【徹底解説】健康のために知っておきたい「遺伝子組み換え(GMO)」
ヴィーガンの食生活に欠かせない、大豆・大豆製品などは、遺伝子組み換え作物が使用されている可能性もありますし、遺伝子組み換え食品安全確認の裏には悲しい事実も存在します。そのため、ヴィーガンは知っておきたい「遺伝子組み換え」について詳しくご紹介します。問題点や注意点を知ることで、動物福祉、そして健康や環境を守ることが出来ます。
なぜ遺伝子組み換え作物(GMO)が開発されるのか?
遺伝子組み換え作物が開発される主な理由として、以下が挙げられます。
- 病気に強い遺伝子や良く育つ遺伝子を組み換え操作することで、収穫量を増やすことが可能となる。
- 除草剤に強い作物の生産可能なため、除草の手間を省ける。
- 害虫に強い作物の生産可能なため、農薬の散布など害虫除去を減らすことが可能になる。
- 健康に役立つ成分を高めた農作物の開発も可能である。
以上のような点から、遺伝子組み換えを行う事は必要とはされていますが、問題点も多くあります。
その点に関して、次にご紹介します。
遺伝子組み換えの問題点
遺伝子組み換え作物の集中栽培は、食品の安全性・環境への影響・社会経済的な問題に関して、様々な懸念を引き起こしています。
主な問題点としては、害虫抵抗性、人間の健康、環境、経済、生産性などが探られています。
現在の研究では、遺伝子組み換え食品は安全であるとされていますが、長期的な安全性や環境への影響を懸念する声もあります。
ここでは、遺伝子組み換え食品の摂取に関する主な問題事項をご紹介します。
健康面での問題
【アレルギー】
遺伝子組み換え食品は、アレルギー反応を引き起こすのではないかという懸念があります。
これは、遺伝子組み換え食品には外来の遺伝子が含まれているため、アレルギー反応を引き起こす可能性のある食品の遺伝子が含まれているのではないかと心配する人がいるためです。
1990年代半ばに行われた研究では、遺伝子組み換え大豆にブラジルナッツ由来のタンパク質を加えると、ブラジルナッツに敏感な人がアレルギー反応を起こす可能性があることがわかりました。
この事実を知った科学者たちは、すぐにこの遺伝子組み換え食品を放棄しました。
アレルギーへの懸念はもっともですが、現在市場に出回っている遺伝子組み換え食品でアレルギー反応が起きたという報告はありません。
FDAによると、遺伝子組み換え食品を開発する研究者は、食品から別の食品にアレルゲンが移らないようにテストを行っているとされます。
また、遺伝子組み換え食品は、非遺伝子組み換え食品に比べて、アレルギーを引き起こす可能性は低いという研究結果が出ています。
しかし、大豆アレルギーがある場合は、遺伝子組み換え大豆製品も、非遺伝子組み換え大豆製品もアレルギー反応を引き起こします。
【がん】
遺伝子組み換え食品により、がんの進行を助長するのではないかという懸念もあります。
がんはDNAの突然変異によって引き起こされるため、遺伝子を加えた食品を食べるとDNAに影響を与えるのではないかと心配する人がいます。
この懸念は、遺伝子組み換え食品を摂取すると、腫瘍や早期死亡のリスクが高くなるという初期のマウス実験に起因していると考えられます。
しかし、この研究は設計が不十分であったため、後のいくつかの研究で撤回されました。
現在、遺伝子組み換え作物の摂取とがんを結びつける人間の研究はありません。
米国がん協会(ACS)は、遺伝子組み換え食品の摂取をがんのリスクの増加、または減少と関連付ける証拠はないとしています。
しかし、長期的なヒトの研究は存在していないため、より長期的なヒトの研究が必要です。
環境面での問題
【除草剤】
遺伝子組み換え作物は農家にとって便利なものですが、環境面での懸念もあります。
遺伝子組み換え作物の多くは、※ラウンドアップなどの除草剤に耐性があります。そのため、農家は自分の作物に害を与える心配なくラウンドアップを使用することができます。
※ラウンドアップ(Roundup)とは、遺伝子組み換え種子の最大手であるモンサント社の除草剤のこと。
