カーボンクレジット制度の内容と導入している有名企業4社をご紹介

カーボンオフセットを実施するにはクレジット制度を利用することがとても重要です。本日はクレジットの制度について、また、誰もが耳にしたことがある日本企業が、制度をどのように経済活動に活かしているのかを解説していきます。

その中でもカーボンクレジット制度は脱炭素社会を達成するために、欠かせない取り組みの一つとなります。
本日は、カーボンクレジットについて、その内容と、誰もが知っている有名な日本の企業の取り組みを例に挙げながら解説していきます。
カーボンオフセットとは
カーボンオフセットは、国や企業、そして私たち一人ひとりの個人が、日々の活動を通して、排出しているCO2(カーボン)をはじめとする温室効果ガス*の排出を、それぞれの活動によってできる限り減らしていく努力をし、その上で避けることができない排出量を、他の活動によって埋め合わせ(オフセット)することです。
*温室効果ガス:地球の平均気温上昇の主な原因となるガス。太陽の光で温められた地上から、地球の外に向かう熱を、大気中に蓄積し、再び地上に戻す性質を持つ。
カーボンオフセットは、日本語では脱炭素と表すことができます。
つまり、よくニュースなどで話題となっている「脱炭素社会」は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしていくことを目指す社会ということです。
また、温室効果ガスの排出を抑制することは、深刻化する地球温暖化への対策にもなります。
そのため、カーボンオフセットを意識して生活、経済活動をしていくことは、SDGs*(エス・ディー・ジーズ)のゴール13「気候変動に具体的な対策を」の達成にも繋がっていくと言えるでしょう。
*SDGs: Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標、地球上の誰一人取り残さないという共通理念のもと、17の目標と169のターゲットから構成される。
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カーボンオフセットを達成するためには、クールチョイスなどによって、消費者一人ひとりが意識していくことがとても大切になってきますが、それでも避けることができない排出量は、政府や企業が発行する「クレジット」でオフセットすることが可能です。
脱炭素についての詳しい内容や、世界が脱炭素を目指すことになった経緯、脱炭素社会に向けて、一人ひとりが簡単に実践できるクールチョイスについては、ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。
SDGsについてはこちらの記事を参考にしてみてください。
(出典: オフセット/ニュートラルとは?|カーボンオフセットフォーラム)
J-クレジット制度について
クレジットとは、政府や企業が、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入や、省エネ性の高い商品の開発・導入、また、植林などによって、削減・吸収した温室効果ガスの量を、審査などに通し、数値化することで、市場で売買することが可能になったものです。
1トンのCO2が1単位として換算され、2021年には713万トンのCO2が国によって認証されています。
また、「J-クレジット制度」は、経済産業省、環境省、農林水産省によって運営されているカーボンクレジット制度の一つです。
活動によって温室効果ガスを排出する企業などは、この制度によって、認定されたクレジットを購入することができ、カーボンオフセットの実現に間接的に貢献することができるようになります。
つまり、クレジット創出者は、J-クレジットを売却することで、利益を生み出すことができ、企業などのクレジット購入者にとっても、森林保全活動や他の企業の省エネ活動を後押しできるため、社会問題に対する目標の早期達成や、企業評価の向上へとつなげることができるのです。
例えば、その地域の企業が、地元の自治体などが発行したクレジットを購入することを「クレジットの地産地消」といい、自治体は、売却益を地域経済の活性化に活用することで、結果的に、安心して暮らせる街づくりを推進していくことができます。
従来の財政状況などでは、環境問題への取り組みを実施することが難しかった企業なども、クレジットを購入することで、気軽に活動に参加でき、さらに企業イメージ UPにもつながるため、とても良い循環になりますよね。
(出典: クレジットとは?|カーボンオフセットフォーラム, J-クレジット制度|J-クレジット制度とは温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度です。)
日本企業の取り組み
クレジットを購入して、カーボンオフセットに貢献できると聞いても、一般消費者にとっては、なかなか身近に感じるのは難しいかもしれません。
しかし、企業の取り組みを通じて、消費者がカーボンオフセットに貢献できる機会はどんどん増えてきています。
本日はその中でも、有名な企業を紹介いたします。
日本航空(JAL)
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海を渡る旅行や仕事での出張の際、その他、国内の数百キロの移動などには、飛行機を利用することが多いと思いますが、化石燃料を燃やして動く乗り物からは、大量のCO2が排出されてしまいます。
日本の航空業界でも特に有名な「JALグループ」はカーボンクレジット制度を導入している大手企業の一つ。
持続可能な発展に向けて、企業や団体のカーボンオフセットに関する活動をサポートするBlue.Green(ブルードットグリーン)の協働のもと、JALの公式ホームページでは、乗った距離間で排出されるCO2を計算することができます。
そして、排出の見込み量をもとに、乗客はそれぞれの気候保護プロジェクトから、興味がある活動を選び、寄付という形で貢献することができるのです。
JALグループが提供する気候保護プロジェクトは、以下4つです。
①熊本県小国町の間伐推進プロジェクト
②インドネシアのリンバラヤ生物多様性保護区における森林破壊防止プロジェクト
③北海道4町連携による間伐促進型森林づくり事業
④アフリカにおける水インフラ投資による衛生環境の改善事業
例えば、東京からニューヨークまで、エコノミークラスでJALの飛行機を利用したと仮定します。
片道約13時間のフライトによって排出される一人あたりのCO2の量は、約1.63トンです。
そして、②インドネシアの森林破壊防止プロジェクトを支援したい場合、CO2排出量1トンあたり950円の寄付ができるため、1.63トンに換算して1548円分カーボンオフセットができるということになります。
他にも、JALグループは、バイオジェット燃料の開発促進や、航空業界以外のカーボンクレジットの購入など、企業全体でカーボンオフセットに積極的に取り組んでいます。
飛行機を頻繁に利用する方は、JALのクレジット制度を利用して、カーボンオフセットにチャレンジしてみてはいかかでしょうか?
