卵は健康に悪い?その実態と理由を徹底解説|卵の代替品もご紹介

卵は健康に悪い?その実態と理由を徹底解説|卵の代替品もご紹介

お料理や加工品など幅広く使用される卵は健康に悪いのか、その実態をいくつかの研究論文を用いて徹底解説。卵のコレステロールやサルモネラ菌に関してもご紹介します。

ハッピーキヌア編集部
2021年03月02日
卵は健康に悪い?その実態と理由を徹底解説|卵の代替品もご紹介
卵は、「健康に悪い」・「健康に良い」と、何かと意見が分かれ、色々な情報も飛び交っていますが、実際のところどうなのでしょうか。

また、健康に悪い可能性はあっても、卵がないとお料理の幅が狭まるし、お菓子作りも難しくなりそうと思われる方も多いかもしれませんが、実は、卵の植物性代替品も多くあります。

 

そこで今回は、卵は健康にどのような影響を及ぼすのか、研究論文などを調査し徹底解説、また、卵の植物性代替品もご紹介します。

 

卵は健康に悪いの?

「卵は健康に悪いのか?」

卵と健康に関する研究は多くあり、その研究結果も様々であり、明白な答えを出すのは困難だと言えます。

しかし、いくつかの研究結果から、必ずしも健康に良いとも言えないようです。そこで、「卵と健康に関する」いくつかの研究結果などをご紹介していきます。

 

卵を摂るほど心血管疾患のリスクが上がる

2019年、アメリカの医学誌JAMA(The Journal of the American Medical Association)に「毎日消費する食事性コレステロール摂取量と、心血管疾患での死亡リスクとには相関関係が見られた」と結論した論文が発表されました。

 

この研究は、2万9615人のアメリカ人からのデータ集めまとめたものであり、追跡期間は1985年3月25日~2016年8月31日までの中央値17.5年(最長31年)となっています。

 

この追跡調査期間、調査参加者においての心血管疾患による健康問題は5400件で、全死亡件数は6132件となりました。

 

研究では、調査参加者のコレステロール値や毎日の卵摂取量、調査期間中に心臓血管系疾患に罹る可能性、死亡する可能性の関連性が分析されました。

また、統計分析においては、対象者の年齢や性別、人種・民族、教育水準、喫煙の有無、飲酒量、運動水準、体格指数(BMI)、血圧、脂質水準、薬物使用状況や医学的条件などの要素が考慮されました。

 

その結果、毎日消費する食事性コレステロール量と、心血管疾患になり死亡リスクとの間には相関関係が見られました

調査期間中において、食事性コレステロールの摂取量が1日300mg増加すると、心血管疾患になるリスクは3.24%上昇し、死亡リスクは4.43%上昇しました。

 

また、毎日摂取する卵の数と、病気、死亡リスクにも相関関係があることも分かりました。

1日に摂取する卵の数が半個分増加するたびに、心血管疾患になるリスクは1.93%上昇し、死亡リスクは0.71%上昇しました。

 

卵の摂取量と心血管疾患発症、および全死因死亡との間の関連は、食事性コレステロール消費量を調整した後では有意な関連性はありませんでした。

食事性コレステロール、または卵のより高い消費は、心血管疾患・死亡リスクとに有意に相関することが分かりました。

(出典:JAMA「Associations of Dietary Cholesterol or Egg Consumption With Incident Cardiovascular Disease and Mortality」

 

ただし、この研究では、食事性コレステロールでの調査のみで、血中コレステロール値への影響は調査されていません

そのため、この研究結果だけで「コレステロールが健康に悪い」とは言えませんが、卵の摂取量が増すと、病気と死亡リスクの上昇は見られた点から、必ずしも良いとも言えないようです。

 

【コレステロールとは?】

コレステロールは生命の維持に欠かせない、体の中にある脂質のひとつで、細胞膜・ホルモン・胆汁酸を作る材料となっています。

 

コレステロールは、主に私たちの肝臓で作られており、以下2つに大別されます。

  • 体内で作られたコレステロール「内因性コレステロール」・・・糖や脂肪を使って肝臓などで合成され、全体の70~80%を占める
  • 食事として摂取したコレステロール「外因性コレステロール」・・・小腸で吸収され、全体の20~30%を占める

 

〈卵のコレステロール〉

卵には、必須アミノ酸が含まれ、卵黄に含まれるレシチンには血中の余分なコレステロールの沈着を防いだり、血管を強くする働きがありますが、コレステロールも多く含まれています。

Lサイズの卵1個(70g)には、コレステロールが約300㎎含まれています。

 

厚生労働省が 2019年に発表した日本人の食事摂取基準(2020年版)の改定に、以下が記載されています。

「コレステロールについて、脂質異常症の重症化予防を目的とした量として、新たに200 mg/日未満に留めることが望ましい」

 

血液中のコレステロールが過剰となる脂質異常症を放置すると、全血管の動脈硬化が徐々に進み、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な合併症をきたします。

そのため、脂質異常症などが認められる場合は、特にコレステロールに気を付ける必要があります。

 

