スコットランドで養殖サーモンがわずか1年で1500万匹が早死に、過去最高の死亡率に危機感
英国では毎年、最大7700万匹の魚が養殖され、屠殺されていますが、多くの魚は屠殺すらされていません。毎年平均して1500万匹の養殖サケが養殖場で死んでいる可能性があることが動物福祉団体の調査で明らかにされました。
そして驚くことに、そのうちの約4割の魚は市場に届かず養殖場で死んでいることが明らかにされました。
イギリス最大の食料輸出品であり、スコットランドの養殖サーモン業界会員団体であるSalmon Scotland(サーモンスコットランド)は、2022年9月だけで280万匹の養殖サーモンがスコットランドの養殖場で死亡したと報告。
これは、毎年平均して2千万から3千万匹の養殖サケが養殖場で死んでいる可能性があることを意味します。
サーモン養殖場で魚が苦しんでいる
2022年10月、イギリスの動物福祉団体Animal Equality(アニマルイクオリティ)は、フェロー諸島にある、サーモン生産会社Bakkafrost(バッカフロスト)が所有する、一つの養殖場での様子を撮影。
この水産養殖場は、数か月にわたり、エラの健康状態の悪化に苦しんでいる魚について、いくつかの報告があった場所とのこと。
同年9月、魚の健康状態を検査するイギリス政府機関、Fish Health Inspectorateからの報告によると、2 週間の間に1万6千匹を超えるサーモンが他のスコットランド養殖場で死亡したことが示されました。
この養殖場は、2021年4月に動物擁護団体によって調査されました。
その映像では、未治療の怪我や奇形に苦しんでいる魚が、不潔な水域で泳いでいることが示されています。
サーモン養殖における死亡率
フェロー諸島産のサーモンの主要生産会社、自称、水産養殖のパイオニアであるバッカフロストは、2021年のサステナビリティ レポートで、スコットランドの事業で78%の生存率を報告。
養殖場での高い死亡率に苦しんでいるのはバッカフロストだけではありません。
サーモンスコットランドは、サーモンの主要生産会社Scottish Sea Farms(スコティッシュ・シー・ファームズ)が所有する、ネビス湖養殖場で74% という驚異的な累積死亡率を報告しました。
この数字は5匹中3匹の魚が食肉処理場に到達しなかったことを表しています。
他にも、平均死亡率が高い生産会社は、Wester Ross Fisheries(ウェスター・ロス・フィッシャリーズ)、Loch Duart(ロック・デュアート)、そして、Mowi Scotland(モウィ・スコットランド)が含まれています。
報告書はまた、最近の死亡率の急上昇を強調しており、2021年は過去最高を記録し、昨年スコットランド全土で3万トンを超える養殖魚の死骸が報告されました。
魚が養殖場で死ぬのはなぜ?
スコットランドの養殖場で何が起こっているのでしょうか?
サーモンの大量死は、乱暴な取り扱いまたは輸送方法、魚ジラミの蔓延、感染症などが主な原因。
他にも、クラゲの大量発生、ストレス環境や気象条件などあり、スコットランドのハイランドと島々のサーモン養殖場を悩ませています。
もう一つ考慮しなくてはいけないのが、養殖場からの廃棄物や化学物質による水質汚染です。
水質汚染による藻類の繁殖は魚のみならず、他の動物の生態系に悪影響を及ぼすことがわかっています。
イギリスでは毎年膨大な数の魚が養殖され、殺され、しかも環境への悪影響を及ぼしているにもかかわらず、これらの魚は法的保護をほとんど受けていないのが現状です。
魚を保護するために何ができるか
2021 年2月、アニマルイクオリティは、スコットランドのサーモンの食肉処理場内で、魚が床に放置されて窒息死していること、不適切な気絶、完全に意識のある状態で魚が殺されていることを示す、この種のものとしては初めての調査を発表。
この調査結果を受けて、スコットランド政府は、国内で初めて魚の食肉処理場内に、強制的な検査を導入すると発表しました。
2021年後半、動物平等と保守的動物福祉財団は共同報告書を作成し、イギリスのすべての魚の食肉処理場で、監視カメラ設置を義務付けるよう主張しました。
この要請は、2021年12月に、動物福祉委員会に対して緊急の行動を取ることを求める公開書簡に署名した、世界をリードする水生動物の専門家25人によって支持されています。
そして2022年7月には、魚の殺処分時の福祉について議論する、史上初の議会イベントが開催され、動物の平等が招待され、アニマルイクオリティの調査結果と推奨事項を発表しました。
動物福祉委員会は現在、養殖魚の屠殺時の福祉の問題を検討しており、現在の慣行や法律を変更する必要性を探っています。
私たちにできることはあるのか
スコットランド政府は、2030年までに生産量を年間最大40万トンにするという目標を設定しました。
これは現在の2倍に当たる数字です。
そのため、世界各地の動物保護団体が現在、スコットランド政府に対し、この問題に対処するために直ちに行動を起こすよう求めています。
私たちにできることは、この残酷な産業をボイコットすること。
過酷な状況で養殖されている魚を私たちの食卓から外すことで、魚が味わう苦しみを今すぐ終わらせる力を持っています。
もう一つはスコトッランド政府に働きかけることです。
普及活動とロビー活動を行う動物福祉団体Compassion in World Farmingが、スコットランドの二コラ・スタージョン首相宛に、産業拡大の停止を求めオンライン署名を集めています。
日本では、認定NPO法人アニマルライツセンターを通してオンライン署名ができます。
最後にもう一つ私たちにできることは、この過酷な中で養殖されている魚の実態を拡散することです。
まとめ
サーモンの死亡率が急速に悪化していることは否定できません。
近年、養殖場での死亡数は、不自然に過密状態のケージに詰め込まれた魚の間で、魚ジラミや感染症が急激に増加したこと、エラの健康状態が悪いこと、クラゲの大量発生など、いくつかの理由で記録的なレベルに達しています。
スコットランドは、世界で3番目に大きな養殖アトランティックサーモンの生産国です。
毎年5600万匹近くの魚が養殖され、日本を含む50か国以上に輸出されています。
私たちにできることは限られているかもしれませんが、この残酷な状況で養殖されているスコットランドサーモンを保護するために行動してみませんか?
参考記事
Tens of Millions of Scottish Farmed Fish Dying Before Slaughter Each Year
As Salmon Deaths Double, Will Scotland Address Its Fish Farm Catastrophe?
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