学校やテレビなどで、子どもたちも学ぶ機会が増えた「SDGs」。
いま、全世界を挙げて、持続可能な社会を目指しています。
将来、世の中を動かす主導権をバトンタッチしていく子どもたちへ、私たち大人は、何を教え、託していけば良いのでしょうか。
ヴィーガンの目線から、子どもたちに伝えたいことを考えてみましょう。
今回は、絵本や漫画でわかりやすく、ヴィーガンの考えを伝える作品をご紹介します。
ぜひ、お子さんと一緒に読んで、考えるきっかけにしてみてください。
なぜ子どもにもヴィーガン?親のエゴにならない?
子どもにヴィーガンを教えることは、結果的に、ヴィーガンを強制することになるのでは?
親のエゴではないか?
まだ早いのではないか?
ノンヴィーガンの方でも、ヴィーガンの方でも、そうお考えになる方は、たくさんいらっしゃるでしょう。
おっしゃるとおりです。しかし、正解とも言い切れません。
「ヴィーガンである」ということは、例えば、生まれてすぐに神の洗礼を受けるようなものや、代々から受け継ぐもの、信じるものではありません。
ヴィーガンは、思想でもなく、信仰でもありません。行動を指す言葉です。
ヴィーガン発祥の地、イギリスのThe Vegan Society(ヴィーガン協会)では、
「ヴィーガニズムとは生き方と哲学である」と、定義の中で明記しています。
つまり、ヴィーガンの方は、各々に哲学を持ち、生き方を選択した。ということです。

SDGsを学ぶ子どもたちは、「多様性」を知り、あらゆることにおいて、「自分とは違う、ひとそれぞれでいい」ということも、同時に学びます。
人種、性別、経済、教育、文化、考え方・・・。さまざまな違いがあり、それは、どんな場合においても、違いを認め、尊重すべきです。
ヴィーガンを、子どもに伝えるときに、ただ、「動物の命を犠牲にしない」ということのみを話すわけではありません。
背景にある、環境問題や生態系の話、そして、それを選択する/しないのは、自由であること。
「ヴィーガン」という定義だけではなく、SDGsのすべてを知ることに繋がります。
ヴィーガンという生き方があること。
なぜ、そのような生き方を選択することにしたのか。
どんな生活をしているのか。
自分はどう感じたか。
それを子どもたちとしっかりと話をしてみたい。
これを、エゴだと思われますか?
子どもをひとりの人として尊重するための機会になり得るのではないでしょうか?
そのために、ヴィーガンというものがどんなものか、大人にも子どもにもわかりやすい、絵本や漫画を通して、親子で一緒に考えてみませんか?
次から、ヴィーガンを伝えるために、おすすめの漫画や絵本をご紹介します。
詳しいあらすじは、あえて解説しません。
お子さんと一緒に、読んでみてくださいね。
出典:MIRAI PORT | 【子供向け】SDGsてなに?大人と子どもができること
日本ユニセフ協会(日本ユニセフ委員会) | SDGs CLUB
ヴィーガンをテーマに扱った絵本&漫画5選
1. 「世界を変えたくて僕を変えた ~花ちゃんと大地のやさしい生活~」

著者であるNatsumiさんは、一般の方です。
2005年にベジタリアンになり、現在はヴィーガンとして生活していらっしゃいます。
ベジタリアンや、ヴィーガンではない方々には、「野菜しか食べない」というようなイメージが先行し、実情が隠れてしまうことが多々ありますよね。
実際に、ベジタリアンやヴィーガンの方にも、そうでない方にも、わかりやすく、ベジタリアンやヴィーガンのリアルを伝えるために、漫画を自費出版されています。
Natsumiさんの2作目の漫画「世界を変えたくて僕を変えた」は、2016年に刊行され、2021年には4版にもなるほどの話題作です。
動物愛護活動に尽力されている、女優の杉本彩さんも、ブログで絶賛されていたというほどです。
漫画に出てくる漢字にはすべてふりがながついており、ひらがなの読めるお子さんであれば、絵とともに読めるようになっています。
主人公の男の子と、ひょんなきっかけで出会った豚を通じて、ヴィーガンの定義 をわかりやすく知ることができます。
また、それに関する、動物の尊厳や、人間のエゴ、環境や健康など、いくつもの問題にも真正面から向き合っているお話です。
ヴィーガンやベジタリアンになるきっかけは、人それぞれです。
こんなふうに、世界を見ている人がいるんだ。
それを知るだけでも、きっと大きな収穫があるでしょう。
お肉やお魚を食べる選択をしたとしても、感謝の気持ちを持って食べるようになるかもしれません。
食事は変えなくても、持ち物に変化があるかもしれません。
何も行動が変わらなくても、自分と違う選択をしている人を認知し、リスペクトを持つかもしれません。
なにかに気づき、当たり前だと思う現状を、一度立ち止まって考えてみてほしい。
それこそが、この漫画を描かれたNatsumiさんの思いなのかもしれません。
【書籍情報】
世界を変えたくて僕を変えた~花ちゃんと大地のやさしい生活~ | 著者 Natsumi / 自費出版
ご購入、情報は、こちらのリンクからどうぞ。
2. やさしいライオン

小さなお子さん誰もが知っている、「アンパンマン」でおなじみの、やなせたかしさんの絵本です。
アンパンマンを絵本でも楽しんでいるお子さんには、この絵は、親しみやすいのではないでしょうか。
胸が締め付けられる思いのするお話です。
動物も人間も、血のつながりを超えた絆があることを知ります。
しかし、人間のエゴにより、動物たちは自分の生きたい道を選ぶことを許されないことが描かれます。
生き方だけではなく、命さえも・・・。
「人間は動物よりも上の存在である」という無自覚のエゴを、優しい絵と文で伝えています。
本当に人は、動物よりも偉いのでしょうか?
動物には、生きる尊厳や、意思は認められないのでしょうか?
そんなことを深く考えさせられる1冊です。
【書籍情報】
やさしいライオン | 作・絵 やなせたかし / フレーベル館
3. しんでくれた

詩人であり、絵本作家もある、谷川俊太郎さんの詩「しんでくれた」を絵本にした1冊です。
「命をいただく」「『いただきます』という言葉は、なにかの命を犠牲になってくれているからだよ」
そんな言葉を聞いたり、お子さんに話したりしたことがある方は多いのではないでしょうか。
しかし、その言葉は本質をきちんと理解するためにはあまりにもきれいで、実感としては薄いとは感じませんか?
「命をいただく」ということは、「死んでくれた」ということです。
「死んで『くれた』」ということは、決して「私の命をあげますよ」と自ら志願しているわけではありません。
そして、人は、その命を食べ、志願もせず、誰のためにも死にません。
シンプルながらに本質を突いた「死んでくれた」という言葉が、心に刺さります。
【書籍情報】
しんでくれた | 詩 谷川俊太郎 、 絵 塚本やすし / 佼成出版社
4. 絵本 いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日

食肉解体業をされている、「坂本さん」を主人公にしたお話です。
「肉を食べる」という行為に至るまでに、どんなことがあるのか?
それを実行する人がいる。その人にも家族がいて、それぞれの思いがある。
ただ、事実を淡々と私たちに語り掛けます。
「子どもたちが、魚の身に骨があることを知らない」
そんな話を耳にしたことのある方もいらっしゃると思います。
それと同じように、スーパーなどでパックに入って売られている「牛肉」が、牧場や絵本などで見る「牛」であることを、どれだけ正しく理解しているでしょうか?
ヴィーガンの正当性を伝える話でもありません。
「いのちをいただく」ということが、どれだけ重いことなのか。
それが、良いか悪いかを問う話ではありません。
この事実を知ることが、ヴィーガンを知り、考えるきっかけとなるのです。
【書籍情報】
絵本 いのちをいただく | 原案 坂本義喜 、 作 内田美智子 、 絵 魚戸おさむとゆかいななかまたち / 講談社
講談社BOOK倶楽部 「絵本 いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日」
5. うちは精肉店

絵のように、デフォルメしたり、オブラートに包むことができない、写真。
先述の「しんでくれた」や、「絵本 いのちをいただく」ということが、空想ではないことを、写真が教えてくれます。
「しんでくれた」のは、人の手によって、「屠畜」という名のもとに殺されるからです。
ここに描かれているのは、紛れもない事実であり、私たちが生きるために続けられてきていることです。
スーパーに並ぶお肉も、誰かが使うランドセルも、屠畜から始まります。
リアルです。そして、重いです。
しかし、知るべき事実です。
【書籍情報】
うちは精肉店 | 写真・文 本橋成一 / 農山漁村文化協会(農文協)
6. 赤い目のおひめさま

人はどうして、こんなにも身勝手な思いを、間違っていないと信じることができるのでしょうか?
ある国のおひめさまと、おひめさまと生まれたときからずっと一緒にいるライオンのお話です。
美しく、もっときれいになりたいと、その立場を使い、あらゆる贅を尽くしていました。
それでも、ライオンと一緒にいて、見つめあうときには、小さな頃と変わらないことを、お互いに感じられるのでした。
ライオンの、純粋で、深く、大きな愛。おひめさまが望むものは、ライオンにしかできないことでした。
しかし、おひめさまに伝えるためには、自分ではどうすることもできません。
その愛を伝えるために、力を貸す人。
ライオンの愛を手にしたおひめさま。
やるせなくて、切なくて、苦しくなるほどのお話です。
ペットのいるご家庭では、家族の一員として、かわいがっていらっしゃることでしょう。
おひめさまが自分、ライオンをペットだとしたら?
確かに人間は、おひめさまと同じことを、ずっと繰り返しているのです。
この本は、そんなことを、お子さんと一緒に話す機会になるのではないでしょうか。
【書籍情報】
赤い目のおひめさま | 作 西村英恵 、 絵 いけだほなみ / 文芸社
7. わたしたちのくらしと家畜 全2巻
① 家畜ってなんだろう
② 家畜にいま何がおきているのか

図鑑が好きなお子さんや、小学校でグラフや表を学んだら、こちらの全2巻のシリーズがおすすめです。
はるか昔から、私たちの生活に密着している、家畜。
この2冊は、どんな動物が、どのように家畜とされているかを解説している第1巻と、家畜を取り巻く課題や問題など、現在の家畜の様相を解説する第2巻という構成です。
2013年発行の本ですので、情報は少し古いです。
現在の詳しい表やグラフの情報を探す学習にもなりますので、ぜひ最新の資料を探し、比較しながら、お子さんと読んでみてください。
そもそも、「家畜」とはなんでしょうか。
広辞苑には「人間に飼養される鳥獣。牛・馬・豚・鶏・犬の類。「―を飼う」」
と書かれています。
狭義にもよりますが、そのひとつに、「利用目的により、農用動物(英語:farm animal)・愛玩動物(英語:pet animal)・実験動物(英語:laboratory animal)の3種に大別できる。」
つまり、考え方のひとつとして、「ペットも家畜である」ということになります。
この本にも、犬や猫など、ペットとして親しまれる動物も、「家畜」として紹介されています。
みなさんなら、お子さんに、どんな説明をしますか?
【書籍情報】
わたしたちのくらしと家畜 |
① 家畜ってなんだろう ② 家畜にいま何がおきているのか
著 国立民族学博物館 池谷和信 、 絵 山本暁子 / 童心社
引用:Wikipedia 「家畜」
広辞苑無料検索 「家畜」 / 広辞苑無料検索 ホームページ
まとめ
いかがでしたか?
今回ご紹介した、7タイトル/8冊の本は、「ヴィーガンとは」「ヴィーガンになりましょう」などということは、一切書かれていません。
ヴィーガンを、肯定も、否定もしていません。
ヴィーガンとは、「哲学」であり、「生き方」なのです。
私たちがこの地球で、人間として存在し、これからも生きていくために、何を知り、何を考え、どう生きるか?
これらの本がきっと、大人も子どもも一緒に考えていけるきっかけになるでしょう。