Netflixドキュメンタリー「Bad Vegan」がヴィーガンについて誤解していること
2022年に公開されたNetflix作品「Bad Vegan」。スキャンダルへの関心を煽るタイトルのこの作品が「ヴィーガンについて誤解していること」について解説していきます。
本作は、ヴィーガンレストラン経営者の女性が起こした事件を描いたドキュメンタリー作品です。
実話をもとにした作品ですが、「Bad Vegan」というタイトルはヴィーガンに対する最もよくある誤解の1つを招きます。
それは、「動物性食品の消費を控える人は完璧主義な独り善がりで、過度に高潔な信仰を持っている」というもの。
今回の記事では、Netflixドキュメンタリー「Bad Vegan」がヴィーガンについて誤解していることについて解説していきます。
Netflixドキュメンタリー「Bad Vegan」とは
「Bad Vegan」は、2022年に公開されたNetflixオリジナル作品。
高級ヴィーガンレストラン「Pure Food and Wine」のオーナー、サルマ・メルンガイリスが成功者から逃亡者へと転落する様を描いたドキュメンタリーシリーズです
セレブも利用するヴィーガンレストランの経営者がTwitterでのちに夫となるアンソニー・ストランジスという男性と出会ったことをきっかけに犯罪に手を染めてしまうという実際の事件を取り上げています。
サルマ・メルンガイリスが犯罪を犯して逮捕されたことは事実ですが、「Bad Vegan」というタイトルは扇動的でヴィーガンに対する誤解を与えかねないタイトル。
しかも、サルマが彼女のレストランの従業員や投資家を騙して資金を流出したのは夫アンソニーに要求されていたからでした。
レストラン経営者から逃亡犯になったサルマ·メルンガイリス
サルマ・メルンガイリスは当時のボーイフレンドであるシェフのマシュー・ケニー、レストラン経営者のジェフリー・チョードロウと一緒にローフードレストランPure Food and Wineをオープン。
(「ローフード」に関してはこちらの記事で詳しく説明しています。)
当時はまだヴィーガン食が新しいものだったにも関わらず、Pure Food and Wineはセレブも訪れる人気店に。彼女が発売した料理本もベストセラーになりました。
しかし2011年、Twitter でとある男性と出会ったことからサルマの人生は思わぬ方向へと進んでいくことに。
この男性はアンソニー・ストランジスといい、「サルマと彼女の愛犬レオンを不死身にできる」「借金を解決することができる」などと作り話を吹き込んでサルマを支配するようになります。
恋人との別れや負債を抱えていたこともあってか、サルマはアンソニーと結婚。
アンソニーの言いなりになった彼女はレストランから約200万ドルを流出させました。
その結果、レストラン従業員の給料未払いや投資家から資金を騙し取るといった問題を起こしたことで逮捕状が発行されます。
そして2016に1年間の逃亡の末、アンソニーがホテルでドミノピザを注文したことをきっかけに逮捕されました。
サルマはその後、2017年に窃盗と詐欺の容疑で有罪となり、ニューヨーク市の刑務所であるライカーズ島に4ヶ月収容され釈放。アンソニーとはその後離婚しています。
「Bad Vegan」がヴィーガンについて誤解していること
「Bad Vegan」は扇動的で、ヴィーガンに対する誤解を与えてイメージをも悪くしかねないタイトルです。
サルマ・メルンガイリスが夫の言いなりになって犯罪を犯したのは、彼女がヴィーガンだったからではありません。
ですが「Bad Vegan」というタイトルによって「ヴィーガンは完璧であろうと振る舞い過度な信仰を持つ」という、ヴィーガンに対する最も一般的な誤解を強固なものにします。
また、主語を大きくすることでヴィーガンは動物を殺さず環境にも配慮するが、実際には犯罪に手を染めるようなこともする偽善的なコミュニティ・ライフスタイルであると発信しているようにも聞こえます。
ヴィーガンの一部には過度な完璧主義者であったり、カルト的な思想を持っている人もいるかもしれません。
しかし、あらゆるコミュニティや政治、宗教を見ればわかるようにすべての信念体系には極端なものがあり、それらはほとんどの場合少数派です。
そもそもヴィーガンは「可能かつ実行可能な限り動物の搾取を避ける」選択をする思想・ライフスタイルです。
ここが、「Bad Vegan」や多くの人ががヴィーガンについて誤解しているポイント。
完璧に動物性の食品や商品を断ち切ることがヴィーガンというわけではないのです。
ヴィーガンを実践していても、何かしらの事情で動物を含む食品を取り入れる必要が出てくる可能性もあります。
例えば、医薬品やワクチンなどは未だに動物実験に依存しています。
しかし、それらを摂取したからいって「悪い」「偽善的な」ヴィーガンなわけではありません。
世の中には肉やミルク以外の食糧・毛皮以外の素材・クルエルティフリーの商品など、動物を犠牲にしない選択肢がたくさんあります。
動物の命を犠牲にする以外の選択肢が存在する中、できる限りそれを選ぶことの何が問題なのでしょうか。
ヴィーガンは完全菜食主義者で独善的であるということではなく、自分のできる範囲で動物の搾取を避けることです。
まとめ
「Bad Vegan」というタイトルはあたかもヴィーガンであることを理由に犯罪を犯したかのようなタイトルですが、実際は犯罪を犯した一人の人間がヴィーガンであったというだけです。
同時にタイトルは完璧主義で独善的、動物や環境を犠牲にしない高徳ぶっている、などのヴィーガンに対するネガティブな誤解にトーンを合わせています。
ヴィーガンはできる限り、実行可能な限り動物の搾取を避けること。完璧であることではありません。
自分のできる範囲で動物の命を犠牲を含まない商品を選ぶことは動物や環境にやさしい選択であり、本来ポジティブなものなのです。