エシカルとは?エシカル消費の正しい理解と、実践する具体的なポイント5選

世界中で幅広く取り組まれているエシカル。その基本的な概念から、日常生活でエシカル消費を実践するポイントを5つをご紹介します。ヴィーガン以外の方も必見な情報を多く掲載しています。

近年では、世界中で環境問題が幅広く取り上げられており、そのあたりのニュース記事で、見かけたことがある方もいるかもしれません。
しかし、その詳しい意味を知っているという人は、そこまで少ないのではないでしょうか。
そんな、近頃耳にすることの多い「エシカル(消費)」について紹介します。
エシカル消費の基本的理念
エシカル(ethical)とは、日本語では「倫理的な」という意味を持つ言葉です。
倫理的であるとは、社会的なマナーが守られている状態のことです。
つまりエシカル消費というのは、社会的なマナーを守る消費の方法であるということになります。
また、エシカル消費は、環境問題への対応から重要だとされる、持続可能な開発(SDGs)を実現するためにも非常に大切な概念です。
より具体的に説明すると、エシカル消費とは、下記3点が抑えられている消費のことです。
- 人にやさしい消費
- 地域にやさしい消費
- 環境にやさしい消費
それぞれについて少し説明すると、
はじめに、1つ目の「人にやさしい消費」とは、助けが必要な方へお金が回るような消費、あるいは、反社会的勢力にお金が渡ってしまうような消費を避けることです。
2つ目の「地域にやさしい消費」とは、地域社会・経済を活性化させる消費、あるいは、地域社会・経済を損なわないための消費です。
最後に、3つ目の「環境にやさしい消費」とは、これが最もわかりやすいかもしれませんが、地球環境を良くする消費、あるいは、地球環境を悪化させない消費をすることです。
(出典:エシカルとは?エシカル消費の押さえておきたい4つのポイント!|サステナブルジャーニー|大和ハウスグループ)
それでは本題の、エシカル消費を実践するうえで考えるべきポイントを紹介します。
エシカル消費を実践するポイント
1.「誰が」を考える
まず、誰がつくった製品なのかを考えてみましょう。
考える規模感としては、「港区の田中さんが」ということではなく、「アフリカの子供たちが」という感じです。
現在は、改善しつつもある国も多く、一口にアフリカだけを取り上げるのも良くないですが、アフリカの中ではまだまだ労働を強制されている子供たちが多いのが事実です。
こうした発展途上国の子供たちの製品は、品質はよいにも関わらず、かなり安価に先進国と取引されてしまうことが多いのです。
売れれば売れるほど、より多く生産しなければならなくなり、労働時間が長くなってしまいます。
収入が得られそうで良いのでは?と思う方がいるかもしれませんが、実際には働いている方へ渡るお金は非常に少なく、中には一切もらえないという状況があります。
こうした状況を排除し、適切な品質の製品を、適切な量、適切な価格で取引するフェアトレードという仕組みがあります。
フェアトレード製品を購入・消費することで、生産者の方の安定した生活をサポートすることができます。
これにより、生産者の人権を守る倫理的行動、すなわちエシカルなアクションをすることができます。
同様にハンディキャップを持った方の自立支援のため、そうした方々が生産した製品を積極的に消費するのもエシカルな行動です。
また、消費者だけではなく、経営者の方も、ハンディキャップを持った方を積極的に採用し、労働の機会を適切に与えることが大切です。
野菜や果物のパッケージなどでも目にすることも多い「〇〇さんがつくりました」という表記。
これは、消費者の安心を第一に考えたものですが、消費者が購入者に対して感謝の気持ちを持つことができる、一種のエシカルな体験ですね。
消費者の立場でも、生産者・経営者の立場でも、自分の行動が誰のためになっているのかを、よく考えることで、エシカル消費をすることができます。
2.「どこで」を考える
消費しようとするものが、どこで作られたものなのかを考えることも、エシカル消費には重要です。
「どこで」を考えるにあたって重要な概念は、皆さんも一度は耳にしたことがある「地産地消」です。この地産地消とは、地元で生産されたものを地元で消費するということです。
そのメリットをいくつかご紹介します。
まず、地元で生産されたものを地元で消費することで、輸送コストを抑えることができ、二酸化炭素排出量を削減することができます。遠く離れた場所から運ばれたものは、それだけ輸送コストがかかります。
そのため、自動車・船・飛行機などで運ばれてくれば、多くの二酸化炭素を排出してしまいます。
地元で消費できれば、基本的に船や飛行機で運ぶ必要はなくなるので、その分の二酸化炭素排出量を削減することができるのです。
また、地産地消の活動を通じて、生産者と消費者の心理的な距離を近づけることができます。
そこで深い繋がりができれば、地域にやさしい消費を実践できるだけでなく、食料自給率を高め、結果的に地球環境の保護にもつながります。
人・環境・地域に優しい地産地消することで、エシカル消費を実践することができます。
3.「どのように」を考える
素材が植物だからエシカルだろうと、単純に考えるのではなく、「どのように」を考えることが大切です。
白砂糖は、サトウキビから精製する過程で、畜産動物の骨を使用します。厳密にいうと、動物の骨を熱し、炭化させたものを、ろ過および脱色するために使用します。
この工程は、他の素材でも代替可能ですが、最も安く、大量に生産できる手法として多くの砂糖メーカーで採用されています。
「なにで」の項でお伝えした通り、動物由来の素材を使用することは、植物由来の素材よりも、多くの水や二酸化炭素を排出します。
