ヴィーガンと環境問題|畜産業が地球温暖化に与える影響はどれくらい?
畜産業による地球温暖化をはじめとする気候変動への影響を詳しくご紹介。SDGsの目標の1つにもある「気候変動に具体的な対策を」にヴィーガンであることで貢献できる理由や地球温暖化以外で畜産業が影響している環境問題についてもご紹介します。
家畜の飼料生産と気候変動
イギリスのOxford University Press に掲載された論文では、家畜による気候変動に加え、飼料生産との関係も述べられていますので、要約してご紹介します。
国連によると、世界の人口は過去12年間で約10億人増加し、2017年には約76億人に達しました。
この伸びは10年前(年率1.24%対1.10%)に比べて鈍化していますが、毎年平均8300万人の増加で、世界人口は2030年には約86億人、2050年には約98億人に達すると予測されています。
途上国における人口増加、都市化、所得の増加が、畜産物の需要増加の主な推進要因となっています(国連/2017年)。
畜産業は大量の天然資源を必要とし、人為的温室効果ガス総排出量の約14.5%を占めています。
増え続ける世界人口のために十分な食糧供給を確保しつつ、食糧生産による環境負荷を抑えるためには、この分野の排出量削減を目的とした緩和戦略が必要とされます。
家畜の気候変動への影響
畜産業から発生する温室効果ガスの中で最も問題なものは、メタンと亜酸化窒素です。
メタンは、主に腸内発酵と糞尿貯蔵によって発生し、地球温暖化への影響が二酸化炭素の28倍にもなるガスです。
糞尿貯蔵や有機・無機肥料の使用から発生する亜酸化窒素は、二酸化炭素の265倍の地球温暖化効果を持つ分子とされます。
家畜の飼料生産による気候変動への影響
腸内発酵と糞尿貯蔵から生じる温室効果ガスに加えて、飼料生産とそれに関連する土壌中の二酸化炭素と亜酸化窒素の排出も畜産業の重要な問題点となります。
土壌の二酸化炭素排出は、土壌の炭素動態(例えば、植物残渣の分解、土壌有機物の無機化、土地利用の変化など)、合成肥料や殺虫剤の製造、農場内の農業運営における化石燃料の使用に起因するものです。
亜酸化窒素は、有機質肥料や無機質肥料を土壌に施用した際に排出されます。
畜産業全体で占める亜酸化窒素の排出の割合は以下の通りです。
- 飼料生産と加工・・・二酸化炭素換算で 3.2 ギガトン(約45%)
- 腸内発酵・・・約2.8 ギガトン(全体の約39%)
- 糞尿貯蔵・・・約0.71 ギガトン(全体の約10%)
- 動物製品の加工と輸送・・・0.42ギガトン(全体の約6%)
飼料生産には、①土地利用の変化②肥料・農薬の製造・使用③糞尿の排泄・施用④農作業⑤飼料加工⑥飼料輸送に起因する温室効果ガスの排出が含まれます。
全世界で収穫されたバイオマスのほぼ60%は、飼料や敷料として家畜のサブシステムに入ります。
飼料生産からの温室効果ガス排出量は、卵、鶏肉、豚肉からの排出量の60~80%、牛乳、牛肉部門の35~45%を占めています。
(飼料生産からの排出量は畜産部門の約45%を占めており、飼料作物の肥料としての糞尿の施用や牧草地への糞尿の堆積は、これらの排出量の約半分を占める相当量の亜酸化窒素排出を発生させる)。
家畜の飼料生産には、農業用土壌への大量の窒素施用が必要となることが多いですが、適切な糞尿管理を行うことで、製造肥料の必要性を減らすことが可能です。
農業全般、特に畜産業は、メタンや亜酸化窒素の排出を通じて地球温暖化に寄与しています。
今後の人口増加に対応するためには、家畜の生産性を向上させ、生産物の単位当たりの温室効果ガス排出原単位を減少させる必要があります。
(Oxford University Press「Livestock and climate change: impact of livestock on climate and mitigation strategies 」)
家畜を育てるために必要な飼料生産による二酸化炭素と亜酸化窒素の排出も、気候変動への大きな影響を与えているのが分かります。
ヴィーガンとしては、畜産業そのものが無くなることが望ましいかもしれませんが、現実的には、適切な管理を行い、温室効果ガス排出原単位を減らすことが不可欠となります。
畜産業が環境に与えている問題は、地球温暖化だけではありません。
それでは、他にどのような環境問題を引き起こしているのか、次にご紹介します。