〈脂質異常症とは?〉

血液中の脂質の濃度が基準の範囲にない状態を脂質異常症と言います。

動脈硬化性疾患にならないようにするためには、早期に脂質異常症を改善する必要があります。

いずれの脂質も食事からの摂取だけでなく、肝臓でも作られて血液で全身に運ばれますから、摂取する栄養素の量と組み合わせを調整して対応しましょう。

血中LDLコレステロール(悪玉コレステロー)を下げるためには、体重を適正にし、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール摂取量を制限し、不飽和脂肪酸を過不足なくとり、食物繊維を積極的に食べるようにします。

  • 飽和脂肪酸・・・肉・牛乳・バター・卵黄・チョコレート・ココアバター・ココナッツ・パーム油などに多く含まれる。
  • 不飽和脂肪酸・・・植物や魚の脂に多く含まれるもの。

 

トリグリセライド(肉や魚・食用油など食品中の脂質や、体脂肪の大部分を占める物質=脂肪)を下げてHDLコレステロール(善玉コレステロール)濃度を上げるためには、体重を適正にし、糖質とアルコールを制限して、n-3系多価不飽和脂肪酸(脂肪の構成要素である脂肪酸のうち、植物や魚の脂に多く含まれるもの)を確保します。

高カイロミクロン血症の場合は中鎖脂肪酸の利用も考えましょう。

食生活の改善は長続きすることが肝要ですから、おいしく楽しく食べられる工夫もしましょう。

日本人が伝統的に摂取してきた、精白度の低い穀類・大豆・魚・野菜・果物・海藻・きのこなどを組み合わせて、減塩した日本食で食べることがおすすめです。
(出典:厚生労働省「脂質異常症」

 

特に、脂質異常症を改善する必要がある方は、コレステロールの高い卵は避け、たんぱく質は植物性食品から摂るのがよいでしょう。

 

卵による健康への影響が証明された研究は他にもありますので、次にご紹介します。

 

卵を摂取するほど前立腺がんになる可能性が高まる

American Association for Cancer Researchに掲載されたハーバード大学の研究によると、「卵の摂取は、前立腺がんの発生リスクを増加させる可能性がある」ことが分かりました。

 

この調査研究では、1994年から2008年まで追跡調査を行った27,607人の男性を対象に、全食肉、未加工および加工赤肉、鶏肉、および卵と致死性前立腺がんのリスクとの関連が検討されました。

また、最初に非転移性前立腺がんと診断された3,127人の男性を対象に、追跡調査中にこれらの食品の診断後の消費量と致死的前立腺がんのリスクを調べるために、症例のみの生存期間解析も実施されました。

 

発生率解析では、週に2.5個以上の卵を摂取した男性は、週に0.5個未満の男性と比較して、致死的な前立腺がんのリスクが81%増加していました。

 

症例のみの生存解析では、診断後の鶏肉・加工赤肉と、限局性前立腺がんから致死性疾患への進行リスクとの間には、示唆的な正の関連があったが、統計的には有意ではありませんでした。

  • 限局性前立腺がん・・・がんが前立腺の内部にとどまっており、リンパ節や骨などに転移していない状態のがんのこと。

 

結論として、卵の摂取は、健康な男性における致死的な前立腺がん発生リスクを、増加させる可能性があります。

(出典:American Association for Cancer Research「Egg, Red Meat, and Poultry Intake and Risk of Lethal Prostate Cancer in the Prostate-Specific Antigen-Era: Incidence and Survival」)

 

卵は死亡リスクとも関連している

2020年にアメリカの医学誌JAMAに発表された論文では、「卵のたんぱく質を植物性たんぱく質に置き換えたことで全死亡リスクが低下する」ことが分かりました。

 

この前向きコホート研究では、1995年から2011年までの米国国立衛生研究所の食事と健康調査に参加した416,104人のアメリカ人男女のデータを分析し、データは2018年10月~2020年4月まで分析されました。

その結果、動物性たんぱく質から3%のエネルギーを植物性たんぱく質に置き換えると、全死亡リスクが男女とも10%低下し、心血管疾患死亡リスクにおいては、男性では11%低下、女性では12%低下しました。

特に、卵のたんぱく質を植物性たんぱく質に置き換えたことで、全死亡リスクが男性では24%、女性では21%低下し、赤肉のタンパク質からの置き換えでは、男性で13%、女性では5%低下しました。

 

植物性たんぱく質の摂取量の増加は、全死亡率と心血管疾患死亡率のリスクの小さな減少と関連していることがわかりました。

(出典:JAMA「Association Between Plant and Animal Protein Intake and Overall and Cause-Specific Mortality

 

この結果から、卵のたんぱく質を植物性たんぱく質に置き換えることは、意味のあることだと言えそうです。

 

動物性たんぱく質を良質な植物性たんぱく質を含む食品に置き換えるのは、難しい事ではありません。

詳しくは、「良質な植物性のたんぱく質を多く含む食品」・「たんぱく質が多い野菜」の記事を参考にしてください。

 

また、ヴィーガン・ベジタリアンのお料理に欠かせない「大豆ミートも高たんぱく食品です。

大豆から抽出したたんぱく質を繊維状にして加工した食品であり、低カロリー・低脂肪でありながら、高たんぱくであり、バランスよくお料理に活用することで優れた代替肉となります。

「大豆ミート」はヴィーガンのお料理の幅を広げるのに役立ちますので、以下の記事も参考にしてくださいね。

 

卵には、サルモネラ菌や残留農薬などの心配もありますので、その点に関しても次にご紹介します。

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