サトウキビは、もちろん植物ですが、精製過程で動物由来の素材を用いるため、ヴィーガンの方は避ける方も多いです。
白砂糖に関しては、こちらの記事も参考にしてください。
白砂糖がヴィーガンではない理由と、おすすめのヴィーガン砂糖をご紹介
このように、もともとの素材が植物だから、エシカル消費できるだろうと単純に考えるのではなく、「どのように」を考えることも、エシカル消費においては非常に重要な概念です。
4.「なにで」を考える
エシカル消費を実践していくためには、それが「なにで」つくられているのかを考えるのが、実践しやすく、かつ重要です。
最近よく話題になるヴィーガン。「なにで」を考えている代表例といってもいいでしょう。
ヴィーガンは、動物由来の素材でつくられたものを消費しません。
ヴィーガンというと、食品だけを植物由来のものとしているイメージがあるかもしれません。
実は、洋服や身の回りの製品、住宅建材など、衣食住すべてにおいて、植物由来のものを生活に取り入れるようにします。
動物由来ということは、そのほとんどが家畜として飼われている動物によるもので、動物が原料になっているということ。
家畜は想像しているよりも、大量の水を使う必要があったり、飼料製造や管理のために大量の二酸化炭素を排出したりしています。
「農産物も水を大量に使ってない?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに、日常の生活で使う量と比較すると、大量であることには間違いないです。
しかし、例えば1kgの牛肉を生産することを考えたとき、水が約13,000リットル必要なのに対して、同じ量1kgのトウモロコシを生産するのには、約500リットルしか必要ないのです。
(出典:VOGUE, 「検証!「菜食主義が地球を救う」の5つのファクト。」)
また、エシカル消費において、環境のことを考えるのであれば、住宅をつくる素材に関しても「なにで」を考えることが大切です。
なぜかというと、日本の産業において排出される二酸化炭素量のうち、なんとその約1/5を建設業界が占めているのです(住宅・ビルの建設から、運用・解体含む)。
(出典:環境省_平成26年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第2部 各分野の施策等に関する報告)
そのため、私たちがエシカル消費を実践できる範囲でいえば、内装材に動物由来の製品を用いないことや、住宅を選ぶ際、鉄骨造やRC(鉄筋コンクリート)造ではなく木造にすること、などが考えられます。
特に、後者の構造材料は、二酸化炭素排出量においても占める割合が大きく、製造過程での排出量が多いRC造は、住宅1戸あたり、木造のおよそ2.5倍の二酸化炭素を排出してしまいます。
構造的に問題ない場合には、木造を積極的に取り入れていくべきです。
(出典:地球温暖化防止への貢献|大規模木構造建築 サミットHR工法/SJ工法/HRS工法)
また、木造で住宅をつくることで、原料の木が成長する過程で、光合成で消費した二酸化炭素を、木材として封じ込めることができるため、大気中の二酸化炭素量を削減することができると考えられています。
これは、炭素固定という概念で、地球温暖化防止には重要な概念なので、興味がある方は、ご自身でも調べてみてください。
5.「なぜ」を考える
ある製品が、なぜ作られたのかを考えることで、あなたも大きなエシカルなアクションが出来るかもしれません。
例えば、ストローがプラスチックで作られた理由を考えてみましょう。
最初は、ストローというくらいですから、藁を用いていました(ストロー(straw)は英語で「藁」を意味する)。
そして、紙製へと改良された後、耐久性も高く、安く大量に生産できる、プラスチックが使われるようになりました。
その「安価で丈夫」という点が、当時の紙製よりも優れていたため、プラスチックストローが主流になっていったのです。
(出典:National Geographic ,“ストローはこうして世界を席巻した、その短い歴史”, 2018年)
しかし、現在ではどうでしょうか。
実際に使ったことがある方も多いと思いますが、現在の紙製ストローは、量産体制やコーティング技術などが大幅に進歩し、紙製であっても「安価で丈夫」な製品を生産することができるようになっています。
もちろん、1ヵ月水に浸していれば、ふやけて解体してしまいますが、使う時だけ耐えていればストローの役目を全うでき、問題ないのです。
むしろ、そこが重要な点です。
プラスチックストローは、紙製ストローと違い、何年という時間が過ぎても水中に残ってしまいます。
そのため、海に捨てられたプラスチックストローが、海の生き物の口に入ってしまい、動物に優しくない世界になってしまっている訳です。
過剰な性能は必要なく、安心が確保される必要最低限な性能をもつ製品を選ぶ。
その行動は、エシカル消費において非常に重要な考えです。
「なぜこの材料で作られているのだろう」「この製品は本当にこんな性能が必要なのかな?」「もっとエシカルな材料で作れるのでは?」という、あなたの少しの気付きが、世界を大きく動かすことになるかもしれません。
(山本良一、”エシカル消費の序論”、廃棄物資源循環学会誌,Vol. 28, No. 4, pp. 251-260, 2017)
まとめ
エシカル消費を実践する上でのポイントを5つ紹介いたしました。
- 誰が
- どこで
- どのように
- なにで
- なぜ
この5つのポイントを、日頃の生活で考えることで、エシカル消費を実践することができます。
もちろんアクションしていくことが望ましいのですが、日常生活のなかで考えるだけでも、意識が変わっていくものです。
何かを消費しようとするときには、積極的に考えてみると新しいものが見えてきますね。