【イギリス】「The Canteen」がカーボンフットプリントメニューを試験的に導入
地球温暖化による気候変動の危機が高まる中、ブリストルのレストラン「The Canteen」が「Viva!」と提携し、カーボンフットプリントメニューの試験的な導入を始めました。
ヴィーガンのためのチャリティー団体Viva!は、地球温暖化による気候変動の危機が高まる中、政府にカーボンフットプリントメニューを導入するよう呼びかけています。
そして同団体は、ブリストルのレストラン「The Canteen」と二酸化炭素排出量計算プロバイダーの「My Emissions」と提携し、新しいキャンペーンを始めました。
ブリストルの中心部にあるThe Canteenは、100%ベジタリアン・メニューを提供しており、ヴィーガン用のメニューも豊富に取り揃えています。
The Canteenの料理長であるMatthew Harris(マシュー・ハリス)博士は、次のように述べています。
「メニューにカーボンフットプリントを記載することは、人々が自分の選択が環境や社会にもたらす影響をより意識するようになるための前向きな一歩です。
私たちは、ヴィーガン料理を中心としたメニューの炭素計算を積極的に行い、消費者に対して持続可能な選択の重要性を示すことにしました。」
さらに、My Emissionsの共同設立者であるMatthew Isaacs(マシュー・アイザック)氏は、
「気候変動は私たちの世代の問題であり、低炭素の食品を選ぶことは、私たちが地球に与える影響を減らすことができる最善の方法の一つなのです。」
と付け加えました。
カーボンフットプリント表記は義務化すべき?
イギリスの記録的な熱波を受けて、地球温暖化への関心が一層高まる中、VIva!は政府に対して、全ての飲食店のメニューにカーボンフットプリント表示を義務化させるよう要求しています。
この要求の根拠になっているのは、「気候変動情報が人々をより炭素排出量の少ない食品摂取へと導く」とScience Direct誌に掲載された2021年の研究報告です。
研究者は次のように述べています。
「私たちの研究から示唆できることは、環境問題に関心のある人は製品のラベルや細かい表記を読むなど、より積極的に気候変動に関する情報を求める行動が期待できます。
一方で、とりわけ関心のないは情報に受身であり、目の前に情報が与えられたときにのみ、影響を受けるであろうということです。
つまり、消費者にカーボンフットプリントのような表記を提供することで、CO2を削減することができます。しかし、生産者が自発的にそのような情報を提供することは考えにくいのが現実です。
だからこそ、そのような取り組みは義務化しない限り、恐らく実現するのは難しいでしょう。」
My Emissionsによると、ビーフバーガーは3,050gの二酸化炭素を排出するのに対し、ヴィーガンバーガーは267gの二酸化炭素しか排出しません。
さらに、ステーキパイは7,332g、ビーフラザニアは4,183gの二酸化炭素を排出し、ビーフローストディナーは8,666gという驚異的な量の二酸化炭素を排出すると推定されています。
Viva!のマネージングディレクターであるLaura Hellwig(ローラ・ヘルウィグ)氏は、次のように語っています。
「多くの人は、ビーフバーガーを1個食べるだけで、イギリスの平均的なガソリン車を10マイル運転するのと同じダメージを受けるということを知らないのです。」
まとめ
環境への意識が高まる中、私たちが口にする食べ物がどのようにして作られているのか、どのくらい環境への影響があるのかを考えるようになった方もいるのではないでしょうか。
ただ、お店側から情報が提供されない限り、消費者である私たちはどの料理がどのくらいの炭素を排出する原因になっているのかを知る術はありません。
本記事でご紹介した2021年の研究が示唆するように、カーボンフットプリントがメニューで見えるようになることは、環境への負荷が小さいヴィーガンの料理を注文するといった、消費者一人ひとりの行動の変化に本当に関係していくのでしょうか。
日本でも、カーボンフットプリントと消費者の行動に関する調査のため、試験的に取り組む動きが見え始めています。
2022年7月25日、丸紅株式会社では、社員食堂のメニューにカーボンフットプリントを表記し、消費行動を調査するといった取り組みを始めることを発表しました。
The Canteenでの試験的な取り組みは、イギリスや世界の飲食店で、カーボンフットプリント表記がより注目を浴びる一つのきっかけになるかもしれません。
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