウォーターのヴォルヴィックは、この土地の水を使用しています。
夏は過ごしやすく、人気のハイキングエリアです。
サレール牛を飼育する、カンタル県オーリヤックの年間の気候はどうでしょうか。
夏は涼しく、湿度も低く、快適なのが特長です。
気温が30度を超えることはめったにないとされています。
しかし、1981年から2020年までの過去30年間の気温の平均値の表を見てみると、最高気温が7月で38.0度、8月で37.7度にも達しています。
フランスの温暖化現象
しかし、ここ数年、夏の気温上昇が大きな問題となっています。
こちらは、フランス気象局のホームページ内の記事です。
フランスでは、平均気温の上昇が著しいことが書かれています。
その影響により、フランスでは、熱波の頻度が上がり、徐々に干ばつの深刻度が増しています。
サレールチーズが直面する問題は、異常気象にあった
夏はちょうど、サレールチーズを製造する期間です。
つまり、サレールチーズを製造するにあたって、
夏の気温上昇 → 一帯が乾燥する → 牧草が枯れたり、生育しなかったりする → 牛の食料がない
という問題が起こっているのです。
サレールチーズは、先述のとおり、原料となるミルクにも、確固たる条件があります。
現在抱える問題が続けば、「指定草地の牧草のみで育った牛の牛乳」という条件を、満たせません。
サレールチーズの抱える問題の根源は、異常気象にありました。
参考:AOP salers