しかし、この除草剤に耐性を持つ雑草が年々増えてきました。
このため、作物の収穫に影響を与える可能性があるため、耐性のある雑草を殺すために、さらに多くのラウンドアップが作物に散布されるようになりました。
ラウンドアップとその有効成分であるグリホサートは、動物実験や試験管実験でさまざまな病気との関連性が指摘されており、議論の対象となっています。
しかし、複数の研究のレビューでは、遺伝子組み換え食品に含まれる少量のグリホサートは、人間が摂取しても安全であると結論づけられています。
遺伝子組み換え作物は、農薬の使用量を減らすことができるため、環境にも良い影響を与えるともされますが、より長期的な研究が必要とされています。
(出典:healthline「Safety and concerns」)
【交差受粉】
GM作物と非GM作物、または関連する野生種との外来交配や、GM作物と非GM作物との不慮の混合は、さまざまな問題を引き起こしています。
世界中で遺伝子組み換え作物の規制緩和が行われたのは非同期であるため、食品や飼料の取引ルートに遺伝子組み換え作物が意図せずに存在すると、深刻な貿易・経済問題を引き起こす可能性があります。
経済面での問題
遺伝子組み換え作物を市場に投入するには、費用と時間がかかります。
農業バイオ技術企業は、投資に見合うだけの製品を開発することしかできません。そしてこれらの企業にとって、特許侵害は大きな問題です。
また小規模農家にとってはGM種子の価格は高く、なかなか手が届かないことがあります。
加えてGM作物には、負債や多国籍種苗会社への依存度の増加、他の農業技術との兼ね合いなど、関連する問題が多く、投入に時間を要します。
世界の主要作物の種子販売の大部分は、少数の種子会社によってコントロールされています。
種子に対する民間企業の支配とその知的財産権の問題は、多くの農家、特に小規模農家や脆弱な農家にとって問題視されてきました。
さらに、遺伝子組み換え種子企業が裁判で特許を取得した種子を守ろうとする事は、多くの農家に経済的・社会的な困難をもたらしています。
GM作物が小規模で脆弱な農家にどの程度の付加価値をもたらすのかについては、賛否両論があります。
GM種子への依存度が高まるにつれ、種子の所有権を通じた食糧供給のコントロールや、種子源の多様性への影響が懸念され、地域全体の農業システムの回復力に影響を与える可能性があります。
遺伝子組み換え作物が世界経済に与えるリスクは大きく、世界の食糧生産は少数の種子企業に支配されており、発展途上国の先進国への依存度を高めています。
生産性での問題
遺伝子組み換え作物を正当化する理由として、世界に食糧を供給する必要があるということが、この技術の推進者によってよく言われますが、遺伝子組み換え作物と世界への食糧供給との間には直接的な関係はありません。
遺伝子組み換え作物は農家で使用されており、主に、生産の円滑化や生産量の増加など、農家にとっての直接的な運営上のメリットに基づいて販売されています。
農家は、コスト削減や生産量の増加、あるいはその両方という形でこれらの利益を実感し、その技術を利用することで利益を増やそうとしています。
遺伝子組み換え種子を生産する企業は、生産性が向上しなくても、雑草管理の簡略化などの運用上のメリットを農家に提供することができるため、種子市場でより大きなシェアを獲得することができれば、大きな成功を収めることができます。
また、21世紀初頭の時点で市場に出回っている遺伝子組み換え作物の形質は、それ自体が収量形質ではなく、生産性の向上につながるかどうかは別として、収量を保護する可能性のある形質です。
(出典:Oxford University Press 「Pros and Cons of GMO Crop Farming」)
以上のように、遺伝子組み換えを行う事で、健康面や環境面のみでなく、エシカル(倫理的)面での問題もあります。
さらに、遺伝子組み換え食品の安全確認のために、動物実験が行われているという大変悲しい事実もあります。
そのことに関して、次にご紹介します。