心血管疾病のリスクを2倍にする可能性も?医師がケトジェニックダイエットに警鐘を鳴らす理由とは
糖質を制限する代わりに、高脂質の食事を摂取する「ケトジェニックダイエット」を続けることにより、心血管疾病のリスクが上昇するという研究結果が発表されました。その詳細について解説させていただきます。
しかし、即効性のあるダイエット法ゆえに、副作用やリスクもあることが指摘されています。
長期的に炭水化物を制限することにより、身体にもたらされる影響とは、一体どのようなものなのでしょうか。
米国心臓病学会学術集会による研究レポートなどをもとに、解説させていただきます。
目次
ケトジェニックダイエットとは
糖質(炭水化物)を制限し、代わりに脂質を増やした「ケトン食」を摂取して行う「ケトジェニックダイエット」は、1920年代、もともと重度の薬剤耐性てんかん患者のための治療法として提案されたものです。
ケトジェニックダイエットでは、ケトン食による極端な糖質制限により、血液中のケトン体濃度を上昇させ「ケトーシス状態」をつくりだします。
ケトーシス状態になった体内では、蓄積された脂肪が糖の代わりにエネルギーとして燃焼されるため、即効性があり、効率的に痩せられるダイエット方法として支持されています。
また、糖分の摂取による血糖値の上昇作用が起きないため、血糖値や血圧の安定にも効果的で、アスリート食や、医療食としても、取り入れられているようです。
特定の病気の発症リスクとケトジェニックダイエットとの関連性
科学雑誌「Frontiers in Nutrition」に掲載された批評では、ケトジェニックダイエットを実践している人々は、LDL(悪玉)コレステロールの蓄積が懸念されるほか、心疾患、腎不全、糖尿病や癌、アルツハイマー病を発症するリスクが高いことが示唆されています。
また、妊娠中に低炭水化物ダイエットを実践することで、先天性欠損症(神経管欠損)や妊娠糖尿病につながる恐れが出てきます。
そのため、ケトジェニックダイエットは、妊婦もしくは妊娠する可能性のある人たちにとって、特に注意が必要なダイエット方法といえるでしょう。
さらに、脂肪やタンパク質摂取量が増加することで、体内に有害な「酸化ストレス」の発生につながる可能性があります。
ケトーシス状態の体内で大量に消費されるタンパク質も、腎臓に過度のストレスを与え、慢性的な腎臓病をさらに悪化させる可能性があることも、研究の著者によって指摘されています。
ケトジェニックダイエットを実践することで、早い段階で体重は減るかもしれませんが、身体へのリスクも懸念されるため、十分に考えて行うことが必要なのです。
極端な糖質制限で心血管疾患リスクが増加
厚生労働省の基準では、1日の摂取カロリーのうち、50~65%程度を炭水化物(糖分)から摂取するのが理想的とされています。
しかし、ケトジェニックダイエットを成功させるためには、極端な糖質制限が必要不可欠です。
とくに、炭水化物の摂取量を、1日の総摂取カロリーの45%未満に抑えている人の場合、不整脈や心房細動などの心血管疾患が起こる確率が一般的な人よりも高くなるという研究結果が「米国心臓病学会学術集会」によって発表されました。
この研究では、タンパク質や脂質の摂取量を増やすことによって、体内に酸化ストレスが発生し、不整脈や心血管疾患を引き起こしかねないということも指摘されています。
さらに、不整脈を発症している人は、脳卒中に罹るリスクが一般の人と比べて5倍に上昇するといわれているため、とくに注意が必要です。
この研究の立案者で、心臓病専門医でもある、ジアドング・チュアン医学博士は「ケトジェニックダイエットや、パレオダイエットなどのダイエット法を実践している人は、心血管疾患に注意が必要だ」と、低糖質ダイエットに警鐘を鳴らしています。
ケトダイエットは体に悪い?
2022年に発表された「US News and World Report」による40種類のダイエット番付で、ケトジェニックダイエットは、健康的な食事のための最高のダイエットカテゴリーにおいて、最下位という結果に終わりました。
ダイエットと栄養の専門家たちは、ケトジェニックダイエットは、栄養がアンバランスで長期的に継続することが難しく、リバウンドの恐れがあることも指摘しています。
また、2018年に、ランセット公衆衛生によって発表された研究においても、動物性脂肪を多く含み、炭水化物を極端に制限した食事は、寿命を最大15年短縮させる可能性があるとされています。
食肉の摂取により慢性疾患のリスクが高くなる
肉類は、主要なタンパク源とされていますが、赤身肉や加工された肉を大量に摂取することで、心臓病や癌などの慢性疾患へのリスクが増加するともいわれています。
国立研究開発法人国立がん研究センターが発表した「日本人における赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて」では、1日100g以上の肉を摂取する男性グループと、1日80gの赤身肉を摂取する女性は、共に結腸癌に罹患するリスクが高くなるという研究結果が報告されています。
また、日本人の食生活でも、日常的に肉類を極端に多く摂取する習慣のある人々は、大腸がんに罹患するリスクがあるとされているため、健康を維持するためにも、食生活には十分な注意が必要なのです。
環境にもやさしいヴィーガンダイエット
赤身肉や、ベーコンなどの加工肉を積極的に摂取しておこなうケトジェニックダイエットに対し、動物由来の成分を一切摂取しないヴィーガンの食事法(ダイエット)は、ヘルシーで体に良いとされています。
「American Journal of Clinical Nutrition」に掲載された新しい研究でも、他の食事法と比較した際、ヴィーガン食は、気候へ及ぼす影響が最も少ないことが分かっています。
野菜や果物、穀物を中心としたヴィーガンダイエットを実践することで、身体の健康状態の改善が期待されますし、地球環境の保護にも貢献することができます。
ダイエットをする際は、動物性脂肪を多く摂取するケトジェニックダイエットよりも、プラントベース中心のヴィーガンダイエットをオススメします。
まとめ
炭水化物や糖質を極端に制限して行うケトジェニックダイエットは、不整脈などの心血管疾患に罹患するリスクが高くなるという研究結果が発表されました。
さらに、不整脈に罹っている人は、そうでない人よりも、脳卒中の発症リスクが5倍にもなるようです。
炭水化物は、脂質やタンパク質と同様に、人間に必要とされる3大栄養素のうちの一つで、大切な栄養素です。
通常、1日の総カロリーのうち、50~65%を炭水化物から摂取することが理想とされています。
もし、長期間にわたってケトジェニックダイエットを実践される際には、副作用やリスクに十分お気をつけください。
ハッピーキヌアヴィーガンメディアのこちらの記事も、ぜひご参考になさってください。