【医師監修】お肉を食べないことは健康上本当に問題ないのか?
”結局のところ、動物性の肉を食べなくても、私たちの健康は維持できるのか?” ヴィーガン、プラントベースの食生活を検討したことがある方、または最近始めたという方なら、誰もが持つであろうこの疑問に、現役医師であるDr. Amanoがお答えします。
食肉で増大する健康リスク
赤肉や加工肉を食べ過ぎると、がんだけではなく、肥満・糖尿病・狭心症や心筋梗塞などといった心血管疾患のリスクも上がることが分かっています。
逆に、赤肉や加工肉の摂取を減らす、あるいは摂取しない(つまりプラントベースの食事に切り替える)ことによって様々な疾患のリスクが抑えられるということです。
それでは、実際の研究結果とともに見ていきましょう。
1. 肥満
日本でも、食生活の欧米化や運動不足などから、肥満傾向の人が増加していると言われていますが、世界ではかなり深刻化しています。
アメリカではなんと、2020年の調査で大人の42.4%が肥満であるという結果も出ており、2008年に比べて26%も増加しているほどです。
出典:The State of Obesity 2020: Better Policies for a Healthier America
「ベジタリアン食は体重減少を促進する可能性があるが、エビデンスはまだ決定的ではない」といった背景から実施された、1151人を対象とした無作為臨床試験のメタ解析によると、観察期間18週で、ベジタリアン食をベースとした食事を摂取した人は、そうでない人と比べて2.02kgの体重減が認められました。
さらにヴィーガン食を摂取した人に限定すると、2.52kgの減少が認められています。
結論としては、ベジタリアン食は非ベジタリアン食と比較して、体重減少に効果があると見られる、ということです。
(関連記事:話題のプラントベースダイエットとは?健康に痩せる理由と効果を徹底解説)
2. 心血管系疾患
心血管系疾患とは、私たちがよく耳にするものでは心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などがあり、動脈硬化によって血管内の血液の通り道が狭まり、酸素を豊富に含んだ血液の臓器への供給が不足する疾患です。
症状がわかりづらいことが多く、症状が現れた時には重症化あるいは死に至るケースも多いため「サイレントキラー」と呼ばれることもあり、日本においては、心血管系疾患ががんに次いで死因の第2位となっています。
約47万人を対象としたメタ解析(エビデンスレベルが一番高いと考えられている研究方法(※1))では、多く果物や野菜を摂取したグループで心血管系疾患による死亡率が減ったことが確認されています。
具体的には、1日に1サービング(※2)の果物や野菜を多く食べる毎に、4%リスクが下がることが分かっています。
※1 エビデンスレベルとは:ある検査法や治療法がどの程度信頼性・信憑性のある科学的根拠によって実証されているかを示す指標。下図の上位項目ほどエビデンスレベルが高い。
※2 サービング(serving(s))とは:「1食分として食べる量」の単位。 食品の種類だけでなく、調理方法によっても異なる。
<参考:American Heart Association “What is a Serving?“>
- 野菜:1カップ相当の生野菜または野菜ジュース(葉物野菜は2カップ)
- 果物:1カップ相当の果物、または1/2カップ相当の果物ジュース(オレンジジュースなど)、または1/3カップのブレンド果物ジュース
(上記でいう1カップとは、日本の軽量カップの約1.25倍の量に相当します。)
ちなみに、各食材ごとのサービングの定義や摂取目安量などは、各国や地域によって異なっています。
3. 認知症
65歳以上人口の割合が全国民の3割にも迫ろうかという日本においては、認知症患者の数は増加の一途を辿っており、この傾向は今後数十年続くと見られています。
日本における認知症患者の人口割合は、OECD(経済協力開発機構)に加盟している先進国35ヶ国の中でも最も高いのです。
そもそも「認知症」というのは病名ではなく、特有の症状が現れた状態を示す言葉に過ぎません。
つまり医学的には原因も治療もまだまだわかっていないことが多いのです。
そんな認知症ですが、実はヴィーガン食が認知症の予防に効果を示した研究があります。
高齢者17,700人を対象に調べた研究では、野菜を1日3サービング以上+果物を1日2サービング以上摂取した場合は、6年後の認知症発症リスクが25%も低下していました。