地域と企業も巻き込む、日本の保育園におけるヴィーガン給食事情
さまざまな国で、ヴィーガン給食が注目される理由とは?「ヴィーガン給食」と「日本の保育園における、ヴィーガン給食事情」について、国内のヴィーガン給食を取り入れる2つの保育園と共にご紹介します。
近年、環境への配慮と健康意識の高まりから、世界的にヴィーガン給食への関心が高まっています。
台湾では、選挙の際に100人を超える候補者が「ミートフリースクール」支持を公約に掲げ、話題になりました。
また、東アフリカではNGO団体によるヴィーガン学校が開設され、イギリスでは保育園のケータリング会社とヴィーガン食品ブランドの提携によってヴィーガン給食へのアクセスが拡大しました。
このように、さまざまな国でヴィーガン給食が注目される理由とは、一体何なのでしょうか。
また、そもそもヴィーガン給食とは一体どういうものなのでしょうか?
今回の記事では、「ヴィーガン給食」と「日本の保育園における、ヴィーガン給食事情」についてご紹介します。
ヴィーガン給食とは
ヴィーガン給食とは、動物性の食品(肉、魚、乳製品、卵など)を一切含まない給食のメニューのことを指します。
代わりに、野菜、果物、穀物、ナッツ、種子などの植物性食品を中心に提供されます。
ヴィーガン給食は、子どもの健康への良い影響と環境への持続可能な貢献があることに加え、大豆ミートやプラントベースチーズなどの代替製品の急速な普及によってさらに注目されるようになりました。
2021年には、東京の公立小学校でも、初となる月1のヴィーガン給食が取り入れられました。
【東京】公立小学校で初となる食の選択肢と多様性を尊重した取り組み「エブリワン・ヴィーガン給食」をご紹介
ヴィーガン給食の利点
- 子どもの生活習慣病を予防: 野菜を中心としながら身体に必要な栄養素をバランスよく含んでいるため、心臓病、糖尿病、高血圧などの慢性疾患のリスクを低減し、肥満を予防する助けとなります。併せて、子供たちは健康的な食習慣を身ににつけることができます。
- 環境への配慮: 畜産業に伴う温室効果ガス排出を減少させ、森林伐採を抑制するのに役立ちます。子どもたちの未来ために、持続可能な地球を守る上で、環境への配慮は非常に大切なことです。
- 食物アレルギーの軽減: 乳製品や卵を含まないヴィーガン給食は、アレルギーを持つ子供たちに対しても安全。また、アレルギーのためにみんなと同じ給食が食べれない子どもの精神的なストレスも取り除くことができます。
日本でヴィーガン給食を提供している保育園
日本ではまだ、「ヴィーガン給食」というものを見聞きした覚えのある方はほとんどいないでしょう。
ですが、日本ではまだヴィーガン給食への関心はあまり高くないものの、ヴィーガン給食を提供している保育園や、月1でヴィーガン給食に取り組んでいる保育園があります。
今回は、東京都の「森の保育園」と兵庫県の「もく保育園」をご紹介します。
森の保育園(東京都 大田区)
森の保育園では、まだ日本では珍しい、ヴィーガン・グルテンフリー給食を提供している保育園です。
キリスト教の精神を大切にしている森の保育園では、食で子どもの健やかさを育むとして、食育を推進しています。
食育は、森の保育園が取り入れているニュースタート(NEW START)プログラムのN(Neutrition)に当たる部分であり、他にも道徳教育や運動、健康的な身体と心を育むための様々なプログラムを実施しています。
子どもたちが安心して、楽しく過ごせるような努力と工夫が凝らされています。
現代の食生活に配慮した「まごわやさしい+玄米給食」のヴィーガン給食
まごわやさしいとは、(ま→豆、ご→ゴマ、ナッツ類、わ→わかめ、海藻類、やさ→野菜・果物、し→椎茸、きのこ類、い→イモ類)を意味しており、肉、魚、卵、乳製品を出さないことで、アレルギーを持っている子どもたちがみんなと同じ給食を楽しむことができる食のバリアフリーに配慮がされています。
また、子どもの健康や酸性食品(動物性食品や精白された物)が多い現代の一般的な家庭の食生活を考慮し、アルカリ性食品のみを提供することでバランスをとっています。
ヴィーガニズムを食の嗜好ではなく生き方と捉え、やさしく丁寧に作り込まれた料理で子どもたちの健康を支えています。
もく保育園(兵庫県 姫路市)
もく保育園では、月に一度、「One Table Day」を設けられ、アレルギーの素になる動物性食品を使わないことで、誰もが美味しく食べられるヴィーガン給食を提供しています。
食の多様性やSDGs、動物愛護等を学び、主体的な食育にも繋げていきたいと考えて始められたこの取り組み。
ヴィーガニズムの押し付けではなく、園児全員が「一つのテーブルを囲む」ことを目的にされています。
様々な企業からの協賛もあり、ヴィーガンチーズなどを使った料理やグルテンフリーのおやつなども提供されています。
驚くべきは、東京の自由が丘にあるヴィーガンレストラン「菜道」の楠本シェフが実際に調理されていること。
一流シェフの技術と愛が込められたヴィーガン・グルテンフリー料理を楽しめる保育園は、世界中を探しても非常に珍しいのではないのでしょうか。
楠本シェフによる料理講座も開催されることがあるそうです。
また、もく保育園では、ヴィーガン給食の理解に力を入れています。
ヴィーガン給食の取り組みを紹介している動画では、そもそもヴィーガニズムとはどういうものなのか、ペスクタリアンやハラールなど、食の多様性について分かりやすく丁寧に説明されています。
食の多様性の背景にあるところまで深く切り込み、保護者だけでなく、地域や企業も巻き込んだ、先駆的な取り組みだと言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
世界的な気候変動への危機意識や食の多様性への関心は近年急速に高まり、日本においても、その需要は目にみえるようになってきました。
一見、食の選択肢が少ないように感じる日本ですが、独自の理念や方針、想いで食の多様性への理解や、ヴィーガニズムへの取り組みを行う保育園や企業、団体は少しずつ増えてきています。
これからも少しずつ、ヴィーガニズムへの関心や理解も高まり、ヴィーガン給食を取り入れる保育園が増えていくことに、期待したいですね。