【医師監修】お肉を食べないことは健康上本当に問題ないのか?

【医師監修】”結局のところ、動物性の肉を食べなくても、私たちの健康は維持できるのか?” ヴィーガン、プラントベースの食生活を検討したことがある方、または最近始めたという方なら、誰もが持つであろうこの疑問に、現役医師であるDr. Amanoがお答えします。

Dr. Amanoが皆さんの質問にお答えします!

健康のこと、食材のこと、栄養のこと。 ヴィーガン生活を送る上で気になる疑問に、医師であるDr. Amanoがお答えします。

天野 方一
医師/公衆衛生学修士(MPH)/博士(公衆衛生学)/ 2018年よりハーバード大学院に留学。専門は内科、腎臓、抗加齢医学など。

 

この医師監修シリーズは、以前にハピキヌの公式インスタのストーリーで募集しました、フォロワーの皆さんの健康に関する疑問への回答となります。

今後も隔週で記事を更新して参りますので、お楽しみに!

他の記事はこちら

 


 

「ヴィーガン」という言葉や考え方の定義には奥深いものがありますが、やはり一番に思い浮かぶのが「動物性の肉を食べないこと」という方が多いのではないかと思います。

とはいえ、肉や魚は私たちの体に大切なタンパク源であり、エネルギー源である、そんな風に昔学校でも習ったことが思い起こされます。

 

というわけで本日は、お医者様の先生の監修のもと、「動物性の肉を食べないことは健康上本当に大丈夫なのか?」という永遠の疑問について考察していきたいと思います。

 

世界を揺るがしたWHOの報告書

画像:WHO classification of red and processed meats (BBC)

 

2015年に世界保健機関(WHO)が、動物性の食肉摂取に関するあるレポートを発表したことが大きな話題を呼びました。

その内容というのも、「牛肉や豚肉などの赤肉やソーセージやハム、コンビーフなどの加工肉を多く摂取することで、大腸がんになるリスクが高くなる」といったものでした。

これは、WHOの外部期間であるIARC(国際がん研究機関)の研究によるもので、全世界地域の人を対象とした疫学研究、動物実験研究、メカニズム研究からなる科学的証拠に基づく総合的な判定の結果です。

 

ちなみに、ここでいう「赤肉(red meat)」とは、牛や豚、羊などの肉、いわゆる見た目に赤い肉のことで、脂身の少ない部位を示す「赤身肉」とは異なります。

 

WHOは、先の研究結果に基づき、下記のように分類をしています。

  • 加工肉(ソーセージ・ハム・ベーコンなど):ヒトに対して発がん性のある「グループ1」(ヒトにおいて「発がん性の十分な証拠」が認められている)
  • 赤肉(牛肉や豚肉、羊の肉など):ヒトに対しておそらく発がん性のある「グループ2」(ヒトにおいて「発がん性の限定的証拠」・実験動物において「発がん性の十分な証拠」が認められている)

(関連記事:ヴィーガンと健康|WHOも認める赤肉摂取とがんリスクの関係について解説

 

この発表は当時相当な波紋を呼びましたが、実は食肉の過剰摂取には大腸がん以外のリスクがあることもわかっています。

 

食肉で増大する健康リスク

赤肉や加工肉を食べ過ぎると、がんだけではなく、肥満・糖尿病・狭心症や心筋梗塞などといった心血管疾患のリスクも上がることが分かっています。

逆に、赤肉や加工肉の摂取を減らす、あるいは摂取しない(つまりプラントベースの食事に切り替える)ことによって様々な疾患のリスクが抑えられるということです。

 

それでは、実際の研究結果とともに見ていきましょう。

 

1. 肥満

日本でも、食生活の欧米化や運動不足などから、肥満傾向の人が増加していると言われていますが、世界ではかなり深刻化しています。

 

アメリカではなんと、2020年の調査で大人の42.4%が肥満であるという結果も出ており、2008年に比べて26%も増加しているほどです。

出典:The State of Obesity 2020: Better Policies for a Healthier America

 

「ベジタリアン食は体重減少を促進する可能性があるが、エビデンスはまだ決定的ではない」といった背景から実施された、1151人を対象とした無作為臨床試験のメタ解析によると、観察期間18週で、ベジタリアン食をベースとした食事を摂取した人は、そうでない人と比べて2.02kgの体重減が認められました。

さらにヴィーガン食を摂取した人に限定すると、2.52kgの減少が認められています。

 

結論としては、ベジタリアン食は非ベジタリアン食と比較して、体重減少に効果があると見られる、ということです。

(出典:Vegetarian Diets and Weight Reduction: a Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Gen Intern Med. 2016 Jan;31(1):109-16.

(関連記事:話題のプラントベースダイエットとは?健康に痩せる理由と効果を徹底解説

 

2. 心血管系疾患

心血管系疾患とは、私たちがよく耳にするものでは心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などがあり、動脈硬化によって血管内の血液の通り道が狭まり、酸素を豊富に含んだ血液の臓器への供給が不足する疾患です。

症状がわかりづらいことが多く、症状が現れた時には重症化あるいは死に至るケースも多いため「サイレントキラー」と呼ばれることもあり、日本においては、心血管系疾患ががんに次いで死因の第2位となっています。

 

約47万人を対象としたメタ解析(エビデンスレベルが一番高いと考えられている研究方法(※1))では、多く果物や野菜を摂取したグループで心血管系疾患による死亡率が減ったことが確認されています。

具体的には、1日に1サービング(※2)の果物や野菜を多く食べる毎に、4%リスクが下がることが分かっています。

(出典:Fruit and vegetable consumption and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies

 

※1 エビデンスレベルとは:ある検査法や治療法がどの程度信頼性・信憑性のある科学的根拠によって実証されているかを示す指標。下図の上位項目ほどエビデンスレベルが高い。

画像:エビデンスレベル (第20回日本補完代替医療学会学術集会レポート)

 

※2 サービング(serving(s))とは:「1食分として食べる量」の単位。 食品の種類だけでなく、調理方法によっても異なる。

<参考:American Heart Association “What is a Serving?“>

  • 野菜:1カップ相当の生野菜または野菜ジュース(葉物野菜は2カップ)
  • 果物:1カップ相当の果物、または1/2カップ相当の果物ジュース(オレンジジュースなど)、または1/3カップのブレンド果物ジュース

(上記でいう1カップとは、日本の軽量カップの約1.25倍の量に相当します。)

 

ちなみに、各食材ごとのサービングの定義や摂取目安量などは、各国や地域によって異なっています。

<参考:農林水産省『「何を」「どれだけ」材料と料理区分』

 

3. 認知症

65歳以上人口の割合が全国民の3割にも迫ろうかという日本においては、認知症患者の数は増加の一途を辿っており、この傾向は今後数十年続くと見られています。

日本における認知症患者の人口割合は、OECD(経済協力開発機構)に加盟している先進国35ヶ国の中でも最も高いのです。

 

そもそも「認知症」というのは病名ではなく、特有の症状が現れた状態を示す言葉に過ぎません。

つまり医学的には原因も治療もまだまだわかっていないことが多いのです。

そんな認知症ですが、実はヴィーガン食が認知症の予防に効果を示した研究があります。

 

高齢者17,700人を対象に調べた研究では、野菜を1日3サービング以上+果物を1日2サービング以上摂取した場合は、6年後の認知症発症リスクが25%も低下していました。

(出典:Lower risk of incident dementia among Chinese older adults having three servings of vegetables and two servings of fruits a day. Age Ageing. 2017 Sep 1;46(5):773-779.

 

結局のところ、動物性の食肉を食べないことは健康上問題ないのか?

改めて、最初の疑問に戻りたいと思います。

赤肉・加工肉に関していうと、先述の通り、摂取過多によりがんなどの様々な疾病のリスクが上がるということがわかっていることから、赤肉・加工肉の代わりに他のタンパク源を摂取することは,死亡リスクの低下につながると言えます。

 

ヴィーガン生活を送る方々にとっては、赤肉・加工肉の代わりのタンパク源=プラントベースのものになりますが、食べることにおいて大切なことは、体に必要な栄養素をバランス良く摂取することですので、プラントベース食で必要な栄養を補うことができれば、健康上動物性の食肉の摂取は必ずしも不可欠ではないと言えるでしょう。

 

動物性食肉に多く含まれる栄養素としては、鉄分(ヘム鉄)ビタミンB群などがあります。

鉄分は血液の生成に必要であり、女性にとって大敵の冷えとも深く関係します。

またビタミンB群は、肩こり、筋肉痛など疲労回復やメンタルヘルスにも大きく効果を発揮します。

 

動物性食肉を摂取しない場合は、このあたりが特に不足しやすいので、気を付ける必要があります。

ヴィーガン食において気を付けたい栄養素については、下記の記事も参考にしてください。

 

【ヴィーガン対応】たんぱく質が多く含まれる植物性食品【保存版】

ヴィーガン食生活で積極的に摂りたい7つの栄養素とは?おすすめ食材や1日の必要量もご紹介!

摂りすぎ注意!気を付けたい4つの栄養素一覧とその食材まとめ

 

まとめ

環境への配慮や動物愛護の観点から、ヴィーガンに転身する人々が増加する世界的なムーブメントも相まって、食肉をたくさん摂取することが健康に良いと信じられていた時代から、「赤肉・加工肉が引き起こす健康リスク」に議論の的が移りつつあるように思います。

 

様々な観点から広がる食の多様性。

元々日本人は、欧米諸国の人々に比べて食肉の摂取量が少ないと言われていますが、『食肉が必ずしも私たちの生命の維持になくてはならないわけではない』という通念が広まることで、私たちが日々口にするものについて、一人ひとりが改めて考えるきっかけになればと思います。

 


Dr. Amanoのプロフィール

天野 方一
医師/公衆衛生学修士(MPH)/博士(公衆衛生学)
合同会社ActiveHealthLab代表、帝京大学大学院公衆衛生学研究科非常勤講師、帝京大学ちば総合医療センター第三内科(腎臓内科)非常勤医師、ルサンククリニック非常勤医師など

2010年に埼玉医科大学卒業後、都内の大学付属病院で研修を終了。腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、腎臓専門医や抗加齢医学専門医等の資格を取得。大学病院の医師として勤務を行いながら、予防医学やアンチエイジングの重要性を実感。

2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。
予防医療に特化したメディカルクリニック、及び複数企業の嘱託産業医としても勤務中。

理念は「日常生活を改善することで、身体だけでなく心も健康に」。

資格
認定内科医、腎臓専門医、抗加齢医学専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士(MPH)、博士(公衆衛生学)

受賞歴
第59回日本腎臓学会学術総会:優秀演題賞(2016)
第22回日本腹膜透析医学会:ベストポスター賞(2016)
2017年度帝京大学大学院 公衆衛生学研究科委員会賞(優秀賞)
第93回日本産業衛生学会:若手優秀演題賞(2020)
2020年度帝京大学大学院 公衆衛生学研究科委員会賞(副総代賞)


 

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