(出典: サステナビリティ SDGs ESG|JAL企業サイト)
ローソン
日常生活に身近な存在であるコンビニエンスストアの一つ、「ローソン」もクレジットを通じて、カーボンオフセットの機会を個人消費者に提供している企業の一つです。
ローソンで、簡単にカーボンオフセットに参加できる方法は、3つあります。
1つ目は、普段のお買い物で貯まるPontaポイントを利用する方法。
こちらは、1口50ポイントから申請でき、1口分で約20キロのCO2がオフセットできます。
2つ目は、ローソン内にあるマルチメディア端末「Loppi」を通じて、寄付する方法。
2,619円で1トンのCO2がオフセットされ、証明書も発行されます。
3つ目は、排出権付きの商品を購入する方法。
ローソンには期間限定で、CO2排出権付きの商品が販売されていますので、こういった商品を選択することで、普段のお買い物を通じてカーボンオフセットに参加することが可能になります。
ローソン公式ホームページによると、2021年5月時点ですでに約3万トンのCO2がオフセットされているそうです。
他にも、あなたのCO2家計簿では、数字を入力するだけで、家庭から排出されるCO2の量を計算してくれますので、排出量を少しでも意識できるよう、利用してみるのもおすすめです。
ローソンは、他にもCO2の排出量を減らすために、マイボトル持参すると、ドリンクが10円引きになるサービスなども実施しています。
この取り組みにより、Mサイズで30グラム、Lサイズで40グラムのCO2が削減されるため、カーボンオフセットで大切な、排出されるCO2を削減する努力をするということが簡単にできますよね。
(出典: 社会・環境|ローソン公式サイト, J-クレジット制度|J-クレジット制度とは温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度です。)
Yahoo! Japan (ヤフー)
次にご紹介する企業は「Yahoo! Japan (ヤフー)」です。
毎日の生活の中で、ヤフーが提供するサービスを利用している方も多いのではないでしょうか?
ヤフーは 、J-クレジットの購入を通じて、「Do Your Part! 国立公園・世界自然遺産カーボン・オフセットキャンペーン」と呼ばれる活動を支援している企業の一つです。
購入額の半分が、自然環境の保全活動に利用され、残りの金額は、J-クレジット創出団体に還元することで、より省エネの設備を導入などに活用される仕組みを構築しているそうです。
また、「Yahoo !ネット募金」で同キャンペーンへの募金を実施しているため、一般の消費者はクレジットカードで100円から、寄付することができます。
寄付金は、主に、自然環境の保全や、活動を推進する子供達への支援として利用されます。
他にも、「Yahoo !ネット募金」では、明るい未来を作るための様々な募金を実施しているので、興味があるものがあれば、手軽に社会活動を後押しすることができます。
(出典: Yahoo! JAPAN、「国立公園・世界自然遺産カーボン・オフセットキャンペーン」に賛同 – ニュース – ヤフー株式会社, 未来の子どもたちに国立公園の美しい自然を残したい – Yahoo!ネット募金)
Canon (キャノン)
プリンターや一眼レフカメラ、映像機器などを手掛け、世界中からの人気を誇る日本の精密機器メーカーです。
キャノンは、製品の開発にあたり、省エネ性能や、環境配慮技術の向上によって、製品のライフサイクルで排出するCO2の削減に取り組んでいます。
しかし、一部の製品の中で、どうしても削減できないCO2に関しては、相当分のJ-クレジットを購入することでオフセットしています。
つまり、個人や企業などが、CO2排出を削減できるキャノンの製品を使用することで、カーボンオフセットに貢献できると言えますよね。
さらに、キャノンは、希望する購入者に対して、同社が購入したクレジットのうち製品を使用する維持分を無償で提供する取り組みも行なっています。
提供されたクレジットは、自身の削減量として活用可能になるため、特に企業などにとっては、環境配慮活動を支援していることをアピールできるきっかけを作ることも可能です。
また、キャノンは、先ほど、ヤフーの取り組みでもご紹介した「国立公園・世界自然遺産カーボン・オフセットキャンペーン」にも協賛しており、デジタルカメラで壮大で豊かな自然の写真を撮影するプログラムを支援しています。
製品を購入する際、このように、環境に優しい商品を選択することは、エシカル消費やエシカルチョイスと言います。
エシカル消費について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事も参考にしてみてくださいね。
・サステナブルな世界のために重要な、エシカル消費とは?人生を変える考え方
(出典: サステナビリティ|企業情報|キヤノンマーケティングジャパングループ)
まとめ
カーボンオフセットは、削減努力をした上で、排出されてしまう温室効果ガスを他の活動によって埋め合わせるすることです。
埋め合わせする方法として、J-クレジット制度が一般的です。
クレジットは、再生可能エネルギーの利用や植林などの活動で温室効果ガスの排出を減らす取り組みをしているクレジット創出者が、自社の活動では削減できない温室効果ガスの排出を実質ゼロにしたいクレジット購入者と取引するために利用されます。
創出者にとっては環境配慮活動によって、利益を生み出すことができ、購入者にとっては、企業の高評価やブランディングに活用できるため、相乗効果が期待できますよね。
また、寄付や募金などの企業の取り組みを通じて、個人がカーボンオフセットをできる機会もたくさんあります。
寄付と聞くとハードルが高く聞こえてしまうかもしれませんが、数百円から参加できるものもありますので、少しずつ参加・貢献していくことで、脱炭素社会を目指していきましょう。