「細胞培養乳脂肪」とは?リアルヴィーガンミルクで動物からの搾取に終止符を打つ

「細胞培養乳脂肪」とは?リアルヴィーガンミルクで動物からの搾取に終止符を打つ

今世界中が注目する細胞培養技術を使った、動物の犠牲が必要ない&環境に優しい細胞培養のミルク・乳製品について解説。

ハッピーキヌア編集部
2022年08月12日
「細胞培養乳脂肪」とは?リアルヴィーガンミルクで動物からの搾取に終止符を打つ

近頃スーパーやコンビニでプラントベースのミルクやヨーグルトを目にする機会が増えました。

動物性以外の製品の選択肢が急激に増えた主な原因は、牛乳や乳製品の製造がもたらす環境への負荷にあります。

 

乳牛を育てるには、多くの水や土地を必要とします。さらに、牛のゲップと排せつ物に含まれるメタンガスには、二酸化炭素の30倍ともいわれる温室効果があります。

そんな中、動物からの搾取を必要としない持続可能な乳・乳製品として期待されているのが細胞培養由来の製品です。

 

環境問題への危機意識の高まりに伴い、細胞培養の乳製品の研究・開発を行うバイオテクノロジー企業の動きが盛り上がっています。

 

今回は細胞培養について、そして細胞培養ミルクや細胞培養乳脂肪を使った世界初のヨーグルトの開発を行う企業の取り組みについて紹介していきます。

 

「細胞培養」とは?世界で注目されている理由

「細胞培養」とは、生物から細胞を採取しそれを生体外で人工的に維持・増殖する技術です。

適切な環境で培養を行えば、細胞から肉やミルクを生産することができます。

 

この細胞培養秘術を使って作った肉やミルクの生産が世界中で注目されている主な理由は、

 

  • 動物を犠牲にしない
  • 地球環境への負荷軽減
  • 食糧危機の解決策になりうる
  • 植物性の代替品よりも栄養価が高い

 

細胞由来の食糧は、人工的に増殖・生産できるため動物を犠牲にする必要がありません。

動物を大量に飼育する必要がないので、その分環境への負担を減らすことができます。

 

国連によると、2030年までに世界の人口は85億人に達し、2050年には97億人に増加するものと予測されています。

参考:人口と開発 | 国連広報センター

 

こうした人口の増加に伴う食糧不足の解決策としても細胞培養技術を使った食糧は注目されているのです。

 

まだこうした細胞培養の食糧産業は大きく成長しているわけではありませんが、企業の動きは活発です。

ここからは、細胞由来の乳や乳製品の開発を行う企業についてピックアップしていきます。

 

細胞培養のミルクを作るスタートアップ企業

Turtletree Labsは、細胞から人工ミルクを培養する技術を持つシンガポールのスタートアップ企業です。

2020年にアジア最大級の環境関連の先端技術公募”The Liveability Challenge”で60カ国400件の応募の中から優勝。賞金として100万シンガポール・ドル(約7,700万円)の資金を獲得しました。

 

同社の細胞培養技術は、ヒトの母乳や牛乳、その他動物のミルクといった哺乳類動物全てのミルクを作ることが可能です。

 

乳の排出後3~4時間以内に生細胞を抽出し、それを培養して増殖させて独自の特許技術で作成した培地に移します。

この乳糖成分の培地を触媒として、バイオリアクターがヒトや牛の乳房のような役割を果たしてくれるため、最終的にミルクを排出するというものです。

 

Turtletree Labsでは、まず乳児用のミルク(ヒトの母乳)の商品化を目指しています。

食料の自給率向上を目指すシンガポール政府からもサポートを受けており、アジアのバイオテック企業の中でもかなり注目を集めています。

(シンガポールのヴィーガン事情についてはこちらの記事を併せてお読みください)

 

参考:細胞培養ミルクで食料自給率向上に貢献へ(シンガポール) | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

 

細胞培養乳脂肪を使った世界初のヨーグルト開発プロジェクトがスタート

2022年6月には細胞培養乳脂肪を使った「世界初」のヨーグルトを開発するプロジェクトを発表した企業も。

世界で初めて細胞培養乳会社として株式を公開したイスラエルの企業Wilkは、細胞から培養された乳脂肪のコア成分が含まれるヨーグルトの開発を行っています。

 

乳脂肪のコア成分には十分な必須栄養素のほか、本物の乳脂肪にのみ見られる固有の栄養素を有しています。

しかし、これは今まで代替技術では再現できませんでした。同社の新しいヨーグルト製品が完成すれば、本物の細胞培養乳脂肪を含む乳製品を最初の食品製品となります。

 

細胞培養による代替母乳・ミルクを開発するWilkでは、粉ミルクに使用できる母乳成分の開発にも取り組んでおり、母乳タンパク質の1種で乳児の健康維持のために重要な成分であるヒトラクトフェリンの生産に成功しました。

 

さらにイスラエルのコカ・コーラフランチャイズを有するCentral Bottling Company(CBC)から200万ドルの資金を調達し、細胞培養乳製品の開発を協業するなど、細胞培養乳業界を牽引しています。

(イスラエルのヴィーガン事情についてはこちらの記事を併せてお読みください)

 

参考:Wilk、細胞培養乳脂肪を使った「世界初」のヨーグルトを開発するプロジェクトを始動 | Foovo -フードテックニュースの専門メディア-

まとめ

今回は細胞培養による乳・乳製品への企業の取り組みを中心にご紹介しました。

 

細胞培養による乳・乳製品の開発は、動物の犠牲を必要とせず、かつ環境への負担が少なく食糧問題への一助となる大きな可能性を秘めています。

細胞培養による乳・乳製品を消費者がリーズナブルな価格で手に入れるにはもう少しがかかるかもしれません。

 

ですが、細胞培養による乳・乳製品の開発は環境問題や食糧問題といった課題を解決し、持続可能な社会を実現するための重要な役割を担うとして世界中から期待されています。

近い将来、動物からの搾取に終止符を打つことも可能になるかもしれません。